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異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
第3章 宮廷に潜む闇
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11-4 各々の夜  ~トキ・アメリア~

 静寂に支配されゆく城下町。少年は王宮の外にいた。

 アリシアたちと別れたあと、トキは城に戻っては来たものの、心に渦巻くモヤモヤを抱えて苛立っていた。

 王宮の扉を通りすぎ、お城の裏側へと進む。


「トキ様・・・。こちらには」


 時の世話役、兼、監視役の重騎士アークは出会ってから始めている少年の苛立ち方に手をこまねいていた。


「なにがある?」


 アークの静止に聞く耳を持たず、不機嫌そうに答えるトキ。


「我々騎士の修練所がございます・・・」


 ズカズカと足を踏み入れていく先には少し開けた場所があった。

 草も生えていない、少し開けた大地。

 そばには使い古された木刀、休憩場所と思われるベンチがいくつか並んでいた。


「アーク。手合わせできないか?」


 トキは無造作に置かれていた木刀を1本拾い上げてアークへと放り投げる。


「自分ごときでは、相手にならないでしょう」


「黙れ。本気で、俺を殺すつもりで来い」


 彼の無用な謙遜はトキの苛立った心を逆なでる。上着を脱ぎ、自身も木刀を拾い上げアークを睨みつけ構える。

 アークは迷いもしたが、これが役目とあれば。とトキの相手をすることにした。


「では、参ります」


「手加減無用!」


 トキの言葉を合図にアークはトキへ突っ込み、思いっきり木刀を振り下ろした。

 ゴンッ

 鈍い音を出してぶつかり合う木刀。

 上からアークが全力で振り下ろし、下ではトキが全力でそれを受けている。


 ・・・


 睨み合うふたりだが、トキの木刀はアークの力に負け、手から半れて宙を舞う。

 アークの木刀が勢いあまり地面に突き刺さる。

 トキの木刀はカランカラン、と音を立て離れたところに落ちる。


「いかがされたのですか?先ほどの件も、今も。トキ様らしくないようにお見受けしますが」


「らしくない・・・か」


「なぜ、あの場で正直に言われなかったのですか?」


「アリシアは、きっと優しい子だ。言ったら、・・・あいつは自分の人生を考えないで俺を助けてくれると思う。でも、事が済んだら俺はあいつにどんな顔して会えばいい?あいつは今、自分の夢をつかむために頑張っている。俺も、どうにか守ってやりたいやつがいる!でも、二人共俺の友人だ。どっちかを選んで、どっちかを捨てることなんかできない。」


「トキ様は、お優しいですね」


「優しいもんか。ただ無力で、女ひとり助けられない愚か者だ」


「メグ様・・・ですか」


 トキは飛ばされた木刀の方に歩み寄る、アークに背を向けたまま返事をしなかった。


「国が違い、我らにできることも限られております故、軽はずみな言動は騎士としての品位に関わるために、自分にはお話することが、トキ様を助けるとお伝えすることができません。ですが、強くなってください。そのための助力なら、いくらでもできます」


「あぁ。俺はメグを助けるためにここにいる。ここで、さらに強くなる。」


 トキは飛ばされた自分の木刀を拾うと、再びアークに挑む。

 アークはトキの攻撃を悠々と受け止める。

 魔導士であるトキの剣術はアークには通用することもなく、必死に打ち込むトキの一撃はどれもアークには届かない。

 それでもふたりはそのまま、言葉を発することなく木刀で語り合っていた。




 アレクサンドリアを歩くその姿は、とても目立っていた。


 銀色の髪、スタイルのいい体。それは見る人を釘付けにするには十分な魅力だった。

 アリシアとフランの二人と別れたアメリアは世話役の魔導士に連れられて歩いていたが、途中で落ち着きを取り戻し城下町、とも言えるアレクサンドリアを散策していた。


 すでにほとんどのお店が閉店していたが、まだ営業しているお店もあった。

 ここ、ファミリアもその一つだ。


「あいてるかしら?」


「いらっしゃい。どこでも、お好きなところへどうぞ」


 ファミリアの中は数人の酔っ払い。傭兵、冒険者がいるくらいで、いつもの賑やかさがなかった。

 今はあまりうるさいところを避けたい彼女には好都合のお店だった。


「あなたが、ここのマスター?」


「えぇ。ハイムと申します。何をご用意しますか?」


 ハイムの前に並ぶカウンター席に腰掛ける彼女。

 店内を簡単に見渡すと一言。


「なんでもいいわ。適当に飲めるものと、食べるものをお願い」


「かしこまりました。そちらは・・、お連れ様ですか?」


「監視役みたいなものよ。彼にも適当になにかお願い。そのへんに座っててよ。さっきは、・・・その、介

 抱してくれて感謝してるけど、やっぱ監視されてるのは気分が良くないの」


 アメリアは少し言いにくそうに魔導士に告げると、近くのテーブル席を指差した。

 彼もまた、特に異論なくアメリアの指示に従う。

 ハイムはアメリアのもとへお酒のつまみになりそうなものと、グラスに入った赤い鮮やかな飲み物を出した。


「お嬢さんは、宮廷魔導士の参加者ですか?」


「えぇ。そうよ。ちょっと色々とあってね。部屋に居ても仕方ないから出歩いてたのよ」


 アメリアはフランから出された料理をつまみにお酒を飲みながら答える。


 本心は、アリシアに曝け出した自分の心に巣食う恐怖が悩みの種だった。

 フランとアリシアに、お酒の力を借りたとは言え自分の目的、自国の情報を教えてしまった。

 2人からは特になんの答えも聞けなかった。フランに関してはアメリアの問題に首を突っ込みたくない。という姿勢が強く見受けられたし、淡い期待を込めていた分、今胸に押し寄せる絶望は計り知れないものだった。


 ルグナリアに置いてきた妹のこと。


 それがアメリアの心を狂わす悩みだった。


「お嬢さんと同じく、銀色の髪の少女。ご存知ですか?」


 アメリアの切羽詰まった顔を見ながら、ハイムはただ、適当に声をかけた。

 彼自身、特に意味があるわけではない。ただ、彼女の浮かない表情が痛々しく思えた。だから、せめて今だけは笑顔が戻れば。とゆうそれだけの気持ちだった。


「えぇ、知ってるわよ。アリシアでしょ?何か関係あるの?」


「いえ、実は知り合いでして。彼女もうまくやっているのか知りたくて」


「えぇ。アリシアも無事に明日の最終選考まで残っているわよ。まぁ、今日をクリアすれば明日の最終選考まで待たなくても宮廷魔同士の地位は約束されてるのだから、もう彼女も宮廷魔導士ね。」


「合格しましたか!それはよかった。きっと二人も喜ぶ」


 ついさっき妙な別れ方をしたアリシアのことをつつかれて心のしこりが残るアメリア。

 明日朝に来るきららとそららにアリシアの事が報告できて喜ぶハイム。


「ねぇ、二人って。だれ?」


 アメリアにとって、ハイムの言っていた2人のことが気になった。

 アリシアからは何か聞いていたわけでもないし、フランからも何も聞いていない。


「アリシアのお姉さんですよ。この辺りでは有名ですよ。本人たちはきっと知らないでしょうけど」


 楽しそうに笑いながら話すハイム。


「へぇ・・・」


「今日も、北の鉱山からアリシアのためにクエストを受けて赤の輝石をもらう報酬をクリアしてきましてね。妹が試験に受かるように、自分たちに出来ることをしてあげたいんだって・・・。時々喧嘩もするし、大の男相手に喧嘩もするような気が強いお姉さんですけど、いつも仲良しなんですよね。」


「お姉さんがいるんですか。それは知らなかったわ。どこに住んでいるのかしら?」


「さぁ。このアレクサンドリアではないと思いますけど。そこまでは・・・」


「アリシアのお姉さんも、強いのかしら?」


「どうでしょうか?実際に戦っているところを見ているわけではありませんが・・・。でも、南の海でなんでも巨大なイカを倒したとか。」


「イカ?」


「え、えぇ。宮廷騎士様や魔導士見習いの方と協力されて、なんか強力な魔法でアレクサンダー城ほどの大きさはあるんじゃないかって巨大なイカの頭を吹き飛ばした・・・とか、なんとか。」


「そんな魔法使いがいるのっ!?」


「いや、噂ですよ。うわさ。どこまで尾びれ背びれがついているのか・・・」


 予想以上にアメリアが話に乗ってきてくれたことは嬉しいが、正直ハイムも付き合いが浅いためあまり詳しいことは知らないので言葉に詰まり始めていた。


「誰もアリシアたちが戦っているのを見たことないの?」


「そうですねぇ。たまに小競り合いして店先で喧嘩するのは見ますけど、実際に本気でって言うのは見たこともないですね。・・・あぁ!」


「なに!?なにか思い出した!?」


「今日、見たこともない小さい動物を連れてましたね」


「・・・動物?」


「えぇ、白い、たしか・・・エルって呼んでましたね。うちの娘もあの3人を慕っていて、ほんと。いい3姉妹ですよ」


 ハイムがこれ以上アリシアの姉についての情報がない。と確信したアメリアはグラスに残っていたアルコールを一気に飲み干す。


「そう、ごちそうさま・・・。美味しかったわ。」


 アメリアはそう言うと席を立ち上がり、1人店の外へ歩いて行ってしまう。


「また、これたら来るからその時はよろしく!」


 店の入口で彼女はハイムに精一杯の笑顔で別れを告げると、城の用意された部屋に足を向けた。

 世話役の魔導士を待たずに一人で出て行ってしまう彼女。


「あ、あぁ。毎度どうも・・・」


 残されたハイムはアメリアが席を立った理由も分からず、その場に残されて2人が出て行くのを見送るのみだった。


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