孤独ロボット
人類は滅亡した。
世界的な核戦争で人類の半分が死に、その後の大混乱でさらに半分が死に、放射能汚染と慢性的な飢餓で残りも死んだ。
私はロボット、メビウス五号。
私の創造主が名付けた、私の名前。
創造主は私が生まれてすぐ、動かなくなった。
生まれたばかりの私は未完成だったのか、所々不具合があった。幸い、周囲にガラクタが散らばっていたので、それらを使い体を完成させる。おかげで一人前のロボットになれた。
私の周囲は荒野のみ、あたり一面何もない。どうせなら誰かと一緒にいたい、そう思うのはロボットとしての本能か。
もしかしたら、一人くらい生存者を見つけられるかも知れない。そう思い旅を始めた。
地球を何周もしたが、守る対象は見つからない。
何十万キロも移動したが、尽くす対象は見つからない。
仕方が無いので仲間を創ろう。
そうすれば、私はロボットとして存在意義を見出せる。しかし材料になるものが見当たらない。
仕方が無いが、私は装甲を剥がし組み立てる。
するとどうだろう、ちゃんと人型に見える。
仲間ができて嬉しい。私は彼のためなら何だってできる。創造主にそう誓える。
しかし彼は動いてくれない。当然だ、伽藍堂なのだから。可哀想に。
仕方が無いが、私の駆動系を彼に移植する。私はまともに動けなくなるが構わない。上手くいったが、動いてくれない。
当然だ、エネルギー機関がないのだから。可哀想に。
仕方が無いが、私のエネルギー機関を彼に移植する。私は間も無くエネルギーが切れるが構わない。上手くいったが、動いてくれない。
当然だ、演算装置がないのだから。可哀想に。
仕方が無いが、私の演算装置を彼に移植する。私は間も無くガラクタになるが構わない。
上手くいった、動いてくれた。
私はようやく、誰かに尽くせる。しかし私に時間は無い。
せめてあなたに名前を送る。
あなたはロボット、メビウス六号
あなたの創造主が名付けた、あなたの名前。
私はあなたが生まれてすぐ、動かなくなる。