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異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
第2章 黄昏の悪魔
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8-8 魔剣覚醒

 陸に引き釣り上げられたクラーケンは、海中のような俊敏な動きがなくなっていた。

 アリシアの魔法によって炎上した船の残骸は今では大部分が燃え尽きている。

 海岸では、相変わらず男たち(と、女ひとり)がクラーケンに剣を振っている。

「せぇいやぁ!!」

 そららの掛け声で触手が1本地面に落ちる。

 クラーケンの身体からは『血液』があまり出なかった。

 ヌルっとした体液が分泌され、体や斬られた場所が粘膜で保護され、その粘膜に触れた刀身は確実に切れ味を落としていった。

 そららの持つ剣は例外だけど。

 あれから、どのくらいの時間がったんだろう。クラーケンの触手は4本が行動不能になっている。斬りおとされた部分も、数人の人間がさらに細かなものに切り刻み、万が一にも襲ってくることがないようにしている徹底ぶり。

「このまま、押し切れれば倒せるかも・・・。」

 アリシアは立ち上がると波打ち際、クラーケンから一番離れたところから攻撃を仕掛ける。

「みんな!魔法が来るから避けて!!」

 触手へ斬り込んでいる者がアリシアの姿を確認するとクラーケンから距離をとる。

炎龍咆ヴァルス・コア・ビジット!!」

 アリシアから放たれた巨大な青い炎の塊がクラーケンを襲う。

 夜だというのに、私たちの周囲は白昼の様に輝いている。


『ギュアァァア!!』


 クラーケンが巨大な触手を数本前に突き出しアリシアの、魔法を防ごうとしていたがそれは効果がなかった。

 クラーケンの触手は3本が溶けてその場から消えていた。残されたのは根元の方までドロドロに溶けている触手の残骸。海岸にも溶けた蝋のようにボタボタと落ちている。

『す、すっげぇ・・・』

 海賊たちの驚く声が聞こえる。

 確かに、クラーケンの触手を溶かしてしまうとは・・・。

 あのまま防御されなかったらそのまま溶かすことができたのではないだろうか?

「もう少しだ!野郎どもぉ!!」

 ソレードの号令で再び大勢の人間がクラーケンの身体を切り刻みに動く。

「なんか、うちら行けそうじゃない?」

「あぁ!このまま一気に押し切ろう!」

 そららとソレードは二人残されている一番大きな触手に挑む。

 が、ブヨブヨしているのと、粘液で攻撃をはじかれてしまい、なかなか斬ることができない。


 バチバチ・・・


 クラーケンの身体が時折光り輝く。

 斬られて、深く斬りつけられる時に一瞬光るような感じだった。

「ヤバい!!あれ、放電カウンターだ!!離れて!!みんな!」

 アリシアの声が海岸にいる全員に聞こえるときには、すでに遅かった。

 残された5本の触手が電極のように光り輝き、周囲へと雷を迸る。

『あああああああぁぁぁ!!』

『があぁぁぁぁ!!』

 砂浜がクラーケンの放った電撃で光り輝くと、男たちの悲鳴が上がる。

 私とアリシアはクラーケンから一番離れたところにいたおかげで放電に巻き込まれることはなかった。

 けど、これで形勢は逆転されてしまった。

 今のでソレードを含め多くの人間がまともに動けるような状態ではなかった。

『ギュオォ』

 クラーケンが何か言っているのだろうか。青い瞳で私たち人間を見下ろしている。

 その瞳を一番小柄なアリシアが睨み付ける。

「油断した。ヘルムの村でもっと勉強しておけばクラーケンの技も把握できてたのに・・・」

「今のは、一体何?」

「あれは、クラーケンの技の一つ。カウンター。」

「カウンター?」

「そう、攻撃されているうちに体内に電力をため込んで、一気に放出されるの。海の中だったら、今のでみんな死んでるよ。」

 ゾクッと背筋が冷たくなりその場で身震いをしてしまう。

「他にも、何か攻撃してくるの?」

 首を横に振る彼女。

「わからない。さっきのは、なんか本能的にそう思っただけで、他の攻撃なんて予想もできないよ。」

 ゆっくりと触手を使って起き上がるクラーケンの姿。

「アリシア、あと、どのくらい戦える?」

「わかんない。でも、そんなにもう持たないと思う。」

 こっちの戦力は絶望的。

 いよいよ、私の出番かもしれない。

「休んでて、すこしでも。」

 私はアリシアの前に立ちはだかる。

「きらら?どうしたの?」

「今度は、私の番だから。」

 神弓エルフィン握りしめ、巨大なクラーケンと対峙する。

 その姿、その巨大で生臭い体、青いギョロっとした瞳。どれをみても気色悪い。

 正直なところ、鳥肌が立って今すぐこいつから離れたい!って思ってる。

 そのくらい、逃げたくて逃げたくて仕方ないけど、それでも私は震える足でアリシアの前に立った。

「ど、どうするの?きら、それ使えるの?」

 私は軽く後ろを見ながら

「わかんない」

 舌を出してアリシアに笑いかけた。

 心の中はドキドキ。

 手と足は震えてブルブル。

 頭の中は何も考えられない。

 でも、今はやるしかない!

「神魔の世界より来たれし神の弓!」

 私は左手に持つ弓を天に掲げた。

「我が前に立ちふさがる悪魔を払う力となれ!

 我が名はきらら・ウィル・トルヴァニア。

 神の名の元に、我に闇を払う力を!」

 左手に掴む弓が少し、白い輝きを放っているような、淡く光っているような感じがする。

 それに、あったかい。

「神弓エルフィン!我が意思に従え!」

 私はゆっくりと弓を構えるように、

 フレイアが言っていた。

『そこに、矢があるように、普通に使えばいい』と。

 見えない弦。見えない弓。

 淡く光るエルフィンに指をかけ、矢を射るように構える。

「ひかりよ!!」

 私の叫びに、神弓エルフィンが答える。

 淡かった光は一瞬太陽のような輝きを発すると、徐々に輝きを失い、完全に元の真っ黒いごぼうのような棒切れに戻ってしまう。

 ・・・

「えっ?」

 私は輝きを失った弓に驚き、その場に立ち尽くしてしまう。

(そんな・・。うまくいきそうだったのに。私じゃやっぱり使えないの?)

 私は手にある弓を見ながら涙を流してしまう。

(守れない。このままじゃ―)

 目の前には傷を負ったクラーケンが、その大きな触手を振り上げて待ち構えていた。

炎龍咆ヴァルス・コア・ビジット!!」

 私の背後から放たれた青い炎はクラーケンが今にも振り下ろそうとしていた触手を溶かす。


『ギュオォ!!』


 触手が腐り落ちるように大地へ転がる。

 クラーケンは後ろへずり下がると、青い瞳でアリシアを睨み付ける。

(さっきの時より、炎が小さかった・・?)

 振り返ると、片膝をついてけっこうツラそうなアリシアの姿。

 魔力が少なくなっているのだろうか。いつものような余裕もない。

「だ、大丈夫?アリシア!」

 私は彼女に駆け寄ると、すぐに起き上がらせてその場を離れる。

「ごめんね、私がこの弓をちゃんと使えれば」

「もう少しだったのにね。アリスも、使えるんじゃないかって見てて思ったんだけど。」

 船の瓦礫に隠れ、アリシアを座らせる。

「だれか、どうにかしてよ・・・」

 私が小さく漏らした弱音に応えたのは、いつも通り、私の相方。そららだった。

「それじゃあ、今回はうちに任せてみる?」

 彼女のその笑みは、どことなく自信に満ち溢れていた。



 山のように積み重なる船の瓦礫の上から私とアリシアを見下ろしていたのはそららだった。

「そら!無事だったの!?」

「うん、うちは平気!」

 瓦礫から降りて来るとアリシアが珍しくグッタリしているの気が付く。

「アリシア、大丈夫なの?だいぶ疲れちゃってるけど。」

「アリスは平気、すこし、魔力を使いすぎただけ・・・」

 いつもよりも弱気な彼女を心配そうに見るそらら。

「うちに任せるって、そらになにかいいアイデアがあるの?」

「ふふぅん!まぁね、そこで見ててよ!うちの活躍!」

 そらは私の問いかけに自信満々でクラーケンの元へ一人歩いて行った。

「ねぇね、どうしたんだろ。1人じゃ、勝てっこないのに・・・」

 アリシアが辛そうな体を起こして瓦礫にもたれかかりながらそららとクラーケンの様子を伺う。

(ローラの姿に似てるわね・・・あんなふうにしてると)

 そららは結んであった髪がほどけてしまい、ツインテールだったのがただのストレートになっていた。

 あの剣の持ち主、赤髪の女騎士もあんな感じだったわね。

「魔剣よ!今こそ、その力を開放せよ!」

 そららが剣を大地に突き刺すと剣の柄が緑色に光り出した。

 クラーケンは触手の1本を捕縛しようとしているのか、ゆっくりとそららへ伸ばす。

 その迫る触手に動じない彼女。


 バチッ!!


 怯んだのはクラーケンの方だった。静電気、と言えばわかりやすいか、触った瞬間にクラーケンは触手に何かしらのダメージを受け一気に引っ込めた。

「魔法障壁・・・」

 そららの周りに纏っている光がクラーケンの触手を弾き飛ばしている。

「そら、剣の力が引き出せたの!?」

「すごい・・・。ねぇねに魔力が溢れている・・・」

 そららの身体が淡く、緑色に輝きだす。

 そららを中心に風が吹き始める。

 天空に舞い上がる風と同時に、空気が、大気がそららに吸い寄せられていくようだった。

「天を翔る雷よ。風の精霊シルフに命じる。」

 そららがゆっくりと前に出す左手には雷が纏っている。

 さっきのクラーケンのようにバチバチと音を出しスパークしているようだった。

「あれは、風の上位魔法・・・。」

「そらが、そんなの使えるの!?」

「無理じゃないかな。ねぇね、契約してれば別だけど、普段の魔力だと使えない。でも・・・」

 私たちの視線はそららの前で緑に輝く魔剣を見ていた。あれがそららの魔法発動に関係しているんだと思う。

「我が力、我が魔力を糧に汝の力を開放せよ。天より現れし神の怒り。闇を払う力となれ!」

 クラーケンが新しく攻撃をしてくるよりも早く、そららの魔法が完成した。

 そららの周りに、雷を纏った空気の鎗が見える。

 その槍は、長く、鋭い鋭利な先端。

 雷を纏い、バチバチと火花が散っている。

 竜巻の様に渦を巻いている空気の鎗には、硬い雹が含まれている。

 空気の鎗に突き刺され、雹で物理的ダメージを与えつつ、雷が貫く対象を身体の中から攻撃する。

 補助魔法がメインの風属性では高位の魔法。

 全部で5本の空気の鎗がゆっくりと姿を現す。

「これでくたばれ!!気翔滅空天グラン・スレイ・ヴォルグ

 そららの掛け声で5本の鎗はクラーケンへと迫り、その体を貫いた。


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