表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
第4章 魔導都市の陰謀
109/126

15-2 死なない男

「あ、アリシア、大丈夫かな」


 アメリアの後ろを走りながら消えたアリシアのことが脳裏をよぎる。


「あんた!人のこと心配なんて余裕じゃない!?氷蛇鞭(バラス・ビッチ)!」


 アメリアの指先から氷の鞭が信者をめがけて放たれる。

 細い通路を進みながら、最後尾にいたはずのアリシアが何らかのトラップに引っかかりその姿を一瞬で消してしまった。


 走ってて振り返ったら一瞬でいなくなるような感じ。

 そして気が付くと前も、後ろも追手の群れ。


「頼りにしてるわよ!アメリア!あんたしか戦えるのいないんだから!」


「少しは活躍しなさいよ!!」


 ムチを振り回しながら苛立つように叫ぶ彼女。

 あぁっ!!できれば私だって役に立ってやりたいわよ!

 私はエルを抱き抱えながら急いでアメリアの作った道を走る。

 アリシアが消えたと同時にエルと同サイズになった炎の獣は姿を消してしまった。

 術者と離れると姿を維持できないみたい。


「あぁ!!めんどくさい!!氷魔弾アイシクル・ボム!!」


氷魔弾アイシクル・ボム氷魔弾アイシクル・ボム氷魔弾アイシクル・ボム


 小さな氷の塊が無数に現れ、それは次々にぶつかり合い、少しづつその大きさを増していく。

 最初はコブシ大だったものがいつの間にか通路を塞ぐほどの巨大な氷塊になっていた。


氷魔弾アイシクル・ボム!!」


 ズゥゥゥ・・・ン


 重い地響きが聞こえると、完全に通路は氷の壁で塞がれた。

 氷の向こうではもがく信者の姿が見える。


「まったく!どれだけ出てくるのよ。1人見たら100人はいると思えってことかしら」


「あはは。それ、なんか違うと思うけど・・・。でも、これで前と後ろから挟まれなくなったね。早く進みましょう!そららを探さないと」


「アリシアは?」


「あの子は大丈夫!その気になればこんな神殿くらい壊して出てくるでしょ」


「そりゃそうね。わかったわ、先へ行きましょう!」


 私たちはそららを探し出すためにも先を進むことにした。

 道はかなり入り組んでいた。

 上がったり下がったり。

 曲がり道の他にも分岐も行くつもあり、今現在自分がどこにいるのかわからなくなるほどだった。

 時折出てくる敵も数をだいぶ少なくしたみたい。あらかた倒したのかな?アメリアの魔法で簡単に倒して進める。


「ちょいまち!!」


「う”く”!!」


 急に背中を捕まれて首やお腹に洋服が食い込む。


「な、何するのよ!」


「しっ!!誰かいるわ」


 アメリアの視線の先には真っ暗な部屋。その中から話し声が聞こえてくる。


「えっ?襲うの?」


「まさかっ!無駄に戦いたくはないわ。ここは偵察よ。」


「盗み聞き?」


「まぁ、、そう言う言い方もあるわね。ほら、黙って」


 アメリアと共に扉の方へ近寄り、そっと中の様子を伺う。その中は消して広くはないが、なにもない部屋。

 暗くて、部屋には男が一人だけいる。

 ほかの信者とは明らかに違う。

 特異なオーラを感じる。


「あれは、だれかしら?ここからだとわからないわね」


「なぁに?あれ」


鏡水視クリスタル・ロス。水魔法よ。遠くのものが見えるの。熟練すれば話すこともできるわ」


「へー便利なものもあるのね。」


「ほほほん本日、予定通りりりり、、いけいけいけ、生贄を聖霊様へさささげ捧げるるるる儀式をおおおおおこここおこ行います!!娘を大地の生贄にし、わわわれわれ我らがまま魔王様の復活をおぉぉぉぉ!!」


 部屋の中で誰かに跪きながら何度も何度も頭を下げている人間。

 なんだ?あいつ。

 でも、なんかすごく物騒なこと言ってるぞ。


「娘ってのは、きっとそららのことね。」


「じゃ、じゃあ生贄っていうのは?」


「それも、いいとこそららを殺すってことね」


「いいいいいつつつぅ!?」


「そんなこと真似しなくていいわよ!」


「ち、ちがっ!!」


 私たちの気配に気づいたのか、なかにいた男が扉の方に歩いてきた。

 そして、扉の隙間からアメリアを見下ろすようにしている。

 私はアメリアの後ろにいるその姿に気がつくと、アメリアへ声を掛けようとするも男の姿が恐ろしく声が出なかった。


 顔面蒼白で眼球はほぼ白目。皮膚が垂れ下がっていて、みていてこの世の生き物とは思えない。

 そして、やつは私たちの会話に乱入した。

 アメリアは気にしてなかったみたいだけど、私が違う!と言う前にその手はアメリアの首を掴んでいた。


「くっ・・・あ”あ”あ”あ”!!」


「ふぅん・・・。また、侵入者ですか・・・。そこまで、皆で大地の聖霊様にお会いしたいのですかね。信者が増えることは大いに結構!でも、・・・あなたは、処女ですか?」


「アメリア!!」


「逃げなさい!あんたじゃ勝てない。先に、みんなに知らせて」


 近寄ろうとした私にアメリアは声を上げる。

 その眼を見て、私はエルを抱えてその場を離れようとした。


「・・・処女ですか?」


「うっさいわね!だからなんだってのよ!!」


 ドンッ!!


「ゲホッ・・・」


 壁に叩きつけられる彼女の姿。横目でこちらを見て、なにか言いたそうな顔をしている。


「ほんとう・・・ですか?」


 男はそう言いながら懐から取り出したナイフでそっとアメリアの胸元を切り裂いた。

 その瞬間に、アメリアの豊満な胸があらわになる。


「処女・・・乙女、ですか?」


「えぇ、そうよ。だから、いい加減その薄汚い手、離してくれる?暗焔龍咆ダーク・フレア


 アメリアの両手から黒く燃える炎が放たれる。

 その炎に男は包まれ、神殿にも振動、衝撃が伝わる。


「ううううう、うそだっ!!」


 黒い炎の中から、狂気に狂った男が顔を出し、ナイフを振りかざしそのままアメリアの右腕に振り下ろす。


「ああああぁっ!!」


 攻撃を受け、平然としている有り得ない男の姿に驚いたこともあるが、腕へのダメージを受けアメリアの悲鳴が狭い通路に響き渡る。

 ナイフ、腕から鮮血が滴り落ちる。


「あなたは、嘘をつきましたね?・・・」


「こんな可愛いレディを捕まえて処女かどうか聞くなんて、失礼なやつに言われたくないわ」


「このような汚れたモノは、生贄になれませんね。・・・せめてその汚れた魂、肉体は我が教団の礎となればいいでしょう!」


 男はナイフを抜くと、そのままアメリアの胸に振り下ろす。


 ドスッ


 ・・・ガンッ


 男の頭に私の放った矢が突き刺さった。

 バランスを崩した男はそのままアメリアよりも右にナイフを振り下ろし、壁に刃が当たると砕けるように散った。


 ・・・やってしまった。


 生きている?人間を殺してしまうなんて。

 でも、やらないとアメリアが死んでいた。

 まだ、手が震えている。・・・目の前には、力なく横たわる。


 ・・・横たわる・・・。


 いや、横たわっていない男の姿。

 よかった。死んでない。・・・いや、良くない!!

 一瞬の隙をついてアメリアが逃げてくる。が、その背後では言葉にならないくらい不気味な姿。あいつの白目は確実にこっちを見ている。


「たすかったわ、きらら。今のはやばかった。早く行きましょう。あいつ、普通じゃない!」


 そんなの、いま痛感してるわ。これは、やばい。やばい気がする。


「あなたは・・・処女ですか?」


「ひぃ!!」


 グロいものが嫌いな私は全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。


「逃げるよ!!」


 私の手をとってアメリアが走り出した。男は頭に矢が刺さったまま、私たちの後を追ってくる。

 その光景はもはや恐怖でしかなかった。

 しかし、その恐怖はすぐに終わった。

 絶望へと姿を変えて。


「ふつう、か弱い女の子が逃げてればどうにかなるわよね?」


 私のエプロンを胸に巻きつけ、とりあえず見えないように処理をすると目の前を見上げて頭を掻く姿。


「いいからどうにかしてよ!!」


 2人で向かった通路の先は行き止まり。男はゆっくりと、獲物を追い詰めるように近づいてくる。

 余裕なのか、諦めたのか。少し適当なアメリアへ不満が爆発。

 相手は頭に矢が刺さっても歩けるやつ。

 もう、私がどうこうしても勝てる相手ではない。


「そんなこと言っても・・・。魔法もきいてないみたいだし・・・。」


 ここまできて、お手上げ状態だった。

 こんなところでエルフィンの力を解放するわけには行かない。間違いなく生き埋めになる。

 ただ殺されるならそれしかないと思うけど・・・。

 それにしても、ほかに手段はないものか?


鞭影黒シャドウ・テイル


 冷たい、低い声が通路に響いた。

 その瞬間、私は自分の影から出てきた黒い、闇のムチに体の自由を奪われ、壁に叩きつけられるように拘束される。


「あぅっ!」


 エルが腕の中から地面に落とされ、床に弓矢が散乱する。


「あぁっ!」


 壁に叩きつけられ、一瞬クラっとしてしまう。

 アメリアも同様に闇のムチに体の自由を奪われてしまう。


「いひひひっひいひひ」


 通路の曲がり角には満足そうな男の声、笑い声とともに揺れる影が不気味に動いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ