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異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
第3章 宮廷に潜む闇
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12-2 宮廷魔導士試験、3日目 お昼の部

「おーい!起きてるかぁ?」


 フランがドアを叩くと、昨日は一切の返事がなかった眠り姫だったが、今日は驚く程あっさりとドアの向こうからその姿を現した。


「おはようございます。フラン様」


 ドアを開けると昨日の寝癖だらけの少女とは違い、髪も整えていて、銀色の髪には6色に輝く髪飾りが映えて見える。

『どうだっ!』と言いたげな少女、アリシアに向かって失笑するフラン。

 あぁ、確かに大人にはなったのだと思う。昨日よりは早起きだし、身だしなみも整えている。


「うん、おはよう。・・・。まぁ、もう昼前だけどね」


 ただし、今が、朝ならば。


「とにかく、どうぞ。」


 アリシアは軽く愛想笑いをするとフランを部屋に通す。

 外の光が眩しい。

 よく晴れた日だった。


「今日は、良く眠れたかい?」


 うーん。と首をかしげるアリシア。


「まぁまぁ。でも、なんだろ。胸が、ドキドキしてる」


 自分の胸に手を当てて静かに目を瞑る彼女。

 その姿を見ながら、『人並みに緊張とかするんだな』と、改めて見つめるフラン。

 まぁ、試験初日に昼寝をしているような少女なので、基本的に緊張をしないのか?と思っていた彼にしてみればそれは意外な一面だった。


「アリシア、君なら大丈夫。邪竜王より強い奴はいない!君が本気になれば勝てない相手じゃないさ」


「うん。だといいけど」


 いくらか元気のないアリシア。

 彼女は妙に耳を気にしていた。

 そこには、あるはずの輝石はもうない。今回は1人しかいない。

 パートナーは契約の証がない以上、彼女を助けてはくれないのだから。


「とりあえず、君にいくつか報告がある」


 フランは床を見ながら元気がなくなる彼女に対し、わざと明るく声をかける。


「報告?」


「あぁ、今日は模擬戦。アレクサンダー城の中にある闘技場にて、戦いを行う。それで、参加者は8人。のはずなんだけど」


「なぁに?」


 じれったい言い回し方に少し苛立つ彼女。

 アリシアは床の上をぴょんぴょんと飛び跳ねる。


「昨日のアリシアとアメリアの魔法を見て、4人が棄権したんだ。」


「棄権?」


「そう、今日の模擬戦は出たくないって。最終的には、宮廷魔導士としての地位も失いかねないけど、あんなの見せられたら・・・ねぇ?」


「そうかな・・・。」


「まぁ、アリシア、トキ、アメリアの他には、アルビドって一般参加者しか残っていない。だから、時間の変更があってね。昼前からの開催予定だったんだけど、アリシアとアルビドは1回戦、昼過ぎから。それまでは、待機所から出ることはできなくなる。だから、ここに入れるのも最後。しっかりと準備をしておきなよ。また、少ししたら迎えに来るから」


 用件を伝えると、フランはアリシアの部屋を出て行ってしまう。

 彼女はその姿を黙って見送った。

 アリシアの不安はフレイアがいないこと。

 結局、赤の輝石は手に入らなかった。

 昨日の魔法も、使えるのは2回。3回使えば、魔力切れになるだろう・・・。


 初戦のアルビド、適当に倒せればいいけど、おそらく最後はアメリアと戦う事になる。

 水と闇魔法の使い手。

 火属性のアリシアには分が悪い。


 窓の外から見物客が歩く姿。それを誘導する兵士たちを呆然と見ながら、彼女はフランが再び戻るまで動くことはなかった。




「すっごい人ね・・・」


 そららはファミリアを飛び出したあと、行く理由もなく王城を目指していた。

 理由は特にない。

 ただ、ファミリアでじっとしていることも出来なかった。


「今日、いよいよ最終日だな。誰が勝つのかな?」


「なんでも、今年は銀髪の可愛い姉ちゃんが一押しらしいぞ」


 なんの一押しなんだろう・・・。

 そんな事を内心思いながらもそららは人の波に乗り、お城へと足を向けた。

 もう、朝と言うよりも昼前。と言ったほうがいいだろう。


 観客はどんどん増えて行き、いつの間にか人の流れから抜け出せるような状態ではなくなってしまった。

 アレクサンダー城では、兵士たちが列を組み、観客を1ヶ所へ誘導するように並んでいる。

 王宮の一部は解放されていて、そららはそのままドンドン奥の方へ進んでいく。


 城下町の反対側に位置する、アレクサンダー城の裏側には闘技場があった。

 普段は庶民に解放されない場所。そこには開けた土地、丸く、円を描いた観客席。何百、何千人が収容できるのか?そららは初めて見るその光景に目を奪われる。


 適当なところに腰掛け闘技場を見渡してみると、そらは吹き抜け、青空天井。入口の上の方には王族の席、その隣には貴族や来賓向けの席が数席並んでいる。


(すごっ。こんなとこあったんだ。)


 お城にこんなところがあったこと、観客の多さ。すべてに呆気にとられてしまう。


「あぁ、あー、あー・・・」


 ガヤガヤとざわめく観客席、気が付けばそこには誰か、1人立っていた。

 青い髪の、銀色のローブを纏った男性。

 そららには彼の声が聞こえない。

 周りの人間たちは彼に気がついていないようだった。


「・・・」


 彼は何か言っているようだが、それはここにいる誰にも届かない。

 そららはその光景を黙って見ている。


(こんだけうっさいと、進行も大変ね)


 膝の上に肘を乗せ、両手で頬杖を付きながら呆れた顔でそららはその光景を眺めていると、青い髪の男性を避けるように大地が燃え上がる。

 観客席は、一斉に静まり返り急に燃え上がる炎を見つめている。


「うるさいぞ!!静かにしろ!!」


(げっ、この声・・・)


 聞き覚えなる声が闘技場に響く。

 貴族席の方から、リカがこちらを見下ろしていた。


「炎よ!」


 リカの合図で燃え上がる炎は大地を這い、巨大な火の文字を書き上げる。

 そこには、【開始は午後から】と書かれている。


「本日、宮廷魔導士の模擬戦は4名のみで行う。残りの4名は棄権し、本日は参加しない。例年より開催時間が遅くなる!開始前には城から合図を出す!」


 リカが手を挙げると上空で何かが爆発したような音がした。爆裂球バースト・ロンドのようなものだろうか。閃光や爆風、音だけが大きな魔法。


「以上、一時解散!」


 その言葉を終わりに、大地に書かれた火の文字は消え、リカは姿を消した。

 闘技場には文句を言う者もいたが、午後開始、と一方的に告げられて観客たちは再び場外へ向かい離れる者、その場に残るもの様々だったが、そららは宮廷魔導士からの報酬をアリシアの出番前に手に入れるチャンス!と感じ、とにかくフランに会って協力してもらおうとお城を探すことにした。が、そららの淡い期待は夢だった。


 一昨日同様、再び城内に一般人が多く出入りしているせいで、警備が厳重。そららの名前を使ってもフランと面会、話を通してもらうことは出来なかった。

 王宮は警備が厳しく、自由に動くことができない。

 そのまま場内を彷徨うように歩きながら、開幕の合図を待つのみだった。



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