表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
第2章 黄昏の悪魔
57/126

8-7 開戦

 私とアリシアはソレードさんと共に甲板に残った。

 そららは後方待機、いざというときの保険でさっきの40代くらいの男性も一緒にいる。

 今回の作戦はいたってシンプル。

 アリシアは、とりあえず足止めの攻撃。

 そららは、風魔法で船をクラーケンにぶつけるための加速要員。

 乗組員のみんなは、加速したら一気に船から降りること・・・。

「頼む、3人とも。」

 ソレードの言葉で私たちの攻撃が始まった。

「お願いアリシア!魔力節約型で!!」

「そんな魔法があったら苦労しないよねぇ」

 アリシアは笑いながら指先で丸く円を連続でいくつも描いていく。

火炎鎗フレイムランス!!」

 燃え盛る炎の鎗はクラーケンに向かって突っ込んでいく。

「そらぁ!!」

 私は船尾で待つそららに合図を送る。

 彼女は手を振り返し、合図に応える。

「そんじゃま、いきますか!!」

 両手を天に掲げ、瞑想する彼女を淡い緑の光がゆっくりと足元から包む。少しは魔力の消費が抑えられるらしい。


 ドンドンッドンッドン!!・・・


 アリシアの放った炎の鎗がクラーケンに当たるも、あまりダメージはなさそうだった。

「ま、こんなもんか。やっぱ」

 わかりきっていたかのように簡単に諦めて鼻で笑う彼女。

 さすが、悪魔狩りは2回目なだけあって経験者は違うわ。余裕が感じられちゃう。

「吹き荒れろ!!爆烈風ボム・フレア!!」

 そららの声が聞こえると、風が後ろから吹き込んで来る。シルフィーアの帆が、これでもかっ!!ってくらいに張り、老朽化した船体が悲鳴を上げる。

「破れたり、壊れていなければもっと早いのだが。」

 風に煽られながら手すりに掴まり風になびく帆を見つめるソレード。そう、すでに一回同じ方法を使っているせいで船体はもうボロボロ。推進力がどの程度かわからなかったけど、これはまぁ、予想よりもおそい。

「アリシア!もっかい!!」

「はいはい・・・」

 アリシアが両手を前に突き出すと、両手から炎の球が生まれる。

炎魔弾フレイム・バースト!!」

 アリシアの両手からオレンジ色に輝く、燃える炎の球が放たれると、次々にクラーケンを襲う。


『ギュアァァア!!』


 クラーケンを襲った炎の球は爆発し、眩い閃光、黒い煙幕を出し爆発する。

 クラーケンはいきなりの閃光、黒煙に驚いたのか触手をバタバタとしながらその場で暴れている。

 海に生きるものに、強い光や煙は有効なのだろうか・・・。

「もう十分だ、行くぞ!!」

 クラーケンに迫るシルフィーアの甲板で、ソレードは私たちの両手を掴む。後方の男性に顔を向けると、男性もそららを担ぐように抱き上げ、そのまま・・・走る。

「ちょっと、待ってソレードさん!そっち階段じゃないよ!!」

 彼は私たちにニコッと笑いかける。

「は・せ・・この・・やめ・・きゃ・ぁぁ・・」

 そららの悲鳴が聞こえた。

 と思って視線を送るも、そこには誰もいない。

(誰もいない?)

 まさか。

「ねぇ?」

 アリシアに声をかけると、顔面蒼白で散歩を嫌がる犬の様に突っ張りながら、ソレードから一心不乱に逃げようとしているアリシア。

「ちょっと、待って!なにしようと―」

 私が聞いている最中に、私たち3人はソレードに手を引かれたまま甲板から飛び降りることになった。

『ひいぃっ!』 

 声なき悲鳴を上げながら、私とアリシアは真夜中の海へと飛び込んだ。




 海から見たその光景は、まるで怪獣映画の中にいるようだった。

 巨大なクラーケンに船が勢い良くぶつかっていく。

 クラーケンにしてもその行動、スピードは計算外の様で、抵抗される間もなく海賊船シルフィーアはクラーケンに衝突し、その体を大破させた。

 壊れてもなお、風が吹き荒れる限りその力を帆に受けシルフィーアは進もうとする。

 その衝撃と力に、クラーケンは少しづつ押され始めていた。


 バキバキバキ・・・


 けたたましい音と共にその体を崩壊させていくシルフィーア。

 でも、その役目は十分に果たした。海岸で白い大きな巨体は地上に横たわる。

『やったぞぉぉ!!』

 湧きあがる歓声の中、納得できない私たち3人。

「ちょっと、いきなり何するんですか!?」

「いや、貨物室は間に合わないかと思って」

「それでも、いきなり飛び降りるなんて!こっちは死にそうなんですけど!!」

「きら、こいつから殺した方がいいと思う・・・。」

「まてまて!目が怖いぞアリシア!あの場合、今から飛び降ります!なんて言っても2人とも納得しないだろ!だから、仕方なく・・・。」

「どこの世界にいきなり飛び降りるなんて言われて納得できる人がいるのよ!」

 確かにあの場合、間に合わなかったかもしれないけど、それでもいきなり手を掴んで飛び降りるのはひどい。

(あ、そららがいない・・・)

 辺りを見回しているとさっきのおっちゃんを剣で殴っている姿が見える。

 よかった、とりあえず無事みたい。

 今のところ両方とも。

「焼いちゃおっか・・・。こいつ」

 片手で私に捕まりながら、もう片方の手の上に燃える炎を浮かばせてお怒りのアリシア。

「まてまて!わかった!俺が悪かった!後でその話は聞くから、今はあいつをどうにかしてくれ!!」

 船の瓦礫にもがくクラーケンを指差すソレード。

 確かに、今は遊んでいる場合じゃないけど、本当に信じられない事をする人たちだわ。

 アリシアが片手を前に出す。

炎風咆ヴァルス・ウォム!」

 炎がシルフィーアの残骸めがけて進む。私たちも、いつまでもこんなところに浮いている訳にはいかないので、とりあえず陸へ向かう。


『ギュアァァア!!』


 アリシアの放った炎は瓦礫となったシルフィーアに燃え移り、クラーケンごと勢いよく燃えている。

 今度はさっきとは違い燃えるものもあるせいかなかなか炎が消えないため、火の上でのたうち回っているようにも見える。

 勢いが納まらないその炎はかなり高くまで昇っていた。おそらく、ネスタやエルサーナからでも見えるくらいに燃えているんではないだろうか。

「今度こそ、イカ焼きになったわね。」

「ふんっ!」

 アリシアと一緒に泳ぎながら話していたけど、彼女はまだご立腹の様。

 少し後ろの方ではそららもボコボコに殴った男性の首に紐を巻いて連れてきている。

(あれは、拷問か何かかしら・・・)

 妹ながら、あの子は怒らせると恐いわね。



 足がつく浅いところまで来ると、燃え上がる炎の熱、暴れるクラーケンの長い触手でなかなか近づけないままでいた。

「やっと出番ね。陸にまで来ればうちも役に立つわ!」

 魔剣を抜刀し、左手に構える彼女。

 ソレードたちも、剣を構えてそららに続く。

 相変わらず炎に包まれてのたうち回るクラーケンの姿。

 そららたちも近づくに近づけない。

「お姉ちゃん!この後、どうするの!?」

 どうするったって・・・。

 私が聞きたいくらいよ。こんなイカ退治したことなんかないのに。

 バリアントの時はエルドロールが土龍でガブッっと頭を噛み千切ったみたいだけど、今回の敵はどうやって倒したらいいのかしら。

「ごめん、思いつかない!!」

「えぇっ!?」

 驚いたそららたちの視線は私に集まる。

 そんなこといわれても、いつでも考えがあるわけではない。

「でも、海に入れないようにして、とりあえずみんなの判断で攻撃して!いい考えが出たら言うわ!」

「了解!」

 まっさきに斬り込んだのはソレードだった。ウネウネと動き回る触手に一閃!


 ボトッ・・・


 触手の鈍い音を立ててブヨブヨしているクラーケンの触手の先端が斬りおとされた。

 切り離されてからも触手はしばらくの間グニャグニャと動いていたが、ソレードの剣に突き刺され縮むような動きを見せて動かなくなった。

「効いてる。攻撃が効いてるぞぉ!!」

 ソレードの一撃を境に、全員が炎上するクラーケンへと突撃していく。

 そららも魔剣を片手に炎の合間を縫いながら進む。

 私とアリシアはその様子を静かに見守っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ