CLONE
2100年。
この時代に生命保険と言うものは存在しない。
その代わりにクローン保険と言う新しいシステムが主流になっている。
私も一年程前にクローン保険に加入した。
一体の価格は約1000万円。
一人で最高三体分まで加入できる。
安くはないが決して高いものでもない。
一生かけて支払っていく価値のある代物だと私は思う。
どんなときに使用するかというと、 主に移植用の臓器にされることが多い。
例えば・・・
保険者が病気や事故にあって臓器移植を要するときなどに、その都度使う部分だけ解
凍して使用する。
その場合、自分とまったく同じ細胞なのだから拒絶反応など起こるわけがない。
高確率で完治してしまうと言うことだ。
これ以上の治療はありえない。
100年前もクローンの研究は進んでいたらしいが、人間のクローンを製造して今
のように実用化されるとは
当時は、考えられなかったことだろうと思う。
クローンの使用例は臓器移植用の他にも、子供に恵まれない夫婦が自分たちの子供代
わりに・・・
と言うケースも今では普通だ。
その際は人間と同様に育てていくことになる。
臓器移植用に製造されたクローンは感情を持たせないように育てていく。
なまじ感情なんて持ってしまうと、 クローン人間も人間と同様になってしまうから
だ。
「自分がクローンであり、 人間に臓器提供をするだけに作られた」
と知ったらなんとも哀れである。
なので、作られたクローンは即個室に移し、クローン保育器で栄養剤と成長促進剤を
1年間投与しつづける。
成長促進剤を使用したクローンは、10倍の速度で成長していくので1年で10歳にな
る。
そして、たいていのクローンは 10歳になると冷凍保存されることになる。
治せない病気なんて無いに等しいというこの世の中・・・
自分が生きたいと感じたら、今後200年でも300年でも 生きることが可能にな
るだろう。
逆に死ぬことのほうが難しくなってしまう。
最近は自分から病院へ出向き、安楽死という手段を取る人もめずらしくはない。
何と言う人工的な世の中。。。
自然の摂理に逆らうことが出来るようになってしまうとは。。。
不可能も可能に変えてしまうすばらしい世の中だ。
『でも・・・待てよ?』
私はふと考えた。
『クローンに頼ってあちこちの臓器を入れ替えた人は、 自分の臓器が徐々に無くな
るわけで・・・』
クローンで作られた クローン人間ではないのか?
そう考えたのもつかの間、 出来たばかりのクローンを使って
私は明日、心臓の手術をする。
■END■