おにゃにゃの子?
「先程の弓使いが根城へ戻る前に、我々は到着しないといけませんね。急ぎましょう」
パラディンの一言で移動を再開する一行。雲が出てきており、時折月明かりが遮断される。
「そう言えば隊長、あの矢は一体何だったんですか?」
ガオウは先頭を行くパラディンの隣に並ぶと、先程の弓使いについての質問を口にした。
「憶測になりますが、あの矢は魔具で作り出していた固形物のように感じました」
「魔具であんな追尾出来る矢が、作り出せるもんなんですか?」
「少し違うと思います。ただ単純に真っすぐな棒を作っていたとかではなくて、若干曲げたり場合に応じて羽まで作っていたという事なんだと思います」
「と言いますと?」
「矢を作る時にその様に加工する事で、思った所に飛ぶようにしていたのではと」
「では追尾していたんじゃなくて、先読みで射ってたのですか?」
「そうなりますね」
話の通りだとしたらあの弓使い、かなりの精度の予測射ちをしていた事になる。パラディンの動きを読み、一瞬でそこへ曲げるように矢を加工する技術。あの歳でそんな事をやってのけるとは、かなりの訓練を積んできたのであろう。
シャルルの方をチラリと見ると、聞き耳を立て今の会話をちゃんと聞いているようだ。
人と一緒にいるのであれば、共有する情報はあればあるほど良い。特にチームで任務を行う際は1人だけ情報を知らなかったり認識が異なっていたりすると、1人だけではなく全体に危険を及ぼす事にならないとも限らない。
シグナはその聞き耳を立てるという行為がどこか男らしくないと思い、幼い頃から意図して聞かないようにしていた。そして軍に入隊して失敗した。他人はいちいち教えてはくれない。そしてなるべくして孤立していってしまったのだ。
「それとあの弓使い、なんか胸の膨らみがあったような?」
「えぇ、女の子でしたよ」
「なに! ボサボサの伸び放題だったから、どちらか怪しいとは思ったが。くそっ、それなら死ぬ気で捕まえるべきだった」
それを聞いていた最後尾のジリウスが声をあげる。
「ガオウ、娘を持つ身でまだそんなこと言っているのか? しかもかなり若かったぞ?」
後ろを向きながら声を荒げるガオウ。
「ジリウスさん、俺は初心を忘れていないだけなんですよ。それにオッパイに垣根なんて存在しない。あと俺が死ぬ時は、オッパイに囲まれて死にたい」
「お前は阿呆だ」
この兄ちゃんはなに普通にエロトークをしているのだ。位置的に間に挟まれてしまっているシグナ達は聞いていなかった事に出来ないではないか。
隣のシャルルは他所を見やって聞いていないフリをしてはいるが、かなり居心地が悪いはず。
うわっ、シャルルと目があったら睨まれた。そこへガオウからお声がかかる。
「そうそうシャルルの嬢ちゃん、あの空中に浮く盾は何なんだ?」
「あっはい、魔具なんですけど零れの魔具の親戚のようなものです」
「たしかに零れなら自在に動かせるだろうけど、それならそれも魔力がだだ漏れするんだろ?」
「まぁ色々とありまして」
先程の件といい、シャルルはこの人との間に壁を作ったようだ。
そうこうしていると、目的地である敵の根城と思わしき建物が視界に入ってきた。




