エピローグ
『宮廷魔導士、おめでとぉー!!』
今夜のファミリアは私たちの貸切。
今日はハイムさんがご馳走を並べてくれている。
「ほんとに、すごいわね。この量。」
「我がファミリアのギルドから宮廷魔導士が誕生したんだ。これはファミリアにも影響あるからね。ほんと、君たちがいて鼻が高いよ。」
「いや、そこまで言われても・・・」
「今日は全部僕のおごりだ。楽しんでくれ!」
「そんなこと言って、うちたちになにか隠し事なんてない?」
「おいおい、やめてくれ、本当に善意だよ」
「なら・・・」
「うん、ありがとう!みんな!」
アリシアは満面の笑みで料理を頬張っている。
私とローレンは、その姿を見て楽しい。
そららはトキとアークの間に入ってなにか話しているようだった。
フランは・・・。私の隣にいる。
「無事に、合格できて何よりだね」
「そうね」
「そっちもあまり無茶してないみたいで、何よりだ。」
「えぇ。そうね」
弾まない会話。
私は、なにか胸にしこりが残ったままだった。
「エルゥ、おいでぇ」
「あうぅ」
すっかりローレンになついたエルは私に抱き上げられてそのまま膝の上で撫でられる。
「なにか、怒ってる?」
「べっつに~」
私は、ほんとに、そんな怒っているつもりはないのだけれど、言葉が刺々しくなってしまう。
どうして、こんなふうになってしまったのか。
「お姉ちゃん、フランがアメリアってあの女と仲良く歩いてるのたまたま、ほんと偶然見ちゃったんだよねぇ。だからじゃないかなぁ?」
「ちょっと!そら!そ、そんなことないもん!あんた、酔ってるんじゃないの!?」
「ひひ~」
こ憎たらしい顔で笑うそら。
余計に話しにくくなったじゃない。
「あ、あれは。その。彼女が一方的に」
「あら?一方的ならいいんですか?」
「いや。そうじゃないけど・・・」
頭では許してもいいかと思っても、心が応えてくれない。
フランは困った顔をしていて、どこかでそれを喜ぶ自分がいた。
「お兄さんは、お姉ちゃんのこと、どー思ってるんですかぁ?」
ローレンが急に放った一撃はファミリアの時間を一瞬止めた。
ハイムが笑いながらローレンを抱き上げて奥に連れて行ったが、それはすでに遅い。
アリシア、そららはもちろん、その場にいる全員がフランへと耳を傾けた。
私は、心臓がドキドキしている。
「ど、どうって言われても・・・」
「・・・」
少しの間が永遠とも感じる。
「アリスは、フランのこと好き!」
『っえぇ!?』
またまた、違うところから放たれた一撃にファミリアは騒然となった。
その場の全員の目がアリシアに向けられる。
この発言には、そららとトキの方が驚いていた。
「か、考え直してアリシア!あんな変態騎士、ぜぇったいに後悔する!あんなの、きらに任せればいいの!」
「あいつがいいのか!?俺の求婚は断って、あいつか!?」
「うん、アリス。フランのこと好き。」
詰め寄る2人。
その前に、問題のある発言がいくつかあるけど。
「変態騎士って・・・。あんなの・・・」
フランにも多少心の傷ができたようだ。
「あんた、アリシアになにしたの?」
そららが剣を片手にフランを睨みつける。
「え?なにも・・・」
「あんたが何もしてないのに、うちの可愛いアリシアがこんな変なこと言うわけない!」
全く身に覚えがない。と反論するフランに聞く耳をもっていない。
アリシアは、そのまま黙って食べ進める。
「ねぇちゃん。俺も加勢しようか。これでも多少腕には自信があってな」
「えぇ、頼むわ。悪い虫は早めに駆除するのが美味しい野菜を作る為には必要なの」
「いや、そらら、なんか話がおかしいって。トキ様も、冗談ですよね?それ」
2人が剣を抜きゆっくりとフランに近づく。
酒に酔ったアークはフランの危機を面白がってみているようだ。
「でも、好きって言っても、お兄ちゃんとして。ね?」
「お、おにいちゃん?」
「兄妹ってことか?」
「うん、だってそこそこ偉くて、そこそこなんでも出来て、全然怒らないし。だから、アリスはいらないからきららにあげるっ!」
「いや、私はいらないって!」
「なによ!お姉ちゃんがそんなんだからいけないのよ!くっついちゃいなさいよ!」
「そうだ!フランがおかしな気を起こす前にくっつけ!今ここで婚約しろ!」
そららとトキが私に迫る。
どうして?
なんでこうなったの?
「う、・・うるさぁ~い!!」
私たちがファミリアで騒いでいる間、アリシアがいなくなったことに気がついたのはもう少し後のことだった。
「中にくればいいのに」
アリシアは、暗いアレクサンドリアの街でただ1人、ファミリアの外で立っているアメリアのもとへ来た。
「いつから、知ってたの?」
「さっき。魔導士同士、なにか感じるものがあるのかも」
「あなたには叶わないわね」
アメリアは寂しそうに笑っている。
「中にいこうよ。みんないるし」
「いけないわ。私は、あなたに酷いことしたのよ。今更そんな。」
「大丈夫じゃないかな。ここの人間は変わってるから」
アリシアの目の前にピンクの羊が姿を現す。
「だ・か・ら。聞いてた?出てくるなって言ってるの!」
「きいてふ。きいてふんはけど、らめらった?」
アリシアはフレイアの顔を両手で押しつぶしながら言い聞かせる。
短い手足をバタバタとするフレイア。
「ふっ、ふふふっ。あなたたち、仲いいのね?」
「そう?迷惑なだけ」
「精霊とそんなに心通わせるなんて。・・・きっとあなたは特別ね」
「そんなことない。アメリアもなれる。人は皆平等に生まれる。」
「言ってることがおじさんみたいね!」
笑いながらアメリアはアリシアに手を伸ばした。
「なに?これ」
「お別れの挨拶よ。あなたを見習って、私も妹を助けるために頑張る。だから、ムーンブルグに戻るわ。」
「・・・」
アリシアは黙ってその手を見ていた。
フレイアはその光景を黙って見ている。
「いや」
「えっ?」
「こんな手、いらない」
「アリシア、そんな言い方しなくても」
フレイアが仲裁に入るも、アリシアは聞く耳を持たなかった。
「うるさい!アリスは、アメリアと行く!」
「行くって、・・・どこへ?」
「ムーンブルグ」
「ダメだよ!危険だ!昨日きららにも言ったけど、あの国は危険だ。また悪魔族が出てくるに決まってる。魔石の精製をしている国だよ!?マッシュもいないんだ。君たちの力じゃ」
「アメリア、友達だもん」
「アリシア・・・気持ちは嬉しい、でもフレイア様の言う通り、危険なの。だから、気持ちだけでいいわ」
「おいおい、負けた奴は勝った奴の言うこと、聞くんだろ?」
ファミリアからトキがフランを羽交い締めにして顔を出す。
「トキ・・・それは」
「言ったこと、曲げんじゃねぇよ。1回決めたらやり遂げろ。その弱さが後悔につながるんだ」
「うん。アリス、今度は絶対に負けないよ?」
アリシアは手に炎の球を作りあげる。
「俺も、手を貸してやる。だから、協力しよう。仲間の願いも叶えられねぇのに、王族ができるか!」
「宮廷魔導士ができるかっ!」
2人は胸を張って威張る。
私とそららは、3人の会話をファミリアの入口で聞きながら次はトキとアメリアの国に行くことにちょっとした不安と、興味を抱いていた。




