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異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
第4章 魔導都市の陰謀
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16-1 動き出す運命

「あのぉ、うち、ちょっと忘れ物が・・・」


 うちはその場の空気に飲まれそうになり、たまらず体が拒否反応を示し、どうにか逃げようとする。

 目の前に広がった場所。

 巨大なドラゴンの石像。

 ドラゴンの石像の前に掘られた深そうな穴。

 

 なぜだろう・・・。赤く光ってる。


 おびただしい数の群衆が穴を囲むように跪き頭を大地に伏せている。

 その異様な光景に驚いたうちは動けなくなってしまう。


「ちょ、痛いわよ!!」


 そんなうちをうしろから何者かが部屋に押し込む。と、言うよりも蹴り飛ばす。

 振り向いてみると、他の信者とは違いまだまともそうな50代くらいのおじさんだった。

 服装も、ここにいるやつらとは違うし、幹部とか偉い人なのかもしれない。


「なにすんのよ!?うちは神聖な生贄なのよ?そんなことしていいと思ってるの!?」


「うるさいぞ!!この盗っ人!!お前は滞在を犯しているのだ。にも関わらず生贄になれる幸福に感謝するんだな」


 姿、雰囲気とは違いその声、視線はうちを突き刺すかのようにトゲトゲしかった。


「うちが盗っ人!?何を盗んだってのよ!!あんたたちが拉致したんでしょ!?この人さらいども!」


「何とでも言えばいいさ。俺たちは今日、歴史に名を刻むのだ!」


 男は数人の部下を引き連れて部屋に入ってくる。その手にはうちの魔剣が握られている。

 柄にドラゴンの装飾。魔力を帯びた宝玉。あれはうちの魔剣に間違いない。


「それっ!!あんたの持ってるやつ!うちのよ!返して!!」


「これは大地の聖霊様に与えられたモノ。人間ごときが所持できるものではない!」


「うっさい!それはうちのよ!大事な人から受け継いだんだから!」


「黙れ小娘!図に乗るでない!!さっさと儀式の準備をしろ!」


「御意」


「ちょ、やめてよ!!」


鞭影黒シャドウ・テイル


 影の中から現れた黒いムチがうちの手首、足首にまとわりつく・・・。

 立てなくなり、バランスを崩しその場に倒れこむ。


「な、なによこれ!?ちょっと、はなしなはうあふあうあ!!」


「うるさい娘だ。これで少しは静かになるだろう」


 くっそ〜・・あのオヤジ。人の口にこんな得体の知れない布切れ突っ込みやがって!

 猿轡をされ、そのまま担ぎ上げられた私は生贄専用?の台まで運ばれていく。


 広い。


 この場所はこの連中が作ったのか、すごく広かった。うちが10人分くらいの高さまである天井ギリギリまでそびえる石像もスゴイが、地底から赤く燃える液体が吹き出ているこの穴。これが一番すごい。

 

物が落ちても、液体に触れる前に燃え尽きてしまう。


 ・・・まさか、うちをこの中に放り込むつもり?


 ・・・。


 なんか、変な椅子に座らされる。

 そのまま手足を拘束されていく。


 うちと、他にも女の人が隣にいた。黒髪の、うちと同じくらいの年齢かな?見たこともない人。涙目で、お互いに何かを言い合っている。けどきっと


 怖い。

 逃げたい。

 死にたくない。

 など、考えてることは同じだと思う。


 椅子は、背もたれが中途半端。腰と肩の間くらいしかない。

 椅子には溝が掘られている。

 左右に、小さな溝。

 椅子の下へ続き、ドラゴンの石像の前に繋がっている。


「そらら・・・、無事だったんだな」


 ?


「ほひ!?」


 聞いたことのある声が聞こえる。

 でも、椅子の拘束され、猿轡をつけられたうちは体の自由が利かない。

 背中の方から、トキの声が聞こえる。


「へへ。無事そうで良かった。もうすぐで、お前の妹と姉ちゃんに国を滅ぼされるとこだったからな。とりあえず、死んでなくてよかった。」


 弱々しく聞こえるその声。彼も、生きてはいるが無事ではないだろう。ここにいる段階で、かなりのダメージを負っているようだった。


「はうっははあうういか!?」


「何言ってるかわからねぇけど・・・。俺は生きてる。なぁに、ちょっと下手やってな。人間、変わるものだったってことだ」


 あぁ!もうこれ邪魔よ!会話すらできないじゃない!!


「ティグレ殿。首尾はどうですかな?」


「これはこれは、神父様。おかげさまで信者も増え、言われた通り処女の血、その他生贄も用意できました。あとは、時間を待つばかりです。もうすぐ、我が分身、マスカローネもくると思うのですが、お会いしていきますか?」


「いやいや、今は私も忙しい身でね。今回はご遠慮しますよ。それより・・・。」


 ドラゴンの石像の影から、ひとりの男が姿を現した。

 神父と呼ばれた男は、うちの前に立ち止まり、うちの眼をじっと見ていた。


「はふほ?」


「ふふふ、あなた、どっかでお会いしましたかね?似たような魂を見たことが・・・。いや、勘違いですかね、南の海で知り合った少女と同じなど。これ、餞別です」


 男はうちの眼を、眼の奥を見るようにじぃっと見つめると、にこやかな笑顔でカバンの中から何かを取り出した。

 気持ち悪い、魂とか。ここの連中ってみんなおかしいのかしら?

 それに、なに?これ。

 手に置かれたなにかは、ブニュブニュしてて、きららのお腹・・・。いや、焼きたてパン?なに?これ。


「このあたりの国では珍しいんですけどね。美味しんですよ。それ」


 神父はうちの手になにか白い柔らかい、弾力のある変なものを置いてティグレ、と呼ばれた男の方へ向かった。


「裏切りものめ・・・」


 背中の方でトキが弱々しく、苦痛な声でいう。


「神父様、このあとのご予定は?」


「ムーンブルグでの実験の結果が気になるからね。少し移動してみようかと思います。あなたは、この地に封印される魔獣の開放、お願いしましたよ。・・・。まぁ、ここまでくれば完成まであと1歩。ですけどね。マスカローネ君とうまく付き合ってください。では、またそのうちに・・・」


 神父はドラゴンの影に向かうと、言葉途中に姿が闇の中へ消えた。

 トキの、『裏切り者』も気になり、どうにか喋れないものかと椅子の上でもがいていると扉が大きな音を立てて勢いよく開いた。

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