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異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
第4章 魔導都市の陰謀
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15-1 神殿に眠りしモノ

「・・・いたい」


 真っ暗な暗い場所で、灯りもなく、アリシアは1人辺りを手探りで探していた。

 振り向いたところは・・・壁。

 となりも・・・壁。

 正面には・・・壁はない。

 当然上にも、壁はない。だって、上から落ちてきたのだから。


「炎よ」


 アリシアの手のひらに燃える炎が浮かび上がる。

 急激に明るくなったせいか、目がなれずに眩しそうにする彼女。

 どうやら。どこかの狭い通路に落とされてきたらしい。


「・・・はぁ」


 その顔は、2人とも、仲良くやってるかな・・・。とでも言いたそうな表情。

 灯りが届かないくらい上の方を見上げる彼女。


 なぜここに1人でいるかって?


 トキと別れてアメリアチームで大地の神殿の奥に進むべく3人と2匹で走っているときに、床に穴があいて落っこちた。

 まぁ、遺跡あるあるに引っかかったわけだ。

 唯一恵まれていたのが、落ちた先が針地獄とか、蛇だらけとか、拷問や死刑一直線ではなかったこと。

 でも、かなり長い距離を滑り落ちてきたに違いない。暗くなっているせいで距離感も分からないが上に戻ることはできない。


「フレイア?」


 薄暗い空間に彼女の声が響く。

 しかし、それに応えるものは現れない。

 少しイラっとした顔をした彼女は深呼吸をすると再び炎の精霊へ呼びかける。


「大地を焦がす地獄の炎。我が魔力を糧とし、彼の地より我が呼び声にこたえよ!来い!フレイア!!」


「・・・」


 虚しくも彼女の声は再び暗い通路に響くのみだった。

 いつもであれば、呼ばれもしないのに現れる彼女の契約している炎の精霊。

 今、召喚呪文を唱えても返事もなければ姿も見せない。

 このサン=ドラゴに来てから姿を一度も見せてはいなかった。


「いいもん、ひとりで行くから」


 召喚を諦めると、無骨な石造りの神殿の中を1人、歩き進む。

 石造りの通路は最初こそ、何もないようなつくりだったものの途中からその姿は大きく変わった。

 その両側の壁にはこの神殿を建設した当時に描かれたのか、古い壁画が残っていた。

 ところどころ剥がれ落ちてはいるものの、その姿はまだ知恵も知識も乏しい人間たちの姿のように思えた。


「・・・」


 彼女は1人、その不気味さに身震いをしながらも、手に持つ炎の灯りを頼りにその光景を黙って見続けた。


 人間が作物を育て、収穫する。その下には、収穫できずに苦しむ姿の人々。


 大地の穴?らしきところに人間を投げ捨てる場面。


 火山が噴火し、町を襲う。空が闇に覆われ、灰が降り注ぐ。燃える町に、張り付けにされ残される人間。


 太陽が何かに隠され、人々が怯えている場面。そして、高台で人間が人間を斬りかかろとしているところ。


 三日月光る世界に、光るものが落ちてくる。それを不安そうに見つめる群衆。船に人間を乗せ別れを告げる

 姿。


 水がなく、作物が育たず、何かのまわりで苦しそうにしている人間の姿。それを井戸に突き落とそうとしている。


 その先は剥がれ落ちて見ることができなかった。


「なにこれ?・・・生贄?でも、火山も、水不足も、日食?隕石?こんなのも仕方ないことなのに・・・」


 生贄にされる人間の中には悲しそうな表情のものもいれば、笑う者もいた。その姿が不気味さに拍車をかける。


「こっちのは・・・なに?」


 壁に描かれる巨大な姿。

 人間の絵と比べればその巨大さは驚く程だった。

 色彩は失われているが、6体の竜。


 その竜の体が横たわり、なにか光が浮き出るような構図も見受けられる。

 そして、その竜の爪、牙も剣、槍、小さな光の玉に姿を変え、竜の表面からはウロコが光って剥がれ落ちている。


 その先には6芒星の魔法陣。

 アリシアも見覚えのある悪魔召喚の魔法陣。

 魔石を元に人間の負の感情、大勢の命を引換にこの世界にその姿を現す悪魔たち。

 魔法陣の中には大勢の人間が積み重ねられていた。


「こんな昔にも・・・悪魔がいたんだ」


 廃墟の姿。大勢の人間が死に、召喚した悪魔は巨大な竜の翼を持っていた。5人の人間。2つの光るなにか。


 そして、人間に翼が生え、天に舞い上がり悪魔に攻撃をする姿が描かれている。

 その先に残るは何かの魔法陣か・・・。

 6芒星は黒く塗られ、6つの柱が描かれている。そして、その先には何もない。

 少し離れたところへ移動してみると、緑あふれる世界が描かれていた。

 しかし、その中心部は黒く塗られ、人間らしきものが横たわっている。

 大樹のもとに倒れる人間。それが何を意味するのか彼女は理解できなかった。


 ドラゴンを従える人間の姿。

 人間たちから崇められる一人の人間。

 魔法陣を囲むように描かれ、中心の魔法陣の中には人間が2人描かれている。

 そして、一番奥には黒い、巨大な魔法陣。それがなす意味を彼女は理解することができなかった。


「不気味・・・。悪趣味な」


 彼女は壁に描かれていた壁画へ手を伸ばした。


「うぐっ・・・な、なにこれ?・・手が、離れない!?」


 その瞬間、アリシアの魔力を壁の壁画が吸い上げる。

 黒い魔法陣が暗黒に輝きだすと、その光はアリシアが歩いてきた通路を逆流し始め次々に壁画に命が灯っていく。

 6色に光る壁画は、本来の輝きを取り戻し薄暗かった通路は6色の光に煌めいた。


「っはぁ・・はぁ・・・。なに?これ」


「神殿が・・・目覚めたんだよ」


 奪われた魔力は甚大。

 かなり持って行かれたようだ。

 その光景を見ながら惚けていると、通路の奥から声が聞こえたような気がした。


「その声・・・?」


「久しぶり・・・とでも言えばいいのかな?この世界では初めまして。だね」


 ペタペタ・・・。


 足音を響かせながら動く小さな影。土色の体のフレイアと同じくらいのサイズの小型のドラゴンが奥から姿を表せた。

 土の精霊、シルウィア。

 亡きエルドロール伯爵の契約していた精霊。


「シルウィア!どうして?」


「君が呼んだんだよ。ここは大地の神殿。土の精霊がいたって、おかしくないだろ?」


 相変わらず、ケラケラと笑いながら大きなギョロッとした目が不気味に光る。


「ねぇ、ここってなに?目覚めたって?」


「この神殿は、過去の遺物。ロストテクノロジーなんて大げさなことは言わないけど、過去にも、未来にも存在することのない建造物。この人間の世界に光を作った神々と使役されてきたドラゴンたち。神々が帰ったあとも生ある限り、その力を世界のために使い、その魂、骸さえもこの世界にいまだ残されている。そして、力は魂へ。知識は人間が見つけられない場所へ。その一つがこの神殿・・・」


「何言ってるの?よくわからないよ?」


「まぁ、ついてきなよ」


 シルウィアは小さな翼で飛び立つと、再び暗い闇の中へ進んでいった。

 アリシアはそのあとを急いで追う。


 どのくらい走ったのだろう。


 走れど走れど、シルウィアに追いつくことはできない。

 手に持つ炎でも、先が全て照らせない。

 彼女は無我夢中で走り続けた。


「だれっ!?」


 不意に誰かの気配を感じたアリシアはその場に立ち止まり、辺りを見回す。

 うっすらと輝き、あたりは煌く星に囲まれたような場所に出ていた。

 気配は背後、足元、頭上。いたるところから感じるもその姿を捉えることができない。


「人間よ」


 不意に振り向いた先に、声の主は現れた。

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