音
誰かが言ったのです。
「今日からお前は私に仕えるんだよ」
その人の言うことは絶対なので私には逆らうことはできません。
私はその人に仕える事になったのに名前も、顔も知ることはありません。
たたただ、毎日その人が行うことを見ることが私の仕事でした。
その人は毎日毎日醜い塊と聞きなれない音を出して何かをしていました。
醜い塊から出る音は聞きなれないながらも心地よい音でしたので、私はその人が行う事を静かに聞いていたのでした。
ある日、その人はこの音が醜い塊が出す"言葉"だと教えてくれました。
また、そのみ醜い塊は"人間"であると教えてくれました。
私は人間というものは醜い塊なのだと知りました。
音をきっかけにその人は色々な事を教えてくれました。
醜い塊は人間が生きていた間に作られた己の姿だと言うこと。
様々な音があるのは人間は一つの言葉しか知らないからだと言うこと。
人間は国という者を持ちその地に留まる事によりその国同士でわかる合図や音を出す事により生きていくのだと。
その音しか知らないものはそれだけしか知らないのだと。
けれどもたまに多様な音を出す醜い塊もあるのだという事を知りました。
「音を言葉として覚えてごらん。
キミの好きな音色でいい。」
その人は言います。
「人間が出す音はね、今私が貴方に理解できる音と同じなんだ。
言葉はね、無限なんだ。」
そう教えてくれたのでした。