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異世界3姉妹の日常と冒険物語  作者: 作 き・そ・あ / 絵 まよままん
第4章 魔導都市の陰謀
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14-2 砂の蠍

 オアシス。


 原理は不明だけど、トキが言うのは大地の神シルウィアが商隊に課した試練だ、と言っていた。

 彼が言うのは、さぼらず歩いて早く砂漠をでろ。というのを言い回しただけらしい。

 ティグレさんが言うには、雨季に降った雨が地下に貯まり、砂漠の下に広がっている。その中で一部のものが偶然地表に湧き出ている。

 ということらしい。流砂なども地下水脈が関係しているらしいが、砂漠に興味がない私にはあまり理解しがたいものだった。


 今、そんなオアシスに私たちはいる。

 夜の内にだいぶ走ったようで、暑い昼間はここで過ごし、また夜に移動を開始し、闇に紛れて遺跡に入る。という作戦のようだ。

 まぁ、無難なアイデアだし、大丈夫だと思うけど。


「心配?」


「うん、ねぇねはアリスのママみたいなものだから・・・」


 オアシスの中に足を入れながらアメリアと2人何かを話しているようだ。

 エルも2人と一緒に水辺にいて遊んでいるようだ。


(ママか。確かに、この世界で私を迎えに来てくれたのもそららだしな。)


 今思うとずいぶん昔のように感じる。

 ずっとあの子といたから、これだけ離れるのは確かに不安。


「すまないな。俺の失態だ。かならず助けて見せる。」


「え?あぁ、うん。わかったわ」


 2人の姿を遠目から眺めていた私に、気をきかせたのか?トキが話しかけてくる。


「そらをさらったやつは、いったい何なの?」


「あいつらは、この砂漠で活動している砂の蠍。土の精霊シルウィアを愛してやまない狂信者たちだ。」


 近くの木影に腰を下ろすと、しばらくトキと話をすることにした。


「狂信者?」


「あぁ。熱心な信者だったんだがな。急に武力派になり、民を襲ったり、怪しい呪術を行ったり・・・。今では教祖と思われる人物もいてかなりあぶない団体になったらしい。現在までにわかっているのはなぜかあいつらは大地の神殿に入ることができ、そこを根城にし活動をしているということだ。」


「教祖・・・。そいつがそらを襲うようにいったのかしら?」


「わからん。もしかしたら無作為に選んだのか・・・。本当にそららを狙ったのか・・・」


「そららを狙った理由・・・。何も思いつかないわね」


「人さらいか・・・。儀式用にさらったのか・・・。俺たちがいくら考えても答えはわからんだろうよ」


「そ、そうかもしれないけど」


「俺の目的は相手が何であれ、そららを取り返す。それが達成できればクリアだ。」


 まぁ、その通りなのだが。

 今回の目標は砂の蠍を皆殺しにする。とかではなくそららを救出すること。ただそれだけ。

 さらわれた理由も、そららが選ばれた理由も、関係ない。


「どうすればいいの?作戦は?」


「作戦は、ない」


「な、ない!?」


 驚き叫ぶ私の声にアリシアたちは不思議そうな顔をしている。


「あぁ、ない。向かうところは敵の本拠地だ。下手な小細工はしない。向かう敵は殲滅する。」


「そ、そんなことして大丈夫なの?みんな、基本魔導士しか今回はいないのに。魔力切れになったら」


「心配ない。ティグレ」


「あい。こちらにご用意してあります」


 ティグレが麻袋の中から出したのは透明な容器に入った薄く、緑に光る液体だった。


「なに?これ」


「サン=ドラゴで精製されているマナの雫でございます。」


「マナの雫?」


 コップ一杯よりも少ない緑に光る液体が7個に分けられている。


「これがあれば、並みの魔導士であれば魔力が全回復する。魔力を精製し、液状化したものだ」


「魔力を回復できるってこと?」


「あぁ。これがあれば1回は全回復できるだろう。皆に渡しておく。非常のときは飲んでくれ。」


「すごい。こんなものもあるんだ」


「魔導士の欠点は魔力切れだからな。」


 クラーケンを倒した時にこれがあれば、アリシアはかなり楽だったろうに・・・。

 それにしてもこれ・・・、どんな味なのかしら?


「これ、おいしい?」


「味が気になるのか?お前は変わったやつだな!今までそんな奴いなかったぞ」


「だって、いざ飲むときにすごくまずくて吐き出したら困るじゃない」


「まぁ、飲めるレベルだよ。今まで吐き出したやつはいないから安心してくれ。そんなことより、もう昼のピークも過ぎる。今夜奴らの拠点でもある大地の神殿に到着するぞ。今のうちに気を引き締めておけ」


「そんなこと言ったって、作戦なしで正面突破するんでしょ?」


「予定ではな。まぁ、闇に紛れて接近する。そこだけは作戦だな」


 そんなの誰でも思いつくよ。

 喉まで出かかったが出発の準備をするトキの後ろ姿見ながら私は言葉を飲み込んだ。





「ほら、飯だ」


 鉄格子の隙間から汚い食器に入れられた小動物がたべそうな名もない丼ごはんが私の前に出される。

 その隣に、素焼き?素揚げ?にされた蠍の姿が見える。

 うちはチラッと視線を送るも食べる気になれず小さく首を振る。


(お、おなか減ったなぁ)


 アレクサンドリアの市場の姿が頭に浮かぶ。

 戻ったら、絶対に好きなもの食べるんだ。うちは心に硬く決意した。

 ・・・昨日意識を失った後、そのくらい意識がなかったんだろう。今が夜か、昼かもわからない。

 最後にあの狂った奴を見た記憶は残っている。

 思い出すだけでもまだ胸に触られた感触が残って気持ち悪い。


「それ、あげるわ」


 食事?を持ってきた男に、私はそれを上げることにした。

 食べないし、彼らからしたら食べれるものなんでしょうし。


「いいのか?」


「いいわよ。うちは食べたくないの」


「そ、そうか。じゃあもらう。」


 いうなり蠍から丸ごと一口。

 どんぶりも急いで口に入れ噛まずにほとんど飲み込んでいるように見えた。


「お前、いいやつだな」


「そ、そう?そりゃありがと」


 うれしくないわよ。あんたたちみたいなのに褒められたって。


「お礼に、いいこと教えてやる」


「いいこと?」


 最後のサソリを口にいれると、満足そうに彼は続けた。


「お前、明日死ぬ」


「し、しぬ!?なんでよ!」


「精霊様に捧げる生贄になる。なかなかなれない。光栄に思え」


「思えないわよ!いやよ!死にたくない!助けなさいよ!」


「もう無理。逃げられない。だから、明日の昼、太陽が頂点にくるまで楽しく生きろ。俺からのお礼」


 男はそのまま立ち上がりうちの目の前から去っていく。


「ちょっと!!ぜんっぜんお礼になんてなってないわ!お礼っていうならここからだしなて助けないさいよ!!」


 うちの声は全く届くことなく、男はそのまま見えなくなってしまった。

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