コンビ結成
レギザイールの城下町は、城を中心に放射線状に何本もの大通りが伸びている。
シグナはシャルルに付き添い、男達を最寄りの警備兵詰め所に引き渡すと、大通りの1本に店を構える、外壁寄りでシャルルが行きつけと言う酒場に来ていた。
「そう言えば双頭の魔竜殺しさん、本名は? 」
「あぁ、俺はシグナ=アース。それとその魔竜殺しって呼び方、色々と目立つからあまりしないでくれないか? 」
改めて自己紹介をすると、シャルルは勢いよくこちらに人差し指を立てて突き出し、チッチッと言いながら横に2、3度振る。
「もー、嘘はつかなくていいんだぞっ」
そして1つ、ウインクをして見せた。
「んっ、何のことだ? 」
「もぉーしょうがないなー」
シャルルは大きく溜息をつくと、腕組みをしてこちらを舐め回すようにジロジロと視線を送った。
「まー、たしかに腕はたしかみたいだし、シグがそう言うならそれでいいんだけど」
どうやらシグナが先ほどの場面で、双頭の魔竜殺しであると勢いよく名乗ったために、引っ込みがつかなくなってしまっている見栄っ張りさんだと思われてしまっているようだ。まぁ、よくある話なので気にしないでおこう。
それよりーー、いきなり呼び捨てにされたことの方が、正直気になります。
「そうそう、いい事を教えてあげよう。私はゴールド家の悲願、あの内壁の中に一族とともに戻るための手始めとして、まずは軍に入隊したのだ」
どうやらこのシャルルという嬢ちゃん、落ちぶれた下級貴族のようだ。軍でのポジションが上がっていけば内壁の中で暮らす事が許される。その時家族も呼べるんだっけ?
そんな事より、どこがいい話なんだ?
とりあえず相槌は入れておくが。
「まあなんだ、頑張れよ」
「なに他人事みたいに言ってんの?」
「いや、実際他人事なんだが」
「どうせ暇してるんでしょ? こんな時間にあんな所にいたって事は、現状に不満があって脱走した兵か、アウトローさんなんだよね? 」
脱走兵にアウトローって。
……たしかに普通のレギザ兵はわざわざこんな街の外れに顔を出す事はあまりないようだし、シグナは現状に不満が大いにあったりするので、あながち違うと言うわけではないのだが。
「まぁ、半分正解かな」
「じゃ、決まりね。人助けだと思ってこれからシャルルゴールド様の下働き、もといアシスタントをしなさい。さすれば悲願達成の暁には、あなたを下郎、もとい従業員として雇ってあげるわ」
なんか色々とありすぎて、突っ込むのがめんどうくさいです。