42.兄と二人で話をしてみました
15時頃、僕は約束の東門近くで待っていた。
するとそこに兄がやって来る。
「待たせたな、アーク。すまなかった」
「いや、良いんだ。僕がちょっと早く来すぎただけだからさ」
「気を使わせてしまって悪いな。それじゃどこかでゆっくり話そうか。ギルドの奴と会うと面倒だから、出来れば人目につかない所の方が良いんだが……」
うん、確かに。
ブレイブ・ディスターの人達って、何か賑やかすぎるし、話していて何だか疲れそうなんだよね。
兄さんは父さんに似ていて、そんなでもないんだけど。
それに、また弱い者として見られるのはなんか嫌だ。
適当な人と戦って力を示せば、相手の見る目が違ってくるのかもしれないけど、わざわざそんな事をしてまで自分の力を誇示したくないし、何より面倒過ぎる。
何も言わなくても自然体で過ごせる環境が一番だと思うんだよね。
そういえばジェネラル・レノスの居心地が良かったのはそれが理由だったのかもしれないな。
魔物の力を見る事の出来ないであろうリーリーさんも、初めてラスやゴンを見ても嫌な顔一つしなかったし。
これでギルドとしても繁栄していれば、文句なしでそのギルドに所属したかったんだけどな……。
「うーん、それなら外に出るっていうのはどうかな? 久しぶりに兄さんの戦闘、見てみたいし」
「おお、それは良いな! そういう事ならアークの戦いぶりも見せてもらえないか? きっとアークのスライムとゴブリン、相当強いんだろ?」
「うん、まあそこそこはね。兄さんのミノタウロスには敵わないだろうけど」
「……ハハハ、まあアークよりもだいぶ前から魔物使いやってるからな。これで負けてたら笑い者だよな! それじゃ、早速行くとしようか」
兄さんがフィラミルを出たのは僕が旅立つ数日前。
だから意外と兄さんと会ってない期間は長くないのだ。
でも、これまでに色々あり過ぎたから、少し会っていないだけで、随分と久しぶりな感じがするんだよね。
東門を出て、外へ出る僕達。
首都デコラーダの東部に生息する魔物は強くてDランク魔物であるオーガ位なもので、それほど強い魔物はいなかったはず。
だから僕とラス達だけで出歩いても全然大丈夫な所だし、Cランク魔物であるミノタウロスを連れた兄さんがいれば、ますます安全だっていう事だ。
しばらく草原を歩いていく僕達。
すると早速オーガと遭遇する事になる。
「おっ、オーガか。肩ならしにちょうど良さそうだな。アーク、ちょっと一緒に戦ってみるか?」
「うん、そうだね。そうしよう」
僕はゴンを前に出し、兄さんはミノタウロスを前に出した。
さて、兄さんと一緒に戦うのは初めてだが、うまく連携出来るんだろうか?
「……それじゃ、アーク、いくぞ! ミノ、ブレイクタックル!」
兄のミノタウロスがオーガにタックルを繰り出す。
するとオーガは力に耐え切れず、吹き飛ばされる事になる。
ゴンはその吹き飛び先を読んで、絶好の位置に陣取っていた!
「おお、やるな、ゴブリン!」
「ゴン、そのままゴブリンクラッシュで叩き落として!」
ゴンは地面を蹴り、そして宙を浮くオーガを思いっきり棍棒で叩きつける。
すると地面にめり込んだオーガはそのまま息絶える事となった。
「……すごいぞ、すごいぞアーク! 強いだろうとは思っていたが、まさか格上のオーガに対してここまで寄せ付けないとは!」
兄は驚きの表情を浮かべている。
恐らく何となく僕の従魔が強い事は分かっていても、実感が伴っていなかったのだろう。
まあ見た目だけからいえば、小さなゴブリンが大きなオーガに敵うとは思えないよね。
そもそもオーガはゴブリンの上位種族でもある訳だし、無理もない。
「……オレ、驚き過ぎちまって腰が抜けちまったよ。ここで少し休んでもいいか?」
「うん、構わないよ」
兄はそう言って草むらに腰を下ろす。
僕もその近くに腰を下ろす事にした。
「……アーク、四つのギルドを巡り歩いたんだろ? どこに所属するのか決めたのか?」
「……ううん、まだ。ひとまずはどこにも所属しないでいようかと思ってる」
「所属しない、か。きっとアークの事なんだから考えがあるんだろうが、一ヶ月後に開かれる大会にはギルドに所属しないと出場出来ないぞ?」
「うん、分かってる。その時までには決めるつもり。それまではゆっくりと他の町を巡りながら考えようかと思ってるんだ」
まだ大会までは一ヶ月ある。
それまでは力を蓄えて、そしてまた再び首都デコラーダに着いた時に入るギルドは決めればいい。
まあ多分僕の気持ち的に二択にはなるだろうけど。
「それならいい。せっかくアークが魔物使いになれたってのに、大会にアークの姿がないなんて寂し過ぎるからな。どのチームに所属してもいいが、必ず大会には出場しろよ?」
「うん、必ず出場するよ。大会で会うって父さんに言っちゃったし」
「えっ……父さんに会ったのか、アーク!?」
「うん、まあ色々とあってね……相変わらずとても強かったよ」
「そりゃそうだよな。オレはひたすら頑張って依頼をこなしてCランクまでは来たが、Bランク以上に上がる為には大会で良い成績を取らないといけないからな。父さんに早く近付く為にも、大会に向けて頑張らなきゃな」
兄さんはもうCランクなのか。
僕より数日早く旅立っただけだというのに、そんなに差がついているとは。
さすがは兄さんだ。
兄さんの言う通り、Bランクに上がる為には大会で実績を残さなければならない。
というのも、どんなに依頼をたくさんこなした所でCランクまでしか上がれないようになっているためだ。
そういう事情もあるので、Cランクの魔物使いならそこそこいるが、Bランクともなると、その数は一気に減る。
まさに選ばれし魔物使いだけがなる事ができるランクという事だね。
僕はそれからしばらく兄と話をした。
兄の話によれば、兄は首都デコラーダに来るまではレクレスの西側を通るルートを使ったようだ。
そしてその途中にある町が興味深かったのだとか。
「パミランの町って知っているか、アーク?」
「うん。確かレクレスの西側にある町だよね」
「その町がちょっと面白くてな。そこでは合成について色々と研究がされていてさ。合成によってどういうメリットがあるのか、どういう時に暴走が起きるのかとか書かれた本が豊富にあったんだ」
「へえ、それはすごいね!」
「アークは自分で相当勉強してきたんだろうが、きっとより良い合成をする為の知識が手に入るだろう。時間があったら寄ってみるといい。そういえばそのゴブリンの強さって、合成からくるものなのか?」
「うん、そうだよ。僕がカリスマ力に乏しいのに、ここまで強くなれたのは兄さんが辛抱強く付き合ってくれたおかげだ。本当にありがとう」
「いや、いいんだ。オレも興味はあったからな。結局オレには難しくて合成は使いこなせなかったが……でもその有用性はよく分かる。パミランの町で知ったんだが、合成をすれば魔物の知能が上がるらしいな。もしかしてアークの魔物も相当知能が高いんじゃないか?」
「知能が上がるのは本当だろうね。合成を繰り返すうちに、僕の従魔、話せるようになったし」
「……ええっ!? って事は、スライムやゴブリンが喋るって事かよ、おいっ!? 信じられねえぞ!」
驚きの表情を浮かべる兄。
まあ、僕もラスが初めて喋った時には驚いたよ。
まさかスライムが喋るとは思っていなかったからね。
僕はラスとゴンに兄と話すように促す。
そして兄はラスとゴンと話をする事で、本当に僕の従魔が話せる事を実感しているようだ。
そんな感じで話が盛り上がる僕達。
だが夢中で話していると、もう日が暮れそうになる。
そろそろ街に戻らないと。
「もうこんな時間か。本当はもっと話したかったんだが、そろそろ戻るとするか」
「そうだね。まあ、また会おうと思えばまた会えるんだし、その時に話せばいいよ」
「それもそうだな。アークは立派な魔物使いになった。であれば、またどこかで会う可能性も十分あるし、その時はまた時間を作ってくれればゆっくり話せるよな」
「うん、そういう事。兄さんと次に会う時までにはもっと強くなっていられるように頑張るよ」
「もう十分強いじゃねえかよ、アークはさ。というか、オレよりも恐らく既に強いだろ。……これじゃますます差をつけられてしまいそうだな。全く、アークの合成はずるいよな。よほど頑張らないと、オレ、アークに大会でボコボコにされそうだ」
兄にはラスとゴンがグランドリザードを軽々と倒した事を話したし、先程のゴンの力を目の当たりにしているから、僕達の実力を相当高く見ているようだ。
ラスやゴンと自分の従魔を戦わせたら、恐らく僕に勝てないのではないかと言っているほどだ。
兄のミノタウロスはCランク魔物だし、十分強そうだから、実際はどうなるかは分からない。
でもラスやゴンの様子からすると、ミノタウロスをそこまでの脅威として見ていなさそうだし、何とかなってしまうかもしれない。
この二人の従魔は本当、強さの底が知れないよな……。
僕達は首都デコラーダへと一緒に戻った。
そして兄に別れを告げ、宿屋へと戻る。
さて、明日も早い事だし、さっさと今日の所は寝るとしますか。




