赤騎士ガーディ
「もう一つの魔宝石の方はまだ分かりませんが、最悪を想定しておいた方が良いでしょう。その魔宝石を持っている者が国家憲兵隊の王室騎兵に所属していた男、赤騎士ガーディと呼ばれる男ですから」
現在国境の垣根を越えて、畏怖の念を持って『色』で呼ばれる男達がいる。
それはゼルガルドの赤騎士ガーディとドトールの青騎士バーンである。共通している事は2人共成り上がった者たちであることで、ガーディは元は傭兵であり、バーンは奴隷である。
そしてガーディは喧嘩っ早い事が有名で、赤騎士と呼ばれる前は徹底的に敵を打ちのめす事から、鮮血のガーディーの異名で恐れられた。
「先程の古城探索や生存者がいることから奴はこの土地に来る間に死んだか、古城に存在する世界にいる可能があります。そしてただでさえ腕がたつ奴が魔物化しているとなると、かなりの苦戦が予想されます。そこで奴と対峙した際気を付ける点をいくつか。逃走時の装備は槍と双剣を所持していました。また魔法を使わない代わりに投擲用の小型のナイフをよく懐に忍ばせています。それに加えて魔宝石の壁が存在するわけですが、我が国の魔道士が奴の背中に向けて星の魔法の一つを放ったのですが、それを食らっても無傷でした。しかしその前に矢の雨を浴びせた際、その矢が見えない壁に突き刺さりました。また護衛騎士長が剣でその壁を破ることに成功し腕に傷を負わせています。このことから壁は物理攻撃に脆いと推測しています」
そこで再度咳払いをするクロム。
「色々と話しましたが、この案件はゼルガルドの問題です。先生が危険な目に遭う必要はありませんが、どうされますか?」
人に頼む台詞ではないが、口が裂けても助けて下さいなんて言えないんだろうな。ま、とっくの前から答えは出ているけどな。
「勿論一緒に戦おう、我々としてもそちらの方が心強い」
「ありがとうございます」
「それに万に一つだが生存者がいる可能性もある、早目の行動がいいだろう」
「わかりました」
そして今度はカザンが咳払いをする。
「クロム、話が変わるんだが1つ聞かせてくれないか?」
「なんでしょう?」
「一度星の魔法石の封印の力を使う際その場に居合わせたのだが、その時なにかとてつもない、巨大な何かに睨まれたような錯覚に陥ったのだが、それについては何か分かるか?」
「それは……」
記憶を辿っているのか、クロムは腕を組むと俯く。
「……恐らく『館の主』だと思います。この言葉が何を意味するのか私も分かりませんが、当時の王も思い出したかのように向けられる、その星の魔法石から発される視線のようなものを苦手としていた記述があったと思います」
「館の主か」
「お客さん、すまないがそろそろ……」
テーブルに着くシグナ達に、店主が歯切れが悪い口調で話しかけてきた。気付くと店内には他の客は誰もいない、店主の顔も青ざめているのが分かる。
「あぁ、すまなかったな。それでは行くとするか」
代金を支払って外に出ると、まだ夕日が見える時刻ではあったが、人の姿が全く見えない。どこのお店も閉まっており、さっきまでいた酒場も店主がいそいそとcloseの看板を取り付けていた。




