ファンタジーショートショート:勇者「祝ってやる」
突如異世界から召還された青年はこの展開に胸を躍らせていました。
「これからファンタジーな世界で俺の冒険が始まるのか!?」
等と1人盛り上がっていると、そこへ王様らしき人物がやってきました。
「こんな見知らぬ世界に連れて来てしまい申し訳ない。しかしそなたを勇者と見込んで頼みたいことがあるのじゃ」
その言葉に勇者と呼ばれた青年のテンションがどんどん上がっていきます。『この流れは魔王を倒してくれとか言われるのかな?』等と考えていると
「実は、わしの娘王女の・・・」
王女という単語に益々色めき立つ勇者『王女様がヒロインみたいな!?んで魔王の魔の手から救い出すのか!』等と1人盛り上がっていると
「王女と魔王の結婚式に同席して欲しいのじゃ!」
「は・・・?」
その瞬間勇者は時が止まったのを感じました。
「王様?今誰と誰の結婚式と・・・?」
「わしの娘王女と魔王じゃ!」
「どうゆうこと?」
困惑しっ放しの勇者に王様が説明しました。
「魔王がどこから見てたのか王女に一目ぼれしての。魔王というくらいだから攫いにくるのかと怯えていたのじゃが、奴め文通等と古風な手から始めての。その後何かと此方へ使節団等と託けてはこっそり会いに来ておったのじゃ。魔王も流石国を治めておる者じゃ娘もほれ込んでの。そして今回結婚という運びになったのじゃ。これで魔族とも仲良くやっていけるし良い事ずくめなのじゃよ」
「・・・それでそこで勇者を何で呼ぶんだ?」
素手にテンションは地に落ちている勇者が問いかける。
「本来であれば勇者には魔王を討伐する為に召還するものなのじゃが、王女が『祝福するために呼んでもいいのでは?』と言われての。」
「それだけか!・・・帰っていい?」
既にやる気の無い勇者。それを王は必死で止めます。
「頼む!ほんの少しの時間座ってくれているだけでいいんじゃ!土産もあるぞ!」
必死の説得により勇者はしぶしぶ出席することになりました。
「聞いてないぞ!こんな格好!」
勇者は恥ずかしいやら怒りやらで顔を真っ赤にしていました。それもそのはず今の勇者の格好は鎧だの、聖剣だのは無く、ただ『僕が勇者です!』というたすきのみ。
「何もたすきって無いでしょうよ・・・」
最終的に泣きそうになりながら勇者は席に着きました。
そして始まる結婚式。王女も魔王も美女美男というお似合いのカップルでした。それを『いいなー』等とぼんやり式が進行しているのをただ見ていると
「それではこれより召還により駆けつけてくださいました勇者様からのスピーチがございます」
等と司会者から紹介されてしまいました。
「座ってるだけじゃないのかよ!」
等と言いたかったのですが自分に当たるスポットライト、皆が勇者を見ています。ぎこちなくマイクの元へ向かう勇者。
「おめでとう魔王様!王女様!えーさて皆様3つの袋をご存知でしょうか・・・?」
そこから勇者の意識は途絶えました。
「はっ!」
勇者が飛び起きるとそこは青年の元居た世界。自分のベットの上でした。
「夢・・・だったのか?」
それにしては嫌にリアルな夢だなと思っていると、部屋の隅に紙袋が置いてありました。
「まさか?」
その袋を開けると引出物とでかでかと書かれていました。そこにメモが挟まっています。
「素晴らしいスピーチをありがとう! 魔王より」
そのメモを見ながら青年は引出物はなんだろうと包装を破いてみると
[魔界カタログギフト]
と書かれていました。
「これ元の世界に戻っても届くのか・・・?」
等と思いながらカタログを開くのでした。