第三王子は王位なんていらないようで…
こんにちは、僕はルウシェル。
王子に転生してしまいました。
わっ?!石投げたの誰?!痛いです!
それに、乙女ゲームなんです。
第三王子の僕は王妃の第一子ですから、王位継承権は一番目です。
無理ですね。はい。
取り敢えず、やんちゃしようと思います。
「ルウシェル殿下!降りてください!落ちてしまっては危ないですから!」
護衛の騎士が必死に叫ぶ。すみません、保身の為です
「大丈夫ですよ!」
手始めに、木登り。木の枝に立つのはバランス感覚を養えますね。落ちたら死にそうです。
「ルウシェル殿下!!」
「城下の現状を知るのは大切なことと書物にありましたよ」
次に、城下へのお忍び。目的は城下を知り、物価などを調べること。
「ルウシェル殿下…、我々の仕事を無くす気ですか」
「いつも守られてるので充分です、万が一の為にもやっておくに越したことはないでしょう?」
剣術など、武術。目的は、いつ王位継承権を無くして国外追放されてもいいように。食べていけるだけの仕事につけるだけの体力や耐久性、柔軟性や持久力を付けるため。
あれ?なんか僕を推す方々が増えてる?!何故?!
はっ?!いいこと思いつきました。
僕より優秀な兄二人がいる。ということで、ヒロインが転生者ではなくとも共闘を組む予定です。
婚約者の意識も兄様の、アレックスに向いてます。
どちらも一目惚れ。凄いですね。
僕は自由が欲しいんですよ、だから王位なんて御免こうむります!王位継承権から抜けさせてもらいます!
「マリア嬢、ですよね?お怪我はありませんか?」
廊下でぶつかってしまった少女に手を差し出す。
イベント通りに出会った。
男爵が娼婦に手を出して孕ませてしまったらしく、男爵に引き取られたヒロイン。
母親に押し付けられたとも言えますね、自業自得とも言えますが。
ストロベリー色のふわふわの髪に、淡い水色の瞳、ミルク色の肌に小柄な身長。……さて、予想がですね。転生者のようですが、僕に会わないようにしていたらしいですね。
「すみません、大丈夫です!」
明らかに作った、可愛らしい笑顔。重心を左にかけてるあたり、右ですか。
「なら良かった」
ニコリと笑った後、ふわりと横抱きにした。
「気づかないと思いですか?重心を左にしているあたりそれほどのことではないようですが、右ですよね?」
唖然とするヒロインに笑いかけ、保健室に送る。
「ああ、後でお話がありますので一階の生徒会室に放課後来てくださいね。…ヒロインさん?」
また、言葉を失うヒロインを置いて保健室をでた。
「へえ、つまり王位なんて興味無いから恋人のふりしろっていうの?」
「ん?違います。恋人ではなく、友人で結構ですよ」
誰もいない、生徒会室。
この学園は第三王子の僕ルウシェル・ファールス、この国最強である騎士団長であり筆頭公爵家またの名をこの国の『剣』と呼ばれる公爵の御子息キリト・シュバルツ、宮廷魔導師の師長でありこの国の『盾』と呼ばれる侯爵家の御子息エイリ・カーレウッジ、の三人で仕切っている。
攻略対象でもある。
あとは、隠れキャラやら何やら。
「分かった」
「それは良かったです、これは貴方の協力なしには出来ませんから」
卒業パーティーをする今日、広間に向かいながら深呼吸をする。
さて、これから馬鹿になりに行くとしますか。
「私はやっておりません!」
リリアンヌ嬢が反論してくる
「嘘をつかないでください、貴女にされたとマリーが言っているのです」
うわぁ、言ってみるとすごいバカっぽいですね。
手が震えるのを気づかないふりをしながら、口を開く。
「私は今ここで、リリアンヌ・シャーロット公爵令嬢との婚約を破棄します。貴女に王妃になる資格はありません」
「っ…!」
「待つんだ」
威厳のある声が広間に響いた。
「お父様!」
さてと、もうひと頑張りです!
「残念だよ、こんな祝いの席でこんな馬鹿げたことをするなんて……」
「御兄様?!何故…!」
「リリアンヌ嬢、よく頑張った」
[ リリアンヌ嬢になにしたの? ]
念話で話しかけてきたマリア嬢
[ 冷たい態度を取り続けました ]
呆れの感情がマリア嬢から流れてくる。
「ルウシェル、残念だ」
お父様から向けられる、冷たい視線。
これも全て、知っていたからできた愚行。
兄上が僕が婚約を破棄したらリリアンヌ嬢を貰うとお父様に進言していることを知っていたから。
「っあー、終わった終わった!」
急に雰囲気を変えた僕に、全員がどよめく。
「リリアンヌ嬢、先程の侮辱申し訳ない」
「えっ…?」
驚くリリアンヌ嬢に、この国最上級の礼をとる。
「マリア嬢、ご協力有難う御座いました」
「やっとかしら、ルウシェル殿下も大変ね。こんな回りくどい仕方しなくても良かったじゃない」
「回りくどいと言われましてもね……。
私が罪もない令嬢をマリア嬢を騙し言われもない馬鹿げた罪で傷つけ、婚約を破棄し傷ものにした。ほら、悪いのは私だけでしょう?」
「なっ!?始めからっ…!!」
マリア嬢が静かに怒り狂うのが分かった。
「私よりも優秀なアレックス兄様の方が王位継承権を持つものにふさわしく、アレックス兄様を支えるのはリリアンヌ嬢だと私が判断し実行した。ただそれだけなんですよ、マリア嬢」
「まさか、シェル…それでリリアンヌ嬢に、」
曖昧に笑い、誤魔化す。
「ルウシェル」
涼やかな声が静かな広間を震わせた。
「お母様」
何故ここに、そんな言葉は出てこなかった。
「貴方は昔からそうね。誰かの為に自分だけが犠牲になろうとするの。……でも、それで悲しむ方がいることをあなたはご存知?」
「……知っています、ですが、」
「何も知らなければ誰も傷つかない、でしょう?」
「…っ」
「……私は王になりたくない、ただそれだけで皆を利用したのですお母様……。騙し、嘘をついたのです」
「そうね、貴方は昔から王になることを拒んでいたわ。理由があるのかしら?」
「私は、国を守れ無いかもしれない……。間違った政治をして多くの血を流す事が何より怖いのです。私は強くもない、賢くもない」
「……」
「あらあら……」
リリアンヌ嬢にハンカチを渡され、初めて泣いていることを知った。
「国民を第一に考え国の為に全力を尽くす、それが王族の最も考えなければならないことなの。それが出来るあなたが王位につかずなんとするのです?」
「ですが、」
「ほらほら、涙を拭くのですよルウシェル。貴方は、立派な王になれますわ。……見てご覧なさい 」
そうして、初めて周りを見渡し……驚愕に目を見開いた
僕を中心に、最敬礼をする生徒たち。
来ていた親も、頭を垂れていた。
「……良いのですか?私は、」
「これを見てまだ言うの?ルウシェル」
後に彼は、長きに渡る平和な国を築き上げた立派な王となる。彼の横には、可愛らしい笑顔をたたえるマリアという王妃が仲睦ましく寄り添っていたと言う。
何故こんな話になったのか疑問です……。
最後まで見て頂き有難う御座いました!