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異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
extra 短編
68/126

EXTRA 冬に咲く花 3

 王都の入口を抜けると、そこは普段のアレクサンドリアの町並みとは違いサーカス団がきているかのような賑やかさをみせていた。

 いつもなら、夜は閑散としていり町並み、一通りが昼の市のとき、もしかしたらそれ以上に賑やかだったの。


 陽が落ちたあとに何度かアレクサンドリアの城下町を歩いたこともあったけど、この世界の人は基本的に夜は行動しない。

 でも、今日は違ったわ。街の中がまるで昼間みたいに明るい。

 城下町のいたるところに見たことのない発光物があって、まるで街灯のように照らしている。


「うわぁ~・・・」


 見たことのない私とアリシアは初めてアレクサンドリアに来たかのように、キョロキョロと辺りを見回してしまう。そららだけが、慣れた様子で馬車を進ませていく。


「どうしたの?これ」


「今日は年に一度の開交日。よその国の商人がこのアレクサンドリアで商売をすることが許されるんだって。もちろん、揉め事を起こした時点で宮廷騎士に捕まって処分されるからそんなチャレンジャーな奴はほとんどいないわ。基本的に、1日限りの出稼ぎ、って感じで諸国の交易品を売りに来るのよ。国を超えた市場って感じね」


「へぇー、知ってた?」


「・・・」


 私の問い掛けに無言で頭を振って答えるアリシア。

 彼女もまた見たことのないものが多く並ぶこの街並みが珍しいようだ。

 見たこともないような毛皮、きらびやかな宝石、いい匂いがするものの、なぜか見た目がグロテスクな串焼き。鈍色に光る甲冑、武器の類。


(あっ・・・。弓、忘れた。そらも、手ぶらね・・・)


 今更ながら普段持ち歩く武器のことを思い出した。急に出かける、なんて言われてついつい忘れてきちゃった。まぁ、アリシアがいる大丈夫かな。ここは一応、王都だしね・・・。以前、他の国ではそららが拉致されたけど・・・。


「そらら・ウィル・トルヴァニア様、お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」


「ありがとう!ご苦労様」


 そららが警備に当てられた宮廷騎士の一人に誘導されるまま広場の中に馬車を停める。他にも馬車はたくさんあり、どうやら今日はここは臨時の馬車置き場のようだ。


「皆様に、精霊の祝福がありますように」


(精霊の祝福?)


 宮廷騎士の方は胸の前に右手を置き、人差し指で小さく十字架を描くと小さく頭を下げてそのまま走っていった。

 それに答えるようにそららも同じ仕草を行っている。

 どうやら、この世界の新年の挨拶?のようだった。

 でも、アリシアはしてなかったしな。


「なぁに?今の挨拶?」


「そんなことも忘れちゃったの?あれは、お城に関係あるもの同士の挨拶よ。またお互いに青い月夜の晩に会えるようにって。」


「そ、そうなんだ・・・」


 忘れたっていうか、知らないし・・・そんなこと。


「どこいくの?こんなにたくさんいろいろあると・・・」


「まずは、いつものお店よ!南門の方へ行くよ!」


 アリシアの言葉を遮って意気揚々と歩き出すそらら。

 いつものお店?


「いつものって?」


「いいからいいから!あまりお城のそばにいるとめんどくさいのに捕まるから」


「めんどくさいの?」


 思わずアリシアと顔を見合わせてしまった。

 めんどくさいの。・・・めんどくさい?。なにかあったかな?


「あ、ちょっと!まってよ!!」


 1人ルンルンで足軽く進んでいくそららをアリシアと急いで追いかけていく途中、めんどくさいの。の正体が一瞬頭に浮かびました。



「ねぇ、それでなにがあるのよ?」


 人の波に飲まれながら、満面の笑みで進み続けるそららに声をかけてみる。

 アリシアは、いつの間にかそららのことよりも屋台や露天商の方が気になって私たちの服の裾を持ちながらよそ見をしながら歩き続けている。

 正直、私もいろいろ見たい・・・。


「ふふ~ん、うちは今日のために生きてるのよ!・・・あっ!」


 何を根拠に、と思うくらい誇らしげに胸を張って威張るそらら。その直後、まるで飼い主を見つけた子犬のように走っていく。

 今はあのツインテールがしっぽに見えてしまうわ。

 そして数人の先客の裏に並ぶと、こちらを向いて手招きをしている。


「なんだろ・・・」


「さぁ?でも、そららがあんなに喜ぶんだからきっと食べ物じゃないかな?」


「確かに」


 人にぶつからないように走ってそららのもとへ行くと、そこは氷の樽が並んでいた。

 文字通り、氷の樽。

 アメリアが使う氷魔法で作り出したような、見事な樽だった。


「なぁに?これ」


「こおり?」


「いや、アリシアそれ見ればわかるから」


「おっちゃ~ん!!今年も来てくれるって信じてたよぉ!!」


 おっちゃん??


 不思議そうに氷の樽を鑑賞していた私たちをよそに、今まで聞いたこともないような猫なで声のそららに驚いた。

 あんた、今どっから声出したのよ?そのいつものそらら様からは想像できないような甘えた子猫のようなキャラはなに!?

 いつもなら、


『きたの?』


 とか、


『早く来てよ!』


 とか、王宮騎士様にも冷たい態度を取るのに。

 そんな甘えちゃって・・・知り合いなのかな。


「おぉ!ちびすけ!でかくなったなぁ。お前さんの分はバッチリとってあるぞぉ!」


 毛皮のコートを着た見るからに雪国出身のおっちゃんは氷の樽の中からひとまわり小ぶりな樽を出してくる。


「常連客だからな、これはちびすけ専用なんだ」


 小ぶり、と言ってもアリシアの背丈くらいはある樽を慣れた手つきで手前までもってくるとゆっくりと蓋をあけた。


「あったりまえよー!うちはこの日のために生きてるんだから!」


 この、氷の樽の為に生きてるとは、またそららの人生ってどーなのかしら。

 ぴょんぴょんと跳び跳ねながら即席のカウンター越しに見える樽を愛しそうに見つめている姿は乙女のよう。

 まぁ、女の子なんだけどね。


「なにかしら?あれ」


「さぁ?」


 おっちゃんが大きめのスプーンを樽に入れてグルグルとかき混ぜると、中からオレンジと黄のような、黄色のような色をしたものが表れた。

 樽の中からビヨ~ンと伸びて、スプーンに絡み付くその姿はまるで、トルコアイスのような・・・


「あ、アイス?」


「きたきたきたきたぁーー!」


 私たちのことなんかお構いなしで大興奮のそらら。

 うん、あれは多分アイスだ。黄色・・・黄色?なに味なのかしら?


「ちびすけはホントにこれが好きなんだな」


 そららの興奮状態に若干引いてるおっちゃん。

 自分の顔面よりも大きいんじゃないか?って思えるような巨大なアイスを半ば強引におっちゃんから奪い取るとそのままガブリ。


「ちょ、ちょっとそら、」


「お、おいしぃー!!」


 私が止める前にそららはなんの躊躇もなく大きな口でかぶりついた。

 両手で巨大なアイスを持つ姿がなんかマスコットみたいで可愛い。さっきまで馬車の上で鼻水出しておっさん臭いくしゃみをしていたとは思えないわ。


「ほら、ねーちゃんも、好きだろ?そこのちっこいのもどうだっ?」


「わ、私?」


「アリスも?」


 おっちゃんはそららと同じように樽の中から特大のアイスを引っ張り出すと私に向けて差し出してくれた。

 この感じだと私も例年このアイスをもらっているようだ。


「あ、ありがとうございます。・・・!?っおも!」


 そららの顔面サイズのアイスは随分と重い!

 うっかり、普段のアイスの要領でいくと重さ的に10個分くらい?とにかく、めちゃめちゃ重い。っていうか、こんな食べれるの?


「あ・・・」


 トロピカルフルーツ?何だろう、マンゴーとか、オレンジとか、そんなフルーツの味がする。

 南の海でそららが飲んでたジュースみたいな感じの味。この世界でもアイスがあるなんて、少し嬉しいかも。


「うまいだろー!?ちっこいのは初めてだな。ちびすけの友達か?毎年ちびすけはこれを食べに来るんだよ!初めて会ったときは髪が短くて、鼻水出して無愛想でな。坊主かと思ったら女の子じゃねーか、今さらお嬢ちゃんとは言えなくてな。こいつは俺の中でちびすけなんだ。大きくなったもんだな。」


 いや、大丈夫。おっちゃん。こいつはおっさん臭いとこあるし、どっちかと言えば男よりな気がする。すぐ喧嘩するし、怒るし。


「やめてよ!そんな話。うちは美味しいものが食べれて、みんな元気ならそれでいいのよ」


「みんなって言えば、あの坊主はどーした?」


「坊主?」


「あぁ、アイツ?どっかで仕事してんじゃないの?仮にも―」


「アイツ?坊主?誰のことかな?」


 アイスを食べてご機嫌なそららの肩が一瞬ピクリ、と動く。

 私とアリシアは代わらずこの世界で食べられたアイスを静かに堪能中。

 その時にフランの姿が見えた。

 私たちと同年代で、関係のある少年はコイツしかいないわね。


「あ、あらフラン。仕事は?」


 なに?それ、誰の真似?

 なんとなく、私の真似をしてるような言い方をしているそららにささやかな苛立ちを覚えるも、フランのゲンコツがそららの頭を直撃した。


「っつ~・・・」


「おぉ!坊主、でっかくなったなぁ!」


「ご無沙汰しております。毎年僕も楽しみにしてるんですよ。大丈夫ですか?こいつらに迷惑かけられてな

いですか?」


「アリス、ねぇねみたいに騒いでないし」


 っていうか、その言い方だと私も迷惑かけてるみたいに聞こえるんだけど・・・。


「大丈夫だ!前はひどかったからな。ねーちゃんは食べたかったのに売り切れちゃったから泣き出して止まらなかったからなぁ。なんつってもちびすけが商品全部食い尽くしちゃったからな。それに見てみろ!これっ!」


 自慢げに出したのはさっきのひとまわり小さい樽。


「それは?」


 私たちが持っているアイスを横目で見ると、なんとなく察したフランではあったが一応訪ねてみる。


「ちびすけ専用の樽でな、もう絶対に売り切れにはさせないって約束したんだ」


 それ、そのための樽だったのね。

 誇らしげに笑うおっちゃんのその心意気に脱帽です。

 このアイス、以外と奥が深いわ。

 わたしは手元にあるアイスを見つめていると、隣から冷たい視線が・・・


「きら、そんな子供みたいな駄々こねたの?ねぇねは・・・なんとなく解るけど」


「わ、私!?するわけないぢゃん!」


「ちょっと、うちは解るけどってどーゆーことよ!」


「相変わらず賑やかだなぁ。ちびすけたちは。・・・ホイッ、坊主で終わりだ。ちびすけ専用の樽はこれで空っぽ」


「あ、ありがとうございます」


 フランはおっちゃんが差し出したアイスを苦笑いをしながらも黙って受けとる。どうやら、坊主、と言われた事が少し気になったらしい。

 おっちゃんは、そんな事お構いなしで空っぽになった樽を見せて誇らしげに笑っていた。

 そんなことよりも、


「どーしたの?こんなところにいきなり」


「ん?・・あぁ!!アリシアを探してたんだ」


「アリスを?なんで?」


「なんで?って、王宮から書簡が届いているだろう!?」


 のんきにアイスを食べながら談笑していたフランは一瞬で表情を変えると、よく理解していないアリシアの手を強引に掴むとそのまま走り出した。


「ごめん!宮廷魔導士が召集されているから連れていくよ!ホラっ行くよ!?」


「えぇっ!?まだ、まだいろいろたのしみたいのにぃぃ~!」


 人混みの中、アリシアはフランに連れられて姿を消していった。

 なんだったのかしら?あれ。


「そんじゃおっちゃん!また自信作待ってるわ!今年も美味しかったよ!」


「おぉよ!また今度な!」


 簡単に別れを告げると、そららはまた歩き出した。

 私も軽くお辞儀をするとそららの後ろを慌ててついていく。・・・も、人が多くてあまり進まない。


「そらっ!ちょっと、・・・まってよ!」


 私の言葉は人混みにかきけされ、そららの姿はそのまま見えなくなっちゃった。

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