15-5 生贄の心情
ガラガラ・・・
いい加減聴き慣れた金属の音で、ウトウトと眠っていたうちは目を覚ました。
部屋と呼べるような場所ではないが、隅の方で丸まりながら寝ていると中に入ってくるひとりの男。
身を起こし、その様子をとりあえず伺うことにした。
「出る。これ」
男が差し出したのは金色に光る蛇の姿をかたどった腕輪だった。
「なにこれ?うちにつけろって?」
「そうだ」
金色の蛇。なに?古代文明の遺産かしら。こんなもので命を投げ出せと言われても不愉快きわまりない。
言われたとおり、とりあえず右手に巻いてみるけど・・・。
ふぅん。やっぱりあまりいい趣味ではないわね。特にこの蛇の顔。なにかしら、憎たらしい。
「来い。マスカローネ様が呼んでいる。」
「マスカローネ?」
両手を縛られ、前後を囲まれながらうちは牢屋を出る。そのまま、男達に連れられてそのまま移動を開始する。うちの問いかけに答える気はなさそう。
ズゥゥゥ・・・ン
(何かな。だいぶ賑やかだけど・・・何してるの?)
時折、地鳴りのような音が響く。
さっきからほかの信者たちの行動も活発だ。
目の前、狭い通路の横を走っている。手には武器を持っているのだから穏やかではない。
「ねぇ?なにかあったの?」
「関係ない。お前は黙って付いてくればいい」
ムッかぁー・・・。
なによ。その言い方。もう少し神聖な生贄様に手厚い待遇とかないわけ?
「はいはい、左様でございますかぁ」
べーっと舌を出して、ふんっと顔を背ける。
ガダガダ!!・・ザザザ!!
その瞬間、床、天井?目に見えるあらゆるところが揺れた。
そして遠くではなにか崩れるような、落ちるような・・・。なにか崩壊した音が聞こえる。
幸い、うちの足元は無事のよう。
目の前にも崩壊した瓦礫などは見当たらない。
それほどの振動を受けても、うちの案内役は何事もなかったかのように普通に歩き続けた。
(こいつ、いい根性してるじゃない)
うちも、なんか言うと負けたような気になるからそのあとを黙ってついて行く。
・・・。
「ねぇ?まだ??」
先に根をあげたのはうちだった。
一体、どれだけ歩かすの?
「もうすぐ。もうすぐ着く。」
なんか、もうどうでもいい感じ。
なんか疲れた。
さっきの振動。あれはきっとお姉ちゃんたちが来てるに違いない。
どうせ、このまま行ったって、うちは助かるし、すぐにお姉ちゃんが助けてくれる。
なんか、勝ち確定!って感じで気分がいいわね。
そう思うと、怖いものがなかった。
ううん、怖くなくなった。
・・・そう、あの部屋に入るまでは・・・。