5-3 早く帰って休みたい。
今日は大変だった。
個人的に私は公務の方がすごく楽だった。
なんなの?この2人。
ファミリアでギルド登録した後に買い物買い物、また買い物。
その一部始終は、
まず、第1の買い物はそらら。彼女曰く、
海に行ったのに何もしないのは嫌だから水着が欲しい!
その次、第2の買い物はアリシア。彼女曰く、
せっかく行くのに、ご飯がないとイヤ!
そりゃあもう、ひどいものだったわ。
最初は第1の買い物。水着探しから始まった。
いや、買い物はすきなのよ?楽しいし、嫌じゃないんだけど、一緒に行く相手によってこんなにも疲れる行為なんだと改めて思ったわ。
その水着選びが大変で・・・。リボンが欲しい、とか。この色がイヤ、とか。柄が気に入らない。とか。
私も一つ進めてみたんだけど返事すらもらえなかったわ。
まぁ、進めてみたのが白黒の牛柄なんだけどね・・・。こないだ牛になった。と言ってたからいいかと思ったけど、だめみたい。
アリシアも自分で探してたけど、それほど子供用がなかったからけっこう機嫌が悪かったわね。
『元の世界なら、アリスの方がお姉ちゃんより胸大きいのに。』
『なんで、アリスの身体はこんなに小さい。』
『ねぇねくらいは胸も大きかったのに・・・』
『いっぱい食べてるのに』
おぃ!!最後のは違う!絶対に違う!あの子は、食べたいから食べてただけで、実際には成長とか気にしてなかったし!!
ってそこよりも、私よりも胸が大きいとは何事よ!しれっと人を見下すんじゃないわよ!
そんなこんなでお店を出るころにはもう夕方。
はぁ、今日、何やってるんだろ。
なんで一日こんな歩いて買い物ばっかり。
『アリスはバーベキューしたい!!』
と帰りがけに言い始めてまた買い物。これが第2の買い物。さっき言ってよ~。また買い物・・・。
お出かけ用の小さな馬車にはもう荷物がいっぱい。
一度馬車に荷物を降ろすと、またアリシアの求める食材も買いに行く。
(ん!?・・・今何か動いたような・・・)
私たちが買い込んだ荷物が一瞬動いたような気がしたけど、多分気のせいよね。馬車で揺れたんだと思う。
私は気にしないでアリシアの求める食材探しに行った。
『あれと、これと、あっちのも欲しい!』
・・・
(あんた、適量って言葉知ってる?)
ぶどう1篭。大体6房くらい入っている。
移動中に食べるらしい。
トウモロコシ4本。1人1本らしい。計算が合わないけど。
お肉、大量。そーね。大体2キロくらい?
2キロよ?2キロ!!元の世界で例えれば、某有名焼肉店が一人前で90グラムって書いてあったから約23人分。
あぁ、23人分もあるんだ。浜辺で何するつもりかしら。
『1人前じゃ少ないよねー。』なんて会話も確かにあったけど、一人8人分くらい食べる計算よ?他にもあるのに。この子、どんだけ行くのかしら?
ちなみに、野菜はお屋敷の菜園から。魚介類は、漁師の街って聞いたから現地調達!もしくは釣る!って言ってた。そこまで行くとついていけない。
なんでも、一度だけフレイアを浮き代わりにして釣りをしたことがあるらしい。
あのピンクの羊は魚から見たらおいしそうなのか、たくさんの魚が釣れるし、浮きのフレイアが釣り上げるタイミングも教えてくれるからよく釣れたそう。そこまで変な使われ方すると、少し可哀想な気がする。
あ、なんかそららが甘い匂いのフルーツも買ってたわね。
確かに、楽しみなのはわかるけど、向こうでも美味しそうなのがあったらどうするつもりかしら?
ちなみに、さっきファミリアで見た金貨10枚の報酬。
価値観で見るなら、今日買い物で使ったのが金貨4枚程度。
この調子なら向こうでも金貨5枚程度は使いそうね。
どうにか探し人見つけないと、この無駄な出費が・・・。
私は軽くなる財布が悲しかった。
そして、一番最後にこいつ。
フラン曰く。
面倒ごとまわしといて、何してるんだい?ずるくない?
らしい。
最後の大荷物を持って馬車に戻り、荷物を入れている最中だった。
まず、馬車は王都アレクサンドリアの中央に位置する第1公園の付近に集中している。
ここが王都の中心。従って、交通の良さを考えてここになっているようだった。実際に買い物して戻ってを繰り返していて、とても楽だった。
そして馬車。私たち3人はこれでも一応ヴィルサーナ領の領主。所持している馬車もそれなりに立派。
コーチにもけっこう装飾が施されているし、デザインなどについても、そんな商人が乗れるようなものではない。なので、けっこうすぐにわかる。
そんな馬車だからだろう。いらないお客さんがいた。
さっき揺れた気がした荷物。また増えたので少しきれいにしないと入れない。と言うことで中を整理中のこと。崩れた荷物の中から足が見えた。
(あ、あし!?)
私は驚いて馬車から飛び出す。
「あああ、あ、足があるんだけど・・・」
そららの後ろに隠れ、馬車にある足の事を伝えてとりあえず、アリシアと2人で見てきてもらった。
ゆっくりと近づく2人。馬車の中からは買い物した荷物がボロボロとたまに落ちている。
そぉ~っと中を覗くと、中にはフランがいた。
買い物した荷物の中に隠れて、驚かせようとしたつもりが荷物がどんどん増えていき、狭いコーチの中では身動きが取れなくなったらしい。
・・・バカなことをしているから。
とりあえず馬車から降りてもらった。
荷物を入れ、すでにパンパン!もうこれ以上乗れません。さぁ、今日は帰りましょう!って時にこの余計なのが現れた。最後の最後に・・・。また何か面倒なことや小言かしら。
疲れている日にあまり相手をしたくなかった。それが私の本音だった。
そして、現在に至る。
「なに?何か用?」
「なんだよきらら。つれない返事だなぁ。王宮騎士が会いに来るなんて、普通もっと喜ぶんだけど」
思わず、心の声がそのまま出てしまった。あぁ。帰りたい。ゴロゴロしたい。1人になりたい・・・。
「わぁ、王宮騎士フランさまだ!お会いできて感激ですぅ。でも、時間がないのでここで失礼しまっす」
私は早く帰りたい気持ちを込めて精一杯の愛嬌の笑顔と感謝を込めた。
「なんだそのさっさと帰りたいってオーラは。そんなに急がなくてもいいじゃないか」
「もう疲れたのよ!私も限界なの!一日この2人といたらもう無理!見たでしょ?この荷物。どれだけこの王都の中を歩いたと思ってるの?早く帰りたいのよ~・・・。」
「それ、僕意外に言ったら懲罰モノだぞ」
「いいのよ、フランは」
馬車の準備をしていたそららの発言に、アリシアもうんうん。と頷いている。
「フランは、じぃじのおかげで死ななかった。」
「そうそう、私がアンデットに襲われる王宮騎士様を助けたこともあったわね」
「いや、それは向こうの世界の事で・・・」
「うち、まだ貸し返してもらってないしね。」
フランは馬車の片隅にあった紙を取り出す。
「これのこと?」
手に持っているのは玄関に貼ってきたメモ。
【本日お休み!ご用は王宮騎士フランまで!!】
それは今日どっかの誰かが書いた紙そのものだった。
「なんで、フランが持ってるの?」
ため息を吐き、丸めたメモを私に渡す。
「わかってるよ。書いたのはきっとあそこの2人だろうけど、これは勘弁してくれ」
アリシアは首をブンブンと横に振っている。
そららは馬車の陰に隠れている。
「今日、アリシアに書簡を届けさせたら、届けた人間が僕のところにこれを持ってきたんだ。」
「それは災難だったわね」
「そんな一言で済ますなよ!僕意外の人間がこれを見たら驚くから、今後はやめるように!」
「だって?」
馬車の向こうで手をパタパタふる犯人。
「アリスに、何の用?」
アリシアはフランに近づいてきた。
書簡・・・。なにか手紙かな?
「あぁ、・・・はい。これを君に」
フランは馬車に置いてあった筒をアリシアに渡す。
「宮廷魔導士を決める試験が始まるから、その案内をね。君の推薦人は僕だ。幼いながらに膨大な魔力、そしてその才能は宮廷魔導士の素質がある。と僕は思っている。」
「幼いって・・・どこが?」
さっきの水着のところでのフラッシュバックか?その視線には静かな殺気が感じられる。
「どこがって・・・。全体的に君はまだ子供だ。宮廷魔導士になれたら歴代最年少の記録だと思うよ」
「歴代・・・最年少」
アリシアはニヤッと笑いながら気分を良くしたのか馬車の片づけをして自分が乗る場所を作ると
「アリス、頑張る」
とだけ言い残して重なる荷物にもたれかかっていた。
(どうしたんだい?)
小声でフランが聞いてくる。
そんな、水着のサイズや胸の事で。なんて言えるわけない。だから
(照れてるんじゃない?)
と誤魔化した。
(あのくらいの年齢の子は難しいな)
と素直に納得をしていた。まぁ、いいか。
「でも、この荷物どうするんだい?一般人なら呼び止めて調査が入るぞ・・・。」
馬車の荷物を見ながら改めて驚く。私も驚いてるんだから仕方ない。
驚いたことに荷物の半分以上はあの2人が買ったもの。
知らない人が見たら、夜逃げするようにも見えるのかな。
「そうね、自分で言うのも悪いとは思うけど、異常だと思う。あの2人のストレスも限界だったんだと思う」
「ストレス?」
「公務が、なかなかね。終わらなかったり、上手く進まなかったり。頑張ってるけど女3人だと厳しいときもあるのよ。」
「そうか。会わない間に苦労してたんだな。」
「まぁね。それで、明日からお休みして南に行ってみようかと思って。」
「南に?」
「そう。南に海があるから、すこし息抜きにね。」
「南かぁ。最近行ってないな。あまり無茶はするなよ?」
「大丈夫でしょ。我が家には無敵の大砲娘と自称聖騎士のそららがいるから。さっきだって、街で絡んできた傭兵を撃退してたし。」
「あぁ、やっぱりあれはお前たちか!」
フランは笑いながら答えた。
やっぱり??
「知ってたの?昼間の事」
「あぁ、目つきの悪いガキと、やたら筋肉質な女に襲われた。っていってたなぁ」
目つきが悪い、筋肉質。二人が聞いたらまた怒りそうなことを。
「それで?どうしたの?」
「現場に居合わせた人たちから話を聞いたら圧倒的にボッツの方が悪いってことで、今は他に悪さしてないかわかるまでお城の地下にある罪人の詰め所に放り込んである。」
「よく私たちってわかったわね」
「あんな大男を倒せる女で、子供っていったらこのアレクサンドリアの中にも外にもきららたちしかいないでしょ。」
「あぁ。そう」
喜んでいいわけはない。女の子が強いって・・・。
「お姉ちゃん、そろそろでるよ?遅くなると危ないから」
「あぁ、ごめんごめん。ついつい長話をしちゃったね」
「ほんとよ!早く帰り語ったのに。・・・最近は忙しいの?あまり来なくなったわね。屋敷に」
「ん?あぁ・・・。この『新しい世界』の事を知らないからいろいろね。なぁに。今度また屋敷にはいくよ。それよりも、気を付けていくんだよ?アレクサンドリアから出てしまえば、僕もすぐに助けてあげることができないからね。」
私はアリシアの寝ているコーチの扉を閉めて、そららの隣に座り出発の合図をだす。
「んんー。大丈夫じゃない?また悪魔やら変なのが出てこなければ、アリシアもそららもいるし。私だって一応、弓使えるし。」
「君たちの親に約束したからね。守るって。」
馬車がゆっくりと動き出す。
「だいじょうぶ!ついてこられたらまたエッチな目で見られるからそっちの方が・・・」
「っまだ覚えてるのか!?」
「ふふっ、安心してて。お土産持ってくるから!おやすみー!!」
フランをからかう私は、走り出す馬車から身を乗り出し、フランに手を振る。
フランはゆっくりと暗闇に見えなくなるまで、手を振ってくれていた。




