表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
第2章 黄昏の悪魔
59/126

8-9 3バカが参る!

『ギュアァアァァァ!!』


 そららの放った魔法を受け、クラーケンの動きが止まった。

 空気の鎗はクラーケンを貫き、粘液でベトベトの触手と身体には礫のような雹が幾多とぶつかり、グニャグニャになっている。

 鎗は触手をすべて貫通し、クラーケンの頭部へ突き刺さっているモノもあった。

 体の内部には雷が走り、青い目は光を失い、その場に巨体は倒れた。

 クラーケンの頭部にあいた穴からは体液が噴き出していて、戦いの終わりを告げているようだった。

「倒したの?」

「多分。」

 瓦礫に隠れてみていた私たちにそららは『どうだっ!』と言わんばかりに胸を張りながら笑っていた。

 クラーケンの放電にやられた海賊たちも少しづつ体の自由を取り戻し、起き上がっている。

「倒したみたい・・・だよね?」

「うん、動かないもん。ねぇねの勝ちだよ!」

 私とアリシアはそららに駆け寄る。

「そら、すごい!!」

「うん、ねぇね、強い!」

「ふふ~ん!もっと褒めてくれていいよ?うち、褒められて伸びるタイプだから!」

 光を失った剣を大地から抜くと、クラーケンの方に歩み寄るそらら。

「なにするの?」

「とどめ。やっとかないとあぶないでしょ?」

「まってくれ!!」

 そららの前にソレードが立ちふさがる。

「な、なによ?」

「3人には感謝している。この通り、クラーケンを倒す事が出来た。それは、本当に感謝している。でも!!」

「で、でも?・・・なに?」

 いきなり大声を上げるソレードに目を丸くするそらら。

「トドメは、俺たちにやらせてくれ!」

「・・・は?」

「調子がいいこと言ってるのはわかってる。ここまで追い込んだのはそららだってこともわかる!でも、こいつにトドメは、俺たちの手で刺したいんだ。頼む!」

 やっぱりクラーケンは海に必要だからとか、やっぱり殺さないで共存したいとか、変なことを言い出すのかと思ったけど、自分の無念を晴らしたいご様子だった。

「別に構わないわよ。そんなこと。」

 そららは二つ返事でOKした。

 別に、誰がとどめを刺しても変わらないし、もともとソレードたちの戦いだったってのもあるし、そららはそこまでこだわってはいない様子だった。

「いいのか?!」

「いいから、さっさと捌いてよ。不気味なんだから・・・」

「ありがとう!ありがとう!」

 そららの手を強く握ると、ソレードはクラーケンの頭部に乗り、その頭部を切り開こうと、そららの魔法であけた穴に剣を突き刺した。

 刹那―


 グチュ・・


 誰もが油断した時だった。

 クラーケンの触手が一本動き、鈍い音をだし、ソレードを薙ぎ払い海へ吹き飛ばした。

 川を跳ねる小石のように、ソレードの身体は水面に激しく打ち付けられながら海へ飛びそのまま音もなく沈んでいく。

『ま、まだ生きてるぞぉぉ!!』

 海岸はパニックになった。

 死んだと思われたクラーケンの触手が動き出したこと。

 ソレードがクラーケンの触手により海へ薙ぎ払われ、その姿がなくなったこと。

 触手を動かしながら、なおも立ち上がろうとするクラーケン。その瞳の色は青から赤へと変わっていた。

 蒼月の破壊者の異名の通り、恐ろしい悪魔だわ。

「そら!こっちに戻って!!」

 私の声にそららも急いで戻ってくる。

「ど、どうなってるのよ!倒したと思ったのに。」

「ショック状態だっただけかも。」

「どのみちこれで、最悪の展開ね・・・。」

 クラーケンの触手が海岸で慌てふためく海賊を襲う。

 潰され、その場で血と肉の塊になる者。

 薙ぎ払われ、バラバラになる者。

 捕食される者。

 海岸は、まさに地獄へと変わり果てた。

「きら、ねぇね。このままじゃ、みんな殺される。」

「そんなこと言ったって、アリシアだって残りの魔力少ないんだからどうするのよ?」

「それは、そうだけど。ここにいたら危険すぎる!」

 確かに、アリシアの言う通りこの場にいたら危険だと思う。

 でも、ここから逃げてはこの先、一生私たちは十字架を背負うことになる。

 悩んで、考えて答えがまとまる前にそいつらは私たちの前に現れた。

「君たち!困っているようだね!!」

 声の主に視線を送ると、そこには見たことがある3人の姿があった。



「ネスタの町では散々な目に合ったけど、君たち、困ってるなら助けてあげてもいいよ?」

 癇に障る言い方で宮廷魔導士見習いのアルビドが私たち3人の前に現れる。

こないだと違って海パンではないわね。さすがに。

モロゾフは簡単な胸を防御する板金鎧プレートアーマー、腰には2本のロングソードがある。

アルビドは深い緑色のローブを羽織っているだけ。

トロイアに至っては普通の町の人、ってイメージね。

3人とも王宮に使えるって人には見えないけど・・。

「あんたたち、こんなところで何してんのよ!早く逃げなさい!」

「いや、俺ら、お姉さんたちが帰れっていうからアレクサンドリアに帰ってたんですけど・・・」

 宮廷薬剤師のトロイア。

 そう言えば、あの時そんなこと言ってたわね。

「そこの紫頭!今度こそ、騎士の名に懸けて勝負しろ!」

「あぁ!!もうこんな時にうざいわね!あれが見えないの!?あれが!!今はあんたたちの相手をしている場合じゃないのよ!!」

 宮廷騎士のモロゾフ。

 でた!アレクサンダー城の3バカ。また海岸で出会うとは・・・。

「あんなの、ただの大王イカかなにかだろ?弱っているようだし、すぐに倒せばいい」

 だ、大王イカって。あんた、仮にも相手はクラーケンなのに。

 まぁ、足も残り4本、陸に打ち上げられて、巨大ではあるものの最初よりは確実に戦闘力は落ちてるかもしれないけど!

「そんな簡単にいかないから困ってるんでしょうが!!」

「アリスたちも全力でやって無理だった。」

「うちらに勝てないんだから、あんたたちが勝てる相手じゃないよ!早く逃げなよ!」

 モロゾフとアルビドは顔を見合わせると気持ち悪い笑い方でこっちを見た。

「そしたら、あいつを倒したら、アレクサンドリアで俺と勝負するか?」

「はぁっ?」

 モロゾフはそららに詰め寄る

「そこのちっこいの!お前も、正々堂々俺と勝負しろ!」

「・・・」

 アルビドはアリシアを見下しながら立っている。

 2人はそららとアリシアを目の敵にしているようだった。

 トロイアは、少し離れたところで私と視線が合うと首を横に振っていた。こっちは、別にどうでもいいらしい。

「いいから逃げて!死んじゃったらどうしようもないのよ?」

「我等王宮に務めるもの。民間人を残して退散せよ!などと命令は受けていない!行くぞ!アルビド!!」

「サポートは任せろ!」

 モロゾフは瓦礫を飛び降りると、腰にある2本のロングソードで大王イカ・・・。もといクラーケンに挑む。

『う、うわぁぁぁあ!!』

 海賊にクラーケンの触手が迫ったとき、モロゾフの剣が閃いた。


 ボト・・・


 触手が砂浜に落ち、グニョグニョと動いている。

「アルビド!!」

「はいよ!炎魔弾フレイム・バースト!!」

 アルビドから放たれた炎がクラーケンの触手を燃やし尽くす。

「案外。簡単なものだな。・・・次、行くぞ!!」

天翔風バイドアーク!!」

 モロゾフの身体がうっすらと緑に輝き、その移動速度が増す。

 そららも使っていた、移動速度UPの魔法だ。

 モロゾフは高速移動でクラーケンの体を次々に切り刻んでいく。


『ギュアァァア!!』


 クラーケンの悲鳴が響き渡る。

「まずは、片目をいただこう!」

 モロゾフはクラーケンの頭に乗ると、赤く輝く右目を2本の剣でえぐるようにくり抜く。


『ガァァアア!!』


 グチャッっとアリシアくらいあるんじゃないか?って思われるその大きな眼球が海岸に堕ちて来る。 

 今までとは少し違う声を発するクラーケン。なくなった右目の奥にはピンク色の臓器のようなものも見える。

 クラーケンの声に驚き、モロゾフはいったんクラーケンから離れたところで止まると、移動速度UPの魔法が切れた。

「少し下がってろ!こっちから何発か入れてみる!」

 剣を上げて答えるモロゾフ。

 強い。この2人、浜辺で見た時とは別人みたい。すごい連携ができてるコンビだわ。

火炎矢フレアランス!」

 無数の炎の矢がクラーケンに撃ち込まれていく。

 数は多いが、威力がないためあまりダメージは受けていない様子だった。

「遊ぶな!アルビド!!手負いの獣は窮地に追い込まれたときに何をするかわからんぞ!!」

「ちっ、わかった!一緒に吹き飛ぶなよ!?」

 モロゾフの言葉、判断は適切だった。

 私たちもついさっき、自分たちの油断でこのような参事を招いてしまった。

 あの時、油断しないでさっさと倒していれば、多くの人が死なないで済んだのに・・・。

「こんばんわ、銀色のお嬢さん!」

 戦場を瓦礫の陰から見ている私たちにトロイアが後ろから声をかけてきた。

 アリシアはいきなり背後で声がしたので驚いていた。

「な、なんですか?」

「まだ、怒ってるかな。昨日はごめんなさい。でも、今は協力してあいつを倒さないと!」

「そんなの、わかってるけど・・・ちょっと!なにするんですか!」

 ちょっと強がりを言う彼女。黙ってアリシアの手を握るトロイア。

「僕の見たところ、お嬢さんはかなりの魔力をお持ちの様だ。それが、どういうわけか今はうまく使えないし、引き出すことが満足にできなくて苦労してる。どうですか?」

「・・・」

 私たち3人はトロイアの言葉を聞いて顔を見合わせていた。

 今手を握っただけで、アリシアの様子を見ただけでわかるなんて、どうして?

「なんで、わかるの?」

「一応、宮廷薬剤師だからね。患者さんの事をしっかり診療しないといけないんだよ」

 疑るアリシアの目は、こいつ、何考えてるの?って言葉に出していないのにわかるような表情だった。

「腕は、確かなようね。」

 それを横で見ていたそららが感心したように話しかけた。

「もちろん!国の太鼓判つき!」

 まぁ、宮廷薬剤師様でしょうから。国の太鼓判つきでしょうね。

「それで、アリシアは回復できるの?」

「いや、無理だね。」

「無理?」

「だいぶ魔力がなくなってる。完全に治すのは時間が必要だ。これだけの魔力の器。何日かかるか・・・。ツラかったでしょ。ここまで魔力がなくなると。」

「だ、大丈夫。別に、つらくない。」

 私たちを気遣っているのか、本心なのかわからないけど、アリシアにかなり負担をかけてしまった事は間違いない。

「ごめん、アリシア。うち、あのおっさんの手助けに行ってくる!ここで黙ってみてらんない!」

 そららがモロゾフの元へ駆け出した。

「あっ、こら!!」

 あのやんちゃ娘・・・。なんか微妙に責任でも感じてるのかしら。

「どうしようか、多分、アルビドの魔法では倒せないんじゃないかな?あのクラーケン。」

「あなた、あれの事知ってるの!?」

「宮廷薬剤師って、けっこう博識なんだよぉ?」

「どうすれば勝てるの!?」

 トロイアに問い迫る私。

「朝を待つ。そうすれば消えるよ」

「それじゃあダメなの!!約束したの!他に方法はないの!?」

「頭を、吹き飛ばすことかな。」

「頭?」

「そう、あの、眉間の間から上の部分をすべて吹き飛ばせば、奴は死ぬ。」

 ウネウネと動いているクラーケンの眉間を指差す彼は、少しあきらめたように続けた。

「でも、実際にはかなり厳しいと思う。」

「どうして?」

「クラーケンの体は粘液。つまりはクラーケンの分泌液で覆われているんだけど、あの分泌物には魔法の効果や物理攻撃の威力を弱める作用がある。剣の切れ味、火炎魔法が消えたりするのはあの分泌液が原因なんだ。物理防御も、魔法防御も高いあのクラーケン。その急所の頭部を狙うんだ。生半可な攻撃では効果がないと思うよ・・・。」

「アリスが、やる・・・。」

 立ち上がるアリシアには、おそらくクラーケンに効果のある魔法は撃てないだろう。

 それは私も、トロイアも容易に想像ができた。

「君が?その身体で?」

「アリスがやらないと、みんなの努力が無駄になる」

 必死なアリシアの姿をみて、トロイアは一つ条件を出してきた。

「もし、今度僕のお願いを聞いてくれるって約束するなら、助けてあげてもいいよ?」

「助ける?どうやって?」

魔力吸収ソウル・ヴァンブだよ。言わば、魔力を吸収する魔法。魔導士の必修科目。」

「そんなことができるの!?」

「・・・うん」

 他人から魔力を吸収するなんて、アリシアは一回も言わなかった。

「でも、この魔法には欠点があってね。相性があるんだ。」

「相性?」

「そう、火属性を好む魔導士は水属性を好む魔導士の魔力を吸収すると体の中で魔力同士がぶつかり合って死ぬかもしれない。ちょっとリスクのある魔法なんだ。」

「トロイアは、何属性なの?」

「俺は光、治癒魔法使ったりするからね。だから、君が闇魔法じゃない限り大丈夫。」

「魔力を取られる方はどうなの?」

「全部取られたらそのまま気絶。残してくれれば特にそんな大きな変わりはないよ」

「・・・でも、魔力がない魔導士は弱い。すぐに殺される。アリスのせいで、魔力を提供してくれた人は死ぬかもしれない。」

「じゃあ、そうならないように、すぐにあいつを倒してよ!」

 他人事のように笑うトロイア。

「さぁ、早く。アルビドの攻撃が始まる。」

 トロイアはその場に胡坐をかいて座ると、人差し指でチョイチョイっとアリシアを呼ぶ。

 最後まで困っていた様子のアリシアは両手をトロイアへ向けると、小さく囁く。

魔力吸収ソウル・ヴァンブ

 トロイアの身体が白く光り、アリシアの身体が赤く輝く。

(これが、属性の色?)

 トロイアの光の魔力がアリシアの方へと流れていく。

 光の魔力はゆっくりと色を赤色に変えながらアリシアの中に入っていく。

「だ、だいじょうぶなの?トロイア。」

 2人の光が消えると、トロイアは予想以上に平気な顔で

「うん、アリシアが遠慮したみたいだから」

 と笑いながら答えていた。

「もう、じゅうぶん。」

 アリシアは私の手をもって海に浮かぶ船の残骸の元へ歩いて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ