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異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
第2章 黄昏の悪魔
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5-1 傭兵?そんなの今の私たちにとって敵じゃないのよ

「ふんふん、ふっふふ~ん!」

 ご機嫌の領主様、とその一行は王都の街並みを歩いていた。

 まぁ、3人メイド服なので誰が領主で、誰がメイドなんてわからないと思うけど。

 あの一件以来、私たちは常に武器を持つことにしていた。

 そららはフレイアが言うところの魔剣。

 魔剣と会話する。たまにあの子は『ねぇ、玉ねぎ切っといてー』なんて話しかけているけど、剣はうんともすんとも言わない。当たり前に思うけど。多分、話すのを勘違いしていると思う。こないだなんて、壁に立てかけてあった剣を食事を運ぶときにワゴンでわざとぶつけて倒し、『あ、そこにいたの』。なんて事をしていた。もし、意識があれば即、家出する扱いに見える。

 私は、神の弓、エルフィンを持ち歩くことは持ち歩いている。けど、実際にはバックの中に入れていて、はみ出した太めのごぼうのようにも見える。

 これは、使い方がいまいち理解できないのと、普通の弓でも対処できるのであまり触っていない。ただ、屋敷に置いていくのは気持ちが進まないので持ち歩きはしている。

 そうそう、あれから練習して今ではだいぶ的に当たるようになったのよ!そららが言うには、昔の方がうまかったらしいけど。

 アリシアは・・・。我が家の誇る大砲娘だから極力、魔法は弱く、少なく、地味なのを使うように言っている。この子は虫が嫌いだから、暖炉の掃除していて蜘蛛が巣を張っていたのを見ただけで大絶叫!いきなり叫び声が聞こえたから驚いて見に行ったら暖炉が炉のように燃え上がっていて、裏庭の菜園で野菜の手入れをしていたそららが言うには、煙突の先から炎がローソクみたいに噴き出していたって話。

 さすがに火事にもなるし、いきなりそんなことされたら本当に破壊神と言われかねないから魔法は控えるように教え込んだ。力があるのも大変らしい。

 そんな私たちがここにいるのには理由がある。実はこの世界にも海があった。そららが言うには南のエルサーナの先を進むとあるという話。

 案外、そばにあるのね。そこの海で上がった魚を王都の市場でも売っているそうで、案外行ける範囲にあるようだ。

 まずは、この世界の地理を知ることも大切かもしれない。

「ねぇね、あの屋台、なんかいい匂いがする!!いこ!」

 ちっちゃい銀髪の少女、アリシアはさっきから気になるモノを見てはあれもこれもとつまみ食いの限りを尽くしている。

 ぶどう、リンゴ、焼き魚、パン・・・あの子はいつまで食べるんだろう。

 そららは案外小食なのでアリシアのを少しづつつ分けてもらっているようだった。

 アリシアの主張は、後悔して死なないために。らしい。

 あの子の後悔は食べること以外にないのだろうか・・・。

 私たちは少しの間、公務を休むことにした。ここ1ヵ月毎日バタバタと働いていたので、少しお休み。ってことで2人のご要望の海へ行ってみようかと。

 食料も少なかったし、いつも御用聞きに来てくださる方もお休み。たまには自分たちで買い物がしたい!とみんなの要望です。

 でも、

【本日お休み!ご用は王宮騎士フランまで!!】

 なんて勝手に書いて玄関ドアに張り付けてたけど、大丈夫なのかな・・・。

 そらら曰く、貸しはまだまだ残ってる!。らしい。

 このそらもアリシアも、2人よく似てるわ。

「なにしてるの?」

 気が付くと街の掲示板の前に2人が並んでいる。

「お姉ちゃん!ここに冒険者の酒場オープン!って書いてあるよ?こんなの無かったのに・・・。いつできたんだろう」

 そこには、紙が貼ってあった。残念ながら、私は文字が読めない。記憶が混ざっているせいで外国語を見ている感じ。

 アリシアはフレイアのおかげで読めるらしいけど、私はかなり不便している。こっそりアリシアに教えてもらっているけど、これがなかなか覚えられない。

「冒険者の酒場。どんなのだろう・・・。うち、冒険者っぽい?」

 腰の剣を見せびらかしてくるそら。うん、ぽいぽい。

「場所はどこなの?」

「向こう、このまま真っすぐ。東の区画。」

 東か。そらを適当にあしらうと今日の予定を考えてみる。明日海へ向かうならやりたいことはやっておきたいけど。まぁ、そこまで遠くないし、私も冒険者の酒場には興味があるし、行ってみようかな。

「ねぇ!!せっかくだし行ってみよっか!って、あれ?」

 掲示板の一緒に見ていた2人は振り返るといなくなっていた。

「おいてくよー!」

 遠くで手をつないであるく2人。

 知ってますか?3人って、高い確率で1人あぶれますよね。

 目の前に揺れる紫頭と、銀色頭にイラッとしながらも後をついていきました。




(ここって、エドと最初にあった日に通った酒場よね?)

 そこは、この世界に来た初日に見たことのある建物だった。

 雰囲気は、あまり変わっていないような。

 そららとアリシアは酒場が初めてなのでここまで来て勇気が湧かないようだった。

 中の様子をこっそりと覗いてみる。

 テーブルと、カウンター席。

 壁に紙がたくさん貼られている。紙の前に数人の冒険者風の男が立っている。

 普通の人、って言ったらわかりにくいだろうけど、農民や商人ではなく、旅してます!戦してます!って見た目の人が多かった。

「男の人、ばっかりね」

「うち、あまり汗臭いのはちょっと・・・」

 若い、私たちくらいの年齢層はいなそうだ。そもそも女性がこの中にはいない。

 まぁ、普通の女の子がこんなところには来ないでしょうね。

「いたっ!!」

「邪魔だ!女やガキがうろついてんじゃねーよ」

 背中に大きな大剣を背負うガタイのいい中年のおっさんがアリシアにぶつかり、彼女は軽く飛ぶように転んでしまう。

「へっ!小娘が」

「アリシア、大丈夫?」

「おっさん!!ちょっとまちなさいよ!」

 そららがイラッとした顔でおっさんを呼び止める。

 アリシアは尻餅をついただけで、どこもケガはしていなかった。

「そら、やめなさいよ」

「なんだぁ?俺とやり合うってのか?」

「ぶつかってきたのはそっちでしょ?謝んなさいよ!」

「はははっ!俺に謝れってか?」

 おっさんはそららをバカにしたように笑う。

 店内にいた客たちも騒ぎを聞きつけ1人、また1人と集まってくる。酒場の前の通行客も足を止め2人の言い争いに耳をかたむけている。

「ねぇね、もういい」

 アリシアが服に付いた土を叩きながら立ち上がる。

「この街、今度こそ消し炭にしてやる・・・」

「ちょいまち!!」

 私はアリシアを後ろから抱え込む!

「だめ、それ絶対にダメ!」

「やっちゃえアリシア!ここだけでもぶっ壊しちゃえ!」

「そらっ!あんたもなに言ってんのよ!とめなさいよ!」

 ここだけって、間違いなく東の市場は壊滅するじゃないのよ。

「うちもムカつくし、このおっさん」

「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!マジでぶっ殺すぞガキィ!!」

 背中の大剣を無造作に抜いて見せる。

「ら、乱闘だぁ!」

「傭兵のボッツが女の子と揉めてるぞ!」

 周りの野次馬が叫び出す。このおっさん、ボッツと言うのか。傭兵というのは、気が短いんだなぁ。

「炎の精霊フレイア。我が望みを聞き届けよ。」

 アリシアの身体が紅く輝きだす。

「こんなとこで『紅蓮爆砕陣フレアボムズ』なんて、ホントにだめだってば~~!!そらも手を貸してよ!」

 ニヤッと笑うだけで全く協力する気はなさそうだ。

「な、なんだ!?こいつ!」

 ボッツがアリシアの異変に驚き、一瞬たじろいた。

 紅い光がお昼だって言うのに、煌々と輝きその光の強さを示していた。

「魔導士か!」

 ボッツは大きな大剣を振りかざし、私とアリシアに襲い掛かる。


 ギィン!!


「もうちょい待ってなよ、おっさん!!」

 不敵に笑うそららが男の振り下ろす大剣を受け止めて、薙ぎ払う。

 ボッツは少女がみせた攻撃の受け止め、そして、そのまま繰り出される力強い薙ぎ払いに体制を崩しそのままヨタヨタと片膝をついてしまう。

 その間も、アリシアの呪文詠唱は進んでいく。

「紅蓮の炎を現世へ。」

 多分。フレイアがいたら・・・止めてくれると信じたい。

 アリシアの掲げる手の先に、見慣れた赤く、オレンジに光る球の火種ができ始めている。

 終わった。

 これで明日から私たちはお尋ね者・・・。

「我が望みは世界の滅び。我が望みは―」

「あんたたち!うちの店の前でなにやってんのよ!!」

 酒場の中から現れたのは赤い髪の女の子だった。6歳くらい?活発そうな赤い髪、赤い瞳の・・・

『ロ、ローラなの!?』

 死んでしまったはずのローラにそっくりな女の子。

 私たち3人の視線は酒場から現れた小さな少女の釘付けになった。




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