任務の内容
「あの女、先生の話ではかなりの逸材らしい」
「という事は我が国にとって邪魔な存在、と言う事ですか?」
「そうだな、出来るなら今のうちに……」
「……消しておきますか?」
「シグー、後ろの2人が恐いこと言っているよ。多分私の話題で恐いこと言っているよ」
「シャルル嬢、勿論冗談ですよ」
「なに?」
ローザさんは意外に冗談がわかる人みたいだが、クロムの奴はやっぱりダメダメだな。
クロム達3人を加えたシグナ達は、雪山を抜け小さな街道に出ていた。日もだいぶ落ちて来ているため、次の町で宿をとる予定だ。
しかしクロムの考えは危ないものがある。あんなに人とずれた性格なのは、世間を知らず友達もいないためのものだろう。……友達がいないか、なんか他人事ではない気がするが気のせいにしておこう。まぁなんだ、哀れみという形でならあいつの相手くらいしてやってもいいかな。それにシグナ達に感化されれば、レギザイールとゼルガルドの両国間も少しは良くなるかもしれない。そうだ、国のため、特務部隊らしい任務ではないか。
女性の2人はというと、早くも打ち解けているようで、互いの今回の任務に関してから何気ない話題まで、色々と話しているようだ。ミケの時もそうだったが、女性達はよく話題が尽きないものだと感心させられる。
「シグー」
「なんだ?」
「ただ呼んだだけ」
こちらを見ながらクスクス笑うシャルル。
ふぅー、女性達がこんな感じで会話を成立させているのなら、話しが尽きる事はないよな。
今回シグナ達の任務は、最優先されるべき特別の案件である。話ではゼルガルドの国境に近い町の一つ、キタカレの町で神隠しが起こっているらしい。詳しい事は何もわかっていないため、あとは現地に行って対処するようにと。だいたいそうだけど、今回の任務も内容が大雑把すぎです。
そしてクロム達の任務は、国の秘宝を奪った国賊2人を捕まえて秘宝の回収をすることらしい。秘宝が何であるのかはローザさんが濁していたため分からないが、最初クロムが賊を捕まえると1人で飛びだそうとして大騒ぎになった所を、無理矢理ローザさんとガレリンが同行することで落ち着いたらしい。ローザさん曰く、クロムはカザンのように特務部隊として1人で行動したかったようで、2人が付いてくる事に関してその後も一悶着あったそうだ。そしてシグナ達が複数で行動しているのを見てからは、その話題で文句を言わなくなったので助かったと、小声で教えてくれた。
そしてクロム達の任務も情報不足で困っているらしく、情報収集も兼ねてこちらと一緒に行動をさせてくれと言う事になったのだ。
ちなみにストームの件、シャルルには今のところ手がかりなしと言う事で伝えてはいるが、実際は少し違っている。月の魔竜教団が壊滅した3カ月前、別行動をしていたカザンはある施設を見つけていた。
山奥で盗賊の寝ぐらに向かう途中、たまたま煙が昇っているのを見つけたらしい。最初は山火事かと思って行ってみると、そこはカザンの知らないレギザイールの施設であった。遠目から見る分では、そこにはレギザイール兵による厳重な警備がされており、山の至る所にはトラップも設置されていた。煙が昇っているのは何か事故があったらしく、走り回る兵や消火にあたる魔道士達の姿も確認出来た。これがストームと直接繋がりがあるのかは分からないが、ただ軍か国の上の方では何かよからぬ事を秘密裏に画策している者がいるのは確かなようだと確信したそうだ。
そこでカザンは、この件は暫くの間シャルルには伏せる事と、信用が出来る人にその施設の情報を得るために協力してもらう事を決めた。ちなみにその施設に張り込んでくれている人から、まだ有用な連絡は入っていないそうだ。




