4-8 異世界からの来訪者
「悪魔・・・召喚?・・・反逆者。」
私は先日聞いた話を思い出した。
「エルドロール伯爵と調べたんだ。この騒ぎの原因はすべてローラだ。」
「うそよ」
「嘘じゃない!エルサーナのゴブリンは違うが、それ以外はすべて彼女が企てたこと。」
「・・・」
「決定的だったのはさっきのローラの態度。城にも、いくつも魔法石が置かれていた。エルドロールとフレイアの協力ですべて撤去したが、彼女は知らなかったんだろう。」
確かに、フレイアは昨日忙しいとは言っていたけど・・・。
それだけで、ローラが犯人とは限らない。
「最後に、何を思ったかわからないけど、城の爆発から君たち3人を守りたかったのだろう。・・・。これは、ローラが黒だった場合はエルドロール伯爵と決めていたことなんだ。」
・・・【自分が望んだから】
確かにローラはそう言った。
彼女は、最後に私たちを疑われる可能性があることを知りながら、かばってくれた。
「彼女が好きで、自分から」
涙の跡を拭い
「街を破壊するのも。」
私はローラを地面に寝かす。
「大勢が死んだのも。ローラが死んだのも。・・・」
立ち上がりフランをグッと睨み付ける。
「あんたは全部!!ローラが望んでいたことって言いたいわけ!!?」
パァン!!
「きら・・・」
顔面ぐしゃぐしゃのそららがこっちを見ている。
私は全力でフランの頬を叩いた。
フランの頬は一気に赤く腫れ、口からうっすらと血が滲む・・・。
「あぁ。その通りだ。」
フランは血を拭うと、私の瞳をまっすぐに見つめる。
私も、睨み返す。
「ねぇ、フラン。エル様と、何を話したの?」
鼻水をすすりながら、そららが自分のエプロン脱ぎをローラにかける。
「ヘルムの村が襲われた時から、気にはしていた。傭兵団の件。知っているだろ?」
うん。と頷くそらら。
「魔法石は輝石を加工して作られる。今回の爆発騒ぎは大量の輝石が必要なんだ。そんな量。ヘルム以外で入手することは物理的に不可能なんだ。」
・・・。
「魔法石は、輝石に魔法を封印することで誰でも魔法が使えるようになる魔法道具。さっきからある爆発も、魔法石があれば一人でも不可能じゃない。そして、この城には貴重で忌み嫌われる石。魔石がある。先代の宮廷魔導士が残した負の遺産。魔石は、人間を生贄にして悪魔召喚。つまり、魔族をこの世界に呼ぶことができる悪魔の石。・・・あれを見てくれ。」
フランの指差す方向には黒い光の柱がさらに1本。北と西門の間くらいの位置にできていた。
「あれは、悪魔召喚が始まった証拠。」
アリシアが私たちのところに戻ってくる。
「さすが、魔道の民と言われたヘルムの生き残り。よくご存じで。」
ふん!と言った感じで首を横に振るアリシア。
「嫌われたものだな・・・。まぁ、今アリシアが言った通り、この場所は悪魔召喚が始まっていて危険なんだ。兵が道を切り開いている。ここは一緒に来てくれ。」
「・・・」
素直になれない。まだ、納得できない。心がフランを許せない。
「お姉ちゃん、やばいよ・・・これ」
アリシアが東と南に新しく現れた黒い光の柱を見つける。
「きら、ここはフランの言うこと聞いとこうよ。エル様にも話して、ちゃんとみんなで話そう?」
そららが私の肩を抱いていったん離れようと私に声をかけてくる。
空には暗雲が立ち込め、風が強くなる。雷鳴轟き、嵐のような天候になってきた。
炎はアリシアが集めているので、火事が大きくなることはないが、瓦礫が風で倒れたり飛んだりしている。フランが私に手を差し伸べる。
「やめてよ!」
私は手を払いのける。
「行くわよ。行けばいいんでしょ・・・」
「あぁ。すまない」
フランは私たちの先導をし王国兵が待つ広場へと非難する。
私はローラに別れの言葉をかけると、その場を後にした。
その後、少しづつ、南側が明るく輝きだす・・・。
私たちはひたすらに走った。
道中、アンデットに遭遇することもあった。
ゴブリンが襲ってくるもあった。フランの一撃でどれも見事に倒されている。
不思議なことに、街にあれだけいた人の姿はほとんど見当たらなかった。
「そら、街の人。どこに行ったんだろうね。」
「うちも気になった。どこかに避難していればいいんだけど・・・」
「・・・」
フランは無言で走り続ける。
何か知っているのだろうか。
いつの間にか南から立ち昇る光。これは他の光の柱とは違い、金色の光が暗い雲に伸びていた。
金色の柱には六芒星が暗雲に映し出されていた。
「くそ!!間に合わなかった」
今ある光の柱は5本。
北西。
西南。
南。
南東。
東北。
王都を中心に六芒星が出来上がりつつある。
フランが言った間に合わなかったとはどういう意味なのか・・・。
そして、北。アレクサンダー城が闇に飲まれる。
南の金色の柱が漆黒の闇へ色を変えていく。
6本の柱を光の輪が繋ぐ。
柱同士を光の線が導きあい、王都に巨大な六芒星が出来上がる。
「やばいなぁ。間に合わなかったし、最悪のシナリオじゃないか。」
アリシアが大きく身震いをするとフレイアが現れた。
「申し訳ございません。力及ばず、召喚の光を防げませんでした」
フランがフレイアに頭を下げる。
「こっちの戦力は?契約者はいるのかい?」
「申し訳ございません。・・・おそらく、アリシア一人かと」
「ダメだ。こんな戦力でケンカする相手じゃないのに」
フレイアはアリシアの頭の上にいつものように着地する。
「フレイア!エルドロール様は!?」
そららがアリシアの頭に詰め寄る・・・。
「大丈夫。あの人が負けるわけないよ。もちろんみんな無事。でも、敵が減らなくて・・・。きっと頭がいいやつなんだよ。エルドロールを足止めさせることを優先して王都の戦力は減らしているようだし。エルドロール不在の今、無事に召喚の光を発動。現在にいたる。・・・」
「よかった~・・・。エル様は無事なんだぁ。」
安堵のため息をつくそらら。
頭がいい。きっとローラの事。・・・なんだと思う。
エルドロールが精霊契約者って知ってたんだ。だから。向こうにはモンスターを多く向かわせた。
王都には自分がいるし、・・・ローラ。
「召喚の光を見たからかなり焦ってたよ。それで、僕をこっちへまわしたのさ。」
召喚の光と言われる六芒星の光。闇に飲まれるアレクサンダー城を見ながらフレイアが残念そうに
「まぁ、僕一人じゃどこまでできるか・・・」
精霊のあまりにもひどい諦めモードに誰も何も言えなかった。
フランも、王国兵の大勢も、私も何も言えなかった。
これから来るのは悪魔。魔族がこの世界に来る。あの光の向こうから・・・。
パチッ!!
「・・・痛いんだけど」
アリシアがフレイアを両手で挟む。
「フレイア。アリスは、いきなり出てくるな!と昨日言ったつもり」
綿あめのようなボディはぶにょっとつぶれている。
「ぎゅうようだっだんだよぉ~」
「それに、精霊がそんな暗いこと言ったら、私たちは光を見失う」
「そんなこと言ったって・・・。」
「火の精霊なのに、燃える魂はないのね」
そららがフレイアにちょっかいを出す。
「べ、別に魂が燃えるわけじゃー」
グガァアアアァアアア!!
王都に大地に巨大な獣のような声が鳴り響く。
その声は空気を、大気を震わせ私たちの体が揺れる。
直後に地上の六芒星が天空に移動し、六芒星の向こうから、何かがこっちに来ようとしている。
緑の目、黒い?茶色い体。さっきアリシアの出した青い合成獣に姿が似ている。
「・・・いやーな、お客さんが来たよ」
フレイアの言葉と同時に光の柱が消え、六芒星の光が弾けると、向こうから異世界の悪魔がこの世界に現れた。




