プロローグ
「熱い」
「暑い」
「あつい」
私たちは、砂の中を歩いていた。
後ろを歩くエルは砂に足を取られて歩きにくそうだ。
見渡す限り砂、すな、スナ。
どこを見ても砂しかない。たまにあるのは動物の骨。
・・・あれにはなりたくない。
灼熱の太陽。乾燥した風。止まらない喉の渇き。
「黙ってあるけ。ホントに死ぬぞ。もう少しだ。」
私たちはトキに先導されるがまま、サン=ドラゴに向かっていた。
トキの国。ムーンブルグへ行くには少し遠回りだけど、なにか情報があればと迂回する道を選んだ。
事の起こりは宮廷魔導士試験が終わって3日後。アリシアたちの魔力が回復して、お城から正式に採用の日が決まるまで自由行動。と言われた。その間に行って帰ってくる。というのが今回の旅。
フランには反対されたから黙っておく。とアリシアが言ったので黙ってきた。多分、帰ったら怒られる。
領主としての仕事はどうするのかって?
もちろん、屋敷の入口には『用がある方は王宮騎士フランまで』。と書置きはバッチシ!
これで2週間くらい留守にしても大丈夫でしょ。多分。
アレクサンドリアを出て大きく北東に進み、山をひとつ超えるとそこは緑が生えない死の大地だった。山ひとつ超えるだけでここまで変わることに驚いたけど・・・。
今回のパーティーは私たち3姉妹の他にトキとアメリア。
結局、あのあとアメリアはアリシアとそららと仲直りしたみたい。フレイアが言うには、『魔石に精神を侵食されていたから暴力的になっていただけ』と言って指輪は破壊していた。アメリア自身は、魔石のせいもあるけど、心の中では実際にアリシアが羨ましくて憎かった。と言っていたけど、2人は別にそれに対して何も言っていなかった。
そららの言い分は『悪魔のせいなら、アメリアも被害者だから、アリシアが怒っていないならうちは何も言わない。』だそうです。
「ねぇ、アメリア。ムーンブルグもこんなに暑いの?」
「まさか。この国が異常なのよ。ムーンブルグは月と雪に覆われた美しい国よ」
「あぁ。雪が恋しい・・・」
目の前に映る砂嵐が吹雪だったら。と妄想しているアリシア。
「アメリアの魔法で、この暑さどうにかならない?」
「ごめんね、魔法で暑さは無理かもしれない。涼しくする魔法なんて知らないから」
「そっか。普通、そうよね」
厚さが限界なのかそららがフラフラしながらアメリアに水魔法を要求していた。
心の中では、そららの要望が通ればいいな。と期待していた私も少しがっくりとしてしまう。
「そう言えばきらら、試験って、最後どうなったの?」
「試験?」
「私たち、意識なかったからあの後どうなったのかな?って」
「あぁ。」
私は、2人が倒れたあとのことをアメリアへ教えた。
観客からの拍手がやまなかったこと。
リカが異常に興奮していたこと。
国王が絶賛していたこと。
実際に宮廷に入るのはまだ先であること。
「あとは、今あなたたちが持っている輝石が宮廷からのお祝いよ」
トキは黄の輝石。
アメリアは青の輝石、黒の輝石。碧の輝石
アリシアは赤の輝石を3つ。
本人曰く、そんないろいろな魔法を使えないし、今はフレイアがいるから。と言っていた。
決勝の2人は同着であったが、その能力の強さを買われて特別と言うことで3個もらったようだ。
今はネックレス。指輪。イヤリングと4つも輝石を持っている。成金のよう・・・。と思ったけど、それは黙っておいた。
そうそう、私も光の輝石の指輪。ルカに鉱山でもらった光の輝石。
指輪に加工してもらって今は左の小指につけている。
なんか、ちょっと強くなったみたい。と思ったけどなんか変なフラグが立っても嫌なので口には出さないでおいた。
「アリシアって、フレイアしか友達がいないの?」
「わかんないけど、火の魔法以外使わないのよね・・・」
アメリアが不思議そうに耳打ちしてきた。
アリシアくらいの魔導士であれば他の属性の魔法も使えるだろうに・・・。
彼女は炎属性しか使わないアリシアが不思議なようだ。
「見えてきたぞー!」
不思議そうにアリシアの後ろ姿を見る私たちに、先導するトキが声をかける。
私たちは一気に砂の丘を駆け上がる。
「あれが、俺の国、サン=ドラゴだ。」
トキの指差す方向に黄色いレンガ?ブロックのようだもので作られた城壁に守られたアレクサンドリアよりも小さい面積の国が姿を現した。
岩に囲まれて砂嵐を避け、外敵から守るように作られているそれは城塞のようにも見える。
5人と1匹は足取り軽く、サン=ドラゴヘとむかった。




