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突入、月の魔竜教団!

 その3階建ての建築物の外壁には、びっしりと蔦が這っているため一見すると周辺の雑草も相まって廃墟のように見える。また切り立った岩盤に密着する形で建てられており、建物のすぐ隣には崖が走っている。


 そして遠目から気配を殺し辺りを窺っていると、草むらを掻き分ける音が近づいてきた。

 跪いたままその音がする方向に魔竜長剣を構え警戒していると、手を伸ばすジェスチャーでガオウに待つように促された。


「隊長、お待ちしておりました」


 そして姿を現すと共に声を掛けてきた男は、バレヘル連合のエンブレムを身に着けた1人の騎士であった。

 髪には少し天然パーマが入っており小柄な体格で中性的な幼い外見のため、シグナより若そうに見えるのだが滲み出る雰囲気から恐らく年上であることが伺える。


「アリナスさん、現状報告をお願いします」

「はい、あの建物に攻め入った盗賊団は今のところ誰も戻ってきていません。また時折建物から外を窺う者の姿が確認されています。その者は月の魔竜教団のシンボルマークである、刺繍が施された漆黒のフードを身に付けているのが確認されています。次にこちらの現状ですが、隊長達を含め20名全ての隊員が揃っており、号令があればいつでも行動に移せます」

「御報告ありがとうございます、では部隊を4つに分けます。まず私を含むここにいるメンバーで先陣を切って正面から攻め入ります。第2部隊は私たちのあとに時間をおいて突撃し、第3部隊は梯子を使って2階から突撃して上の階を目指します、そして最後に2階へと突撃する部隊の援護と作戦失敗で退却する事になった際の援護をする部隊を第4部隊とします。アリナスさんは第2部隊に入っていつでも私からの全体指揮を交代出来るようにしておいて下さい」

「わかりました」

「それと実は先導者の1人と先ほど戦闘になりまして、取り逃がしています。もしかしたらその者が先に戻ってきており敵が待ち構えているやもしれませんので、皆さんには十分に気を付けるようにとの伝達もお願いします」

「はい、それでは梯子の作成が出来次第水晶で連絡を入れますね」

「あっ、待って下さい」


 そう言うとパラディンはこちらに兜を向ける。


「我々の部隊が一番危険な役割になりますが、シグナさん達はどうされますか?」

「問題ない、最後まで同行させてもらうよ」

「それではアリナスさん、部隊編成の件もお願いします」

「了解しました」


 草むらに身を潜めこの場を後にするアリナス。


 そしてしばらくすると、パラディンの水晶が発光し作戦が決行される。

 月明かりが雲により遮断されたのを合図に、シグナ達が飛び出し入口を目指す。後方からは矢が放たれる音がし、別のところからはしごを抱えて飛び出した部隊が見える。

 視界の片隅に矢を受けて崩れる者の姿が映る中、シグナ達は入口前に到着した。パラディンは手を使いバレヘル連合の2人に指示を出すと、建物内を突き進み出した。シグナとシャルルはその後に続く。


 建物の中は馬車が悠々と通れる広さの通路が真っすぐ伸びており、左右には所々扉があった。時折左右の扉から現れる男達を切り捨て通路を進んでいくと、前方にフードを目深に被った男が2人現れた。両手剣を持つ2人は、まるで誘うかのように奥へと走り去って行く。

 パラディンは入口付近に来ていたアリナスに手を使いなにやら合図を送る。それを受けてアリナスも手を動かし返事をしているようだ。


「あとはアリナスさんに任せました、我々はこのまま進みますよ」


 フード姿の2人は通路の先にある大きな扉を開け、その奥へと消える。シグナ達もそのあとに続き扉の前まで来た。中の様子を窺うと、その先の通路は岩肌がむき出しの洞窟そのものであり、曲がりくねった洞窟の先を進む2人を追いシグナ達も進む。そして暫く駆けて行くとだだっ広い空間に出た。


 そこの高い天井には大きな穴がポッカリと空いており、月明かりが光の柱の如く洞窟内を照らしている。また右側を見れば途中から壁が途切れ剥き出しの崖となっており、そして正面には両手剣を構える先ほどのフード姿の2人。そして2人のさらに奥には暗くてよく見えないが、何かとてつもなく大きな何かが鎮座しているのが見えた。


「隊長、あれは……」


 ガオウが目を凝らし声を漏らす。

 すると後方でジャラジャラジャラと鎖が擦れる音が聞こえ始め、振り返るとガシャーンと大きな音が響き上方から降りてきた分厚い扉で来た道が分断された。

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