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異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
第2章 黄昏の悪魔
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8-12 魂の開放

「お姉ちゃん!アリシア!」

 海岸に戻ると、そららが私たちのお出迎えに来てくれた。

 全身汚れて、髪もボサボサになった彼女は一目散にアリシアの元へ向かう。

 正直、アリシアはもう気を失って動かないし、私もなんとか立っているのがやっと。

 実際のところ、フレイアのサポートがあってもこの弓、神弓エルフィンの発動にはかなりの魔力を必要とするようで、私の魔力もけっこう消費したらしい。

 そららは小さな傷はあるものの、大きなけがはなさそうだ。

「大丈夫か!?」

「最期の、すごかったねぇ?」

 モロゾフとトロイアが私の元へ駆け寄ってきた。

「あれ?アルビドは?」

「あぁ、そこのちびっ子と同じで向こうで伸びてるよ」

 トロイアの指差す方向で気を失っている姿が見える。

 魔法もたくさん使っていたし、かなり消耗したのだろう。

「3人とも、助かったわ。本当にありがとう。」

 私は2人に心から礼を述べた。

 正直、この3人がいなかったらかなり危ないところだった。

 初めて会った時は最低な人間と思っていたけど、実際に一緒に戦うと頼りになる人間と言うことが分かった。

 人は第一印象だけで決めてはいけないようだ。

「いやいや、それより、最後のはいったいどんな魔法なんだ?」

「うーん・・あれは、アリシアとの合体魔法なの!だから、私はよくわからなくて・・・。起きたらこの子に聞いてちょうだい!」

 エルフィンのことを誰かに言うのもなんかいけない気がするし、ここはとりあえず適当にやり過ごすことにした。

 アリシアは次、この3人と会ったらわけのわからないことで問い詰められるだろうけど、その時にまたなんか適当に言うとしよう。

「合体魔法か・・・。アルビドが聞いたらまた研究に没頭するな」

「ちがいない!」

 2人は笑いながらそららと私に握手を求めてきた。

「むらさき・・いや、そらら殿。勇敢なその姿勢、惚れたぞ!アレクサンドリアに来たらぜひ食事でも行こう!」

「え、えぇ・・・。そうね。時間があれば。今日はうちも見直したわ。とにかく、ありがと!」

 少し引きつった笑いを浮かべてたそららであったが、今日の戦いは素直にモロゾフの事を見直したのだろう、笑顔で答えていた。

「きらら、君たちは強いね、怪我したら王宮にきなよ?ちからになれるなら力になるよ!」

「うん、頼りにしてるわ。」

 私たちは握手をしてわかれると、朝日が照らす海岸で静かに待つ海賊の元へ向かった。



「どうしたの?静かになっちゃって?」

「念願のクラーケンを倒したのよ?」

 私たちの声に反応しない海賊たち。

 心ここにあらず。

 それはもう抜け殻の様だった。

 みんな、朝日に照らされてその体がうっすらと透けてきている。

(時間がきたのかな・・・)

 私はそららと顔を見合わせて、海賊たちの事を見ていることしかできなかった。

 海に浮かぶシルフィーアの瓦礫がうっすらと消えていく。

 海賊たちの魂の力で具現化していたのだろうか。

 その役目を終え、ひとつ、またひとつとその姿を消していくシルフィーア。

「無事に、倒せたみたいでよかった。」

 私たちの背後で聞いたことのある声がした。

「ソレード!?」

「あ、あんた死んだんじゃ・・・」

 クラーケンに薙ぎ払われ、その体を海中に沈めた男が立っていた。

 ソレードはバカにしたように笑うとこう言った。

「ばかだなぁ。俺たちはもう死んでるんだ。2回も死んでたまるか!ってんだ」

 あぁ。そうだった。こいつらはもう死んでた。

 最初はわかっていたんだけど、あまりにも死人って感じがしないせいですっかり忘れていた。

「そうね、死んでたんだったわ。」

「さすがの俺もあの攻撃には驚いたけどな、死ぬところだったぜ!」

「生きてれば、ね。てゆうか、完全にあれは死んだわよ?」

「ちがいない!」

 彼の笑い声が海岸に響く。その声に反応する海賊は誰もいなかった。

「ねぇ?こっちのみんなはどうしたの?」

 そららが海賊の一人に近づく。

「そいつらの魂は、もう逝ったのさ」

「逝った?」

 そららが体に触れると、その身体は砂のように音もなく崩れ去る。

「あぁ。お嬢さん方のおかげだ。みんな、奴を倒したのを見届けて逝ったのさ。」

 1人の身体が崩れると、その隣、また隣とドンドン広がっていき、海賊のたちの姿が消えていく。

 まるで、初めからそこには何もいなかったように・・・。

「ソレードは、大丈夫なの?」

「いや、俺も時間だ、みんなが待ってっからな。」

 私の問いに、彼は満足そうな笑みで答えた。

 朝日が強くなるにつれ、彼の身体も薄くなっていくようだった。

彼の体に、影はなかった。

「お前さんたちには、世話になった。ありがとう。」

 彼の差し出した手を私たちが掴むと、その手をすり抜けてしまい彼にはもう触ることができなくなっていた。

「あっ・・・」

「ちっ、もう触ることもできないか」

 彼は一瞬顔をしかめると、そのままそららのおしりを触る仕草をする。

「こ、こら!!この変態幽霊!」

「ざんねーん。もう触れませ~ん!」

「さいっていの幽霊ね!」

「あはは、俺は辛気臭せぇのがきらいでな。なぁに、俺たちはもうずっと前に死んでるんだ。お前さんたちが俺たちに同情することはないんだよ」

「だ、誰が同情なんかするもんですか!」

「そぉかぁ??ならいいんだけどなぁ?」

 笑う彼の足は、すでになかった。

 別れの時が近い。

「ソレード、いろいろありがとう。」

「うちたち、あんたに会えてよかった、と思いたいわね」

 ふんっ!と怒るそららも、最期の別れが近いとわかっているせいか、いつものようにキツイ感じではなく、子供に対して怒るような、優しい口調だった。

「あぁ、俺たちもだ・・・3人に会えて本当によかった。」

「俺たち?」

 ソレードが向ける視線の方には、朝日に照らされて光るシルフィーアが元の姿で海面に浮かんでいた。

 どこも折れていない、きれいな状態で。

「どうやら、あれが俺たちのお迎えらしいな。」

『へいっ!かしらぁ!!』

 ソレードの周りに、白く輝く球がいくつも見える。

「俺たちの魂は、何色に見える?」

 ソレードが私たちに問いかける。

 私とそららは顔を見合わせて

「まっしろよ」

「あんたにはもったいないくらい、光ってるわ」

 ソレードはその言葉を聞くと満面の笑みを浮かべたのを最後に、彼の身体は消え去り、一つの光の球が現れる。

 その光は仲間の魂と共に新しい未来へ歩み始めた。

 シルフィーアに向かう直前に

【お前たちのおかげだ。・・・ありがとな】

 少し照れたような言い方で、私たちに別れを済ますと、そのまま遠い、手の届かないところへ行ってしまった。

 朝日の中に消えていく彼らの門出を、私たちは静かに見守っていた。

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