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7.初心者魔物使いの集まりに参加してみました

 そして翌日。

 宿屋から出た僕は早速ギルドへと向かった。

 『魔物使いギルド大全』によれば、入会試験は朝10時から受け付けているということなので、その時間に着くようにしておいた。

 さすがに昨日の二の舞にはなりたくないからね。



 ギルドに到着すると、相変わらず中は人で溢れていた。

 朝早くからみんな動いているなんてすごいなぁ……。

 まあ、依頼自体は一日中受け付けているらしいから、夜中や明け方に依頼を受けたり報告する人もいるんだろうな、きっと。


 さて、早速受付に並ぼうかな……って、ん?

 なんか掲示板の近くに人だかりができているぞ?

 何か連れている魔物も比較的弱そう……というか、僕と同じ感じがする。

 もしかして、初心者魔物使いの集まりなんだろうか?


 そんな感じで僕が疑問に思っていると、その集まりの中で声を張り上げる人がいた。



「入会試験を受けようと思っているみんなー! オレの近くに集まれー! みんなで協力して依頼をこなさないかー!?」



 あっ、やっぱりそうみたい。

 せっかくだし、ちょっと顔出してみようかな。

 一緒に依頼を受けてくれる人がいたら嬉しいし。



「あのー、ここが入会試験を受ける人の集まりでいいんでしょうか?」



 僕はその声を張り上げていた人の近くまで寄っていって、そうたずねた。

 するとその人は――



「おう、そうだぜ! 参加希望者はあの辺りに一旦集まって待っていてくれ! 10時半位になったらチーム分けを始めようと思う!」



 なるほど。

 時間にある程度余裕をみて、それからチーム分けをするのか。

 そういう事なら、最大人数の四人のチームがたくさんできそうで良いね。

 一人と四人とではだいぶ試験の難易度は変わってくるだろうし。



 僕は指定された場所でしばらく待つ事にした。

 僕と同じ場所に集まっている人達は既に五、六人はいる。

 その人達が連れている魔物はオーク、グレムリン、サハギンなど様々だ。

 ちなみに今の僕ではそのいずれの魔物も使役する事はできない。

 例えばオークを使役する為に必要な最低カリスマ力は10だからね……。

 僕にとってはしばらく手に届かない魔物だったりする。



「……おう、お前。スライムとゴブリンなんかを使役して、魔物使い気分になっちゃっている感じかい? ん?」



 そのオークを使役しているらしき人が僕に向かって喧嘩を売ってきたようだ。



「悪いかい? 僕は彼らが優秀な魔物だと思ったから使役しているんだ。それにまだ入会試験をクリアしていない身だし、そんな立派な魔物使いになれているとは思ってないよ」

「スライムとゴブリンが優秀な魔物ねぇ……。そんな低レベルの魔物なんていくら集まっても戦力にならねえっていうのに馬鹿か、お前? なあ、みんなもそう思うだろ?」



 同意するかのようにハハハと笑う数人の魔物使い。

 その人を蔑むかのように黙っている人、興味なさそうにしている人などもいる事から、全員がそう思っている訳ではなさそうだけど、実に不快だな……。

 まあ、こういう人とは関わらないのが一番か。


 それからも色々と口の悪い事を言ってくるが、僕は無視を決め込んでいた。

 そしてそれを耐えること十数分。

 その流れが変わる事になる。



「おっ、あれを見ろ! あいつ、また落ちたんだな! ギャハハ!」



 オークの奴が指差した先には、僕が昨日出会った魔物使いの女の子とネコの魔物がいた。

 そしてその女の子は恥ずかしがりながらも、先程声を張り上げていた人の所に行ってから、僕達の方へと来た。



「あっ、また会いましたね……」

「あ、あなたは!? き、昨日はすいませんでしたぁ!?」



 どうやら女の子も僕の事を覚えていたらしい。

 というか、今日はだいぶ時間に余裕を持ってきたんだね、この子。

 何回か受けているなら、毎回時間に余裕を持って来れば良いのに。



「さあ、みんな、時間が来たぞ。それぞれ気の合う人とチームを作ってくれ!」



 声を張り上げていた人がそう言ってチーム作りを促す。

 すると、早速二人組、三人組、四人組などができてくる。


 えっと、僕はどこにしようかな……。

 少なくともあのオークの奴とは組みたくないし……。

 あとオークの奴に便乗した奴とも組みたくないしなぁ。

 となるとここも、あそこもダメで……。

 って、あれっ?


 僕が選り好みしていると、いつの間にかほとんどの人は四人組を作り終わっていた。

 そして残ったのは僕とダメダメな女の子の二人のみ。



「ハッ、ザコの魔物しか使役できない奴とダメダメ魔物使い。いいコンビじゃねーか! ハハ、コイツらの結果はもう見えたな!」



 憎きオーク使いがそう言って僕達を馬鹿にしてくる。

 おのれ、今に見ていろよ……!


 僕とこのダメダメな子を一括りにされるのはたまったものではないが、少なくとも一人よりも二人の方が依頼はこなしやすい事には変わりないだろう。

 僕はその子に話しかける事にする。



「……えっと、一緒に頑張ろうか?」

「あわわ……は、はい、よろしくお願いします!」



 こうして僕は二人で入会試験を受ける事になった。





 ギルドの受付を無事に終え、建物の中から出てきた僕達。

 町を歩いている途中で、僕は女の子に話しかける事にした。



「えっと、君って、確か昨日すごい急いでいたみたいだけど、もしかして昨日試験受けていたリしたの?」



 僕がそう話しかけると、ギクッとしたような仕草を見せる女の子。

 やはり図星なのか。



「あっ、ごめんね。気に障るような事言ってしまったみたいで……」

「あっ、違うんです! わたしが試験に落ちるなんて日常茶飯事で……ですから、気にしないで下さいっ!」



 すごいあたふたしながら僕の事を気遣ってくるよ、この子。

 こんなに焦らなくてもいいのに……。



「べ、別にそんなに慌てなくてもいいんじゃないかな? もっとゆっくりと話した方が……」

「あっ、はぅぅ……す、すいません……うるさいですよね、そうですよね、すいません……」



 そ、そんなに謝らなくても……。

 別にこちらとしては責めている訳ではないんだからさ。

 この子、もしかして謝りグセがついているんだろうか?



「ちょっと気になる事があるんだけど、聞いてもいいかな?」

「あっ、はいぃ!? な、なんでも聞いてくださいぃ!」

「君って何回か試験を受けた事があるようなんだけど、どうしてダメだったんだろう? 原因が分かったら、その対策もできるし、教えてくれたらとても助かるんだけど……」

「あっ、はぅぅ!? そ、それは……」



 本当はこういった事を聞いたらいけないのは分かってる。

 だけど、その失敗原因を聞けたなら、今後どういった事に気を付ければ良いのか理解する事が出来る。

 そして理解出来たなら、その対策を練る事が出来るし、そうすれば今回の依頼成功確率は上がるだろう。

 決して僕は失敗を責めるつもりはない。

 失敗は成功のもとなのだから。


 女の子は恥ずかしそうにもじもじしている。

 やっぱりこんな事を聞くのは酷だったかな?

 失敗経験というものは少なからず人の心に傷を与えるものだし、思い出すのも苦しいもんなぁ……。


 そう思った僕がやっぱり言わなくていいと伝えようとしたその時――



「その答えはあっしがお答えしますニャ」



 不意に聞こえてきたその声は女の子の近くから聞こえてきた。

 そして女の子の近くにいるのはある生物しかいなくて――



「えっと、もしかしてネコさん、喋ってる?」

「そうだニャ。あっしはこの子、テイニーの従魔、レクと申しますニャ。以後、お見知りおきをですニャ」



 レクというネコはそう言うと軽く会釈をする。

 どうやらネコが話しているというのは気のせいではなかったようだった。



「そういえばレク、君はケットシーなんだよね? 人語を解するケットシーがいる事を知ってはいたけど、まさか本当に喋れるとは……」

「お主、ケットシーを見るのは初めてかニャ? まあ、ケットシーの中でも言葉を話せるのはあっし含めてごく一部の者だけだニャ。驚くのも無理はないかニャ」



 ふふんと得意げな表情を浮かべるレク。

 まあ正直魔物が言葉を話せるなんて認識はなかったから、だいぶ驚かされたよ。



「おっと、話を戻すニャ。えっととりあえずお主、名前はなんと言うニャ?」

「あっ、自己紹介がまだだったね。僕はアークという。よろしく頼むよ」

「わ、わたしはテイニーです。よ、よろしくお願いします」

「これで自己紹介は完了ニャ。さて、アークはテイニーの失敗を成功に活かしたい。そう言ったので間違いはないニャ?」

「うん、その認識で間違いないよ」

「ふむ、それは良い心掛けだニャ。でも残念ながら、お主の期待にはあまり応えられそうにないニャ……」

「えっ、それってどういう意味だい?」



 レクの言い方からすれば、テイニーの失敗は僕達の成功に結びつかないと言いたいんだろうか?

 成功に結びつかない失敗なんてあるんだろうか……?



「簡単に言えば、テイニーの失敗はお主がするはずもないから活かせないと言えば伝わるかニャ?」

「そ、そんな酷い失敗の仕方なんてあるの?」

「それがあるんだニャ。試しに彼女のここ直近十回の失敗内容を伝えるとニャ……」



 僕はレクからテイニーの失敗内容を聞く事になった。

 するとその内容とは、時間が間に合わなくて試験を受けられなかったり、森の場所が分からなくてたどり着けなかったり、そもそも町から出られないで終わったという事もあったらしい。

 つまりはこうだ。

 時間にルーズな上、重度の方向オンチらしいな、この子は。

 確かにこれじゃ参考にしようもない。


 唯一役に立ちそうなのは――



「えっと、テイニー。僕が先導するから、絶対に僕から離れないこと! いいね!?」

「あっ、はぃぃ……がんばります……」



 テイニーをはぐれさせてはいけない事が分かったという事だ。

 経験者だからといってテイニーに道案内を頼めば、ほぼ間違いなく時間切れになって依頼は失敗する。

 故に僕が先導するしかないのだが、その場合でもテイニーが途中ではぐれるという危険がある。

 確かにこれはダメダメだと言われても文句は言えないだろうなぁ……。



「大丈夫ニャ。いざとなったらあっしがついているから大船に乗ったつもりでいるニャ!」

「うん、よろしく頼むよ、レク。えっと、そういえばレクはずっとテイニーとずっと一緒にいたんだよね? それなのにどうしてそんな失敗をし続けたの?」



 そう僕が言うと、レクは急に体が凍りついたように動かなくなった。

 あれっ?

 これってもしかして……?



「もしかして……レクも方向オンチだったりするの?」



 するとレクは目を逸らしながらこくんとうなづいた。

 って、やっぱりレクも方向オンチなのかーい!


 まあ、二人一緒で迷っているんだから、そりゃそうなんだろうとは薄々思っていたけどさ。



「で、でもあっしはテイニーとは違ってしっかりとしているから、アークについて行く位の事は出来るニャ!」

「ひ、酷いですよ、レク!? わ、わたしだってアークさんについて行く位はできるんですから……!」



 ……えっと、なんだろう?

 何かとっても不安なんだけど。

 大丈夫かな、この旅路は?



 とりあえず僕はこの町周辺が載っている地図を買い、そしてその地図を頼りにしながら森まで歩いて向かった。

 すると歩いておよそ三十分後……



「おお、ここが森だニャ! こんなに日が高いうちにたどり着けたのは初めてだニャ!?」

「す、すごいです、アークさん! 今回は依頼達成出来そうですよ!?」



 僕達は森の入口までたどり着いた。

 するとテイニーとレクがそうやって騒ぎ出したのだ!


 というか、森の入口にたどり着いただけでこんなに騒ぐって、どうやらレクが言っていた事は本当らしいな。

 確かに町からは少し距離はあるけど、そんなに迷う所はなかったと思うんだけど……。

 いや、町から出る門を間違えたとかはあり得るか。

 だって、このテイニーとレクだもんな。

 東門から出ないといけないのに何故か西門から出るとか普通にやりそうだ。


 とにかく気を取り直して、僕達は森の中へ入っていく。



 森の中は日の光が遮られている分、若干暗くて見通しが悪い。

 魔物による急襲に警戒しなくては。



「あ、アークさん。ここ、ちょっと暗くないですか?」

「そうだね。暗くて見通しが悪い。いつ魔物が襲いかかってくるか分からない状況だ。警戒しておいてくれ」



 僕の呼びかけで辺りを見回して警戒するテイニーとレク。

 そういえばレクってどういう戦い方をするんだろう?

 いざ戦いになった時に互いの事を知らないとうまく連携できないもんな。

 ちょっと聞いてみようか。



「ねえ、レク。君ってどういう戦いができるの?」

「ふむ、よくぞ聞いてくれたニャ、アーク。あっしはサポートのスペシャリストなのニャ」

「サポートのスペシャリストか。具体的にはどんな事をするの?」

「例えば味方の移動速度や反応速度を上げたり、自然治癒力を高めたりできる事が出来るニャ」

「なるほどね。……攻撃技とかはないの?」

「………………ないニャ」



 あっ…………。

 どうやらレクはサポートに特化した性能をしているみたいで、自分だけでは戦えないらしい。

 つまり、万が一戦闘になったら、僕の従魔だけで何とかするしかないみたいだ。



「僕が言うのもなんだけど……よくそんな状態で試験を受けようと思ったね?」

「す、すいませんっ……それでもわたし、どうしてもギルドの魔物使いになりたくて……」

「あっ、ゴメン。責めるつもりはなかったんだけど。でも今までどうしていたのか純粋に気になって」

「まあ気になるのも無理はないかニャ。簡単に言えば、他の人と一緒に行く事で何とかしていたニャ」

「他の人と一緒に? でもそれなら今回みたいに森にたどり着く事も何度かは出来たんじゃ……」

「確かにたどり着くまでは出来た事もあるニャ。だけど、たどり着いたのがもう夜遅くて危ないという事で毎回森に入らずにそのまま帰る事になったニャ」



 毎回森に着くのが遅いって、それってどうなったらそうなるんだ……。

 流石にテイニークラスに方向オンチな人だらけという訳でもないだろうに。



「どうしてそんな事に……?」

「本当は言いたくはないけどニャ……テイニーはダメダメで有名な子だニャ。そんな子と組んでくれるような人もそれ相応の何かがあるとは思わないかニャ?」



 あっ……確かに。

 同じ位方向オンチだったり、そうでなくても何かよく分からない事でうまく進まないのが何となく想像がつく。

 それだと確かに一向に依頼はこなせないよなぁ……。



「そんな訳で、あっし達は今、アークの優秀さに感激しているんだニャ! こんなにしっかりとした人と組めたのは初めてなんだニャ!」



 コクコクとうなづくテイニー。

 うん、今まで組んだ人達が余程酷かったんだろうな。

 期待されるのは嬉しいけど、何だか複雑な気分……。

 期待値が低すぎるというか……。

 でもまぁ、せっかくの縁だし、ここはしっかりと依頼をこなして、この子達も入会試験に受かるように頑張っていこうか!

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