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異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
第3章 宮廷に潜む闇
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12-1 置いてきぼりは困ります

 その日のアレクサンドリアは、まるでお祭りでもあるのか?と思うほどに人が多かった。

 市場も活気が有り、通りは馬車が動かないくらいの人が道を行き交っている。

 私たちはファミリアへ向かうために溢れる人の波を縫うように進んだ。


「おはようございます!ハイムさーん!?」


 ファミリアの入口から店内を覗くと、そこには誰もいなかった。


「あれ?まだ営業してないの?」


 私より少し遅れてそららが入ってくる。


「ローレーン?」


 お店の中に私の呼び声に答える者はいなかった。

 エルはお店の中をウロウロと歩いている。

 私たちは顔を見合わせると、とりあえずいつものカウンター席に座った。


 今日は宮廷魔導士試験の最終日。

 我が家の末っ子の結果が出る日だ。

 昨日クリアしたクエストの報酬。火の輝石を使ったアクセサリーを少しでも早く手に入れようと私たちはここに来た。

 のだけど、今は無人のようだ。

 いつ始まるかわからないアリシアの出番に間に合えばいいのだけど・・・。


「おやおや。今日は随分から早くお客さんがいるな」


 そわそわと体を揺らしながら待つそららとは対照的に、この店のマスター、ハイムが入口からゆっくりと手荷物を持ちながら帰ってきた。どこかに出かけていたようだ。


「ハイムさん!昨日の!昨日のはどうなりました!?」


「そら、ちょっとまって。会っていきなりそんな」


 帰ってくるなり、そららはハイムに詰め寄る。

 一応、そららのことを呼び止めはするものの、私もハイムの方へ歩いていく。


「おはようございます、ハイムさん。朝からすいません。妹もこの様子なので失礼とは思いましたけど待たせてもらいました」


「あぁ、別に大丈夫。気にしないでくれ。」


 ハイムは少し考えたような顔をして私とそららの間を通り抜けカウンターの奥へ歩いていく。


「そこで立っているのもあれだし、座らないか?」


 ハイムはグラスに飲み物を注いでくれて目の前のカウンター席に並べた。

 手に持っていた荷物をおろして、片付け始めるハイム。

 その姿を見ていた私たちはとりあえずカウンター席へ座る。


「あの、もしかして・・・」


 なかなか本題に入らないハイム。

 私はグラスを持ち上げておもむろに口を開くと、ハイムはそのまま無言で頷いた。


「すまない。まだ、報酬ができていない。」


「ええぇえ!?」


 そららが不満に満ちた声を上げる。


「本当にすまない。私も、ちゃんと要望を伝えたんだが、魔導士試験に合格した者へ配布する方が優先。と言うことで後回しにされてしまった。今回の依頼についても、依頼者が要望したつじつまが合うし、払う意思があるなら、これ以上はファミリアとしては力になれない。あとは、先方の出方次第なんだ」


「・・・」


 声にならない声で唸るように怒るそらら。

 カウンターの下で足を揺らしながら話を聞いていたが、彼女の中にある怒りメーターはそれなりにMAXに近いだろう。


「結局、火の輝石はいつごろになるんですか?」


「わからないが、今日の夕刻に魔導士試験の閉会式があるはずだ。国王自ら優勝者を代表に、輝石を贈るはずだから、それが出来上がれば作ってくれると思うんだけど・・・。」


「今日の午後って、いつになるんですか!?」


「参加者たちの模擬戦次第だからな。それは・・・」


「お姉ちゃん!うち、会場見てくる!!」


「えっ!?わ、わたしはどうすれば」


 そららは輝石が手に入らないことが分かるとそのままファミリアを飛び出してしまう。

 おそらく、私の声は彼女に届いていないだろう。

 このまま、私にどうしろと??


「うわー。置いてかれた」


「なんか、すまないね。せっかくの報酬。早く渡してあげられなくて」


 入口から飛び出して行ったそららの姿が見えなくなり、私がこのあとどうしようか悩んで漏らした一言にハイムは多少なりとも気を使っているようだった。


「いや、別に大丈夫ですよ!。置いていったのはあいつだし・・・」


 私はグラスの飲み物を手に取りながら内心、どうしようかと考えを巡らせていた。

 このままそららを追いかけても、合流できるかはわからない。

 このまま待っていたら、どうなるのか。最悪アリシアの試合が見れないかも・・・。

 不用意に城下町に出てもこの人だかり・・・。迷子になって一日が終わりそう。

 私はため息をつくと、一つの結論をだした。


「ハイムさん、ここにいてもいいですか?」


 どこに行ってもダメそうなのでしばらくここにいることに決めた。


「えぇ。大丈夫ですよ。報酬も届くかも知れないし、お好きなだけいてください」


 勝手に押しかけて、文句を言うだけ言って消えていった妹のおかげで少し言いにくかったけど、ハイムの笑顔に救われた私はそのままお店で時間を潰しながら報酬かそららかどっちかが戻ってくることを待つことにした。




「帰ってきませんね」


 お昼前になり、アレクサンドリアで数少ない外食店のファミリアはお祭りムードの影響か、いつもとは違う客層、冒険者や傭兵以外のお客の来店もあり賑わい始めていた。

 そららは未だに帰ってこない。


「そうですね。あの子、どこまで行ったのかな・・・」


 私はハイムの作った食事をローレンと一緒の運びながらファミリアの手伝いをしていた。

 入口の外を時折見てはみるものの、人通りだけが増えてそららの姿は見えない。報酬の輝石も届けられない。

 私はただ椅子に座って待つことに飽きてしまい、ローレンと一緒にウエイトレスをやっていた。

 まぁ、ハイムさんが食事を作ってくれたこともあって、一食一飯の恩。ってやつね。

 都合のいいことに、どうせいつもメイド服だし。


「お姉ちゃん!これ、奥のテーブルお願いしますっ!」


 ローレンがグラスになみなみと注がれた飲み物をカウンターに次々と並べる。

 私は手で持てるだけ持って言われるがまま運んでいく。

 意外とこれが重労働なのよね。


「今日の対戦、聞いたか?」


「対戦?毎回恒例の模擬戦、なんかあったのか?」


 私が飲み物を持っていくとテーブルでは今日の宮廷魔導師の話をしていた。


「魔導士同士の模擬戦、毎回トーナメント戦らしいが、今年は今日になって4人も棄権したらしくて、宮廷ではどうするか対応に追われているって言ってたぞ?」


「はいっ!お待たせしました!お客さんたち、試合を見に来たんですか?」


「おぅ!今日は仕事休んで見に来たんだ!でも、4人も棄権したってきいて、今年の宮廷魔導士に採用された人間は腑抜けばっかだ」


「4人つったら、はんぶんか?」


「どうして棄権したんですか?その4人」


「どうしてって、そんなのは知らねえけど、さっき闘技場へ行くとき壁に書いてあったんだよ。今年の模擬戦は4名で行う。ってな。」


「どうせ、大した魔導士じゃないんだろっ!?」


「あははっ!ちげぇねえ!どうせろくな魔法も使えないでコネで入ったようなやつなんだろ」

 2人は私が持ってきたグラスを一気に飲み上げるとおかわりを求めてきた。


「ねーちゃん!もう一杯くれ!」


「俺にも!」


「は、はいっ!すぐ持ってきます!」


 外の様子も気になるけど、なんせこの状況を放ったらかしにして行くわけにも行かない。

 私はカウンターにあった違う席へ運ぶはずの飲み物を急いで持っていく。


「はいっ!お待たせ!ねぇ、模擬戦って、いつから始まるの?」


「おぉ、早いな。」


 男はグラスを持ち得体の知れない飲み物を軽く喉に流し込むと満足そうに話してくれた。


「昼過ぎからだ。開始の時には合図があるって言うからこの街のどこにいてもわかると思うぜ?」


「合図・・・。わかったわ、ありがとう!ゆっくりしてってちょうだいね!」


 私は軽く愛想笑いを振りまくとカウンターに戻ってくる。


「ローレン、ごめんね。これ、あと二つ奥の席追加!置いといてくれたら私が運ぶわ!」


 足りなくなった飲み物2つ分をローレンに追加注文し、配膳待ちの残った料理を運ぶ。

 少なくとも、ここに試験の見物客がいるってことはまだ始まらないようだ。

 焦る気持ちを落ち着かせながら、私は仕事に専念していた。


「ごめんね、手伝わせちゃって」


「いいのよ。このくらい。でも、私のことはここの客さんに言わないでね。臨時の従業員ってことで」


「ああ、了解した」


「おねーちゃん!こっちもお願い!」


 ローレンが再びグラスを壁のように並べている。


「ねぇ、これなに?」


「なにって、ビールですよ?大人はそれが好きなんだって」


「そ、そう。ありがと」


 私が飲んだことないこの飲み物、メニューも読めないので理解できなかったが、アルコールらしい。

 ワインは見たけど、ビールもあるのね。飲んだことないから味は知らないけど・・・。

 いつもは傭兵や冒険者しかいない静かなファミリアに落ち着きが戻るのは、今よりもう少し先のことだった。


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