矢傷
光の矢、そんな類の魔法は聞いたことがない。という事は魔具で作り出した矢という事か。
先導者は手持ちの矢が無くなっているようだし、緊急用に形を作り出す魔具を所持していたのかもしれない。
しかしパラディンは何をやっている。弓矢を扱う相手との近接で、しかも1対1の勝負だと言うのに時間がかかりすぎている。
あいつならその自慢の盾で身を隠しながら突撃を行い斬りつければ、それで終わりのはず。
そう言えば以前目が悪いとか言っていたがそれが関係しているのか?
……いや、あいつはストームの風すら防いだ男だ。
ではなぜ?
先導者から放たれる一本の光。
「なんだあれ?」
その光を見て、思わず声にしてしまった。
放たれた光は、パラディンが構える盾に吸い寄せられるように進んでいたかと思うと、その直前で大きく下へ曲がり、パラディンの足の甲に突き刺さったのだ。
一瞬足を止めるパラディン。しかしすぐ動いている事から、あの鉄の足具のおかげで傷は浅いようだ。
その時風切り音が近くでした。
振り返れば先ほどのシャルルが魔具で倒した賊が、携帯していた小型の弓を使いシャルルに向けて矢を放ったのだ。
逡巡したのち手をシャルルへ伸ばし突き飛ばす、すると腕に痛みが走った。
矢が腕に刺さったのだ。
「シグ!」
シャルルの悲痛な叫びが聞こえる。
「シャルルのせいではない」
足に風を纏い開放する。
そして一閃。斬撃面で斬り飛ばした賊の首が地面に落ちた。
駆け寄ってきたシャルルは矢が突き刺さった腕を見てオロオロとしていたので、矢尻を折ったあと引き抜き「大丈夫だ」と声をかけた。
薬草と包帯を取り出したシャルルは、傷口を消毒して止血してくれる。
シグナは治療を受けながら辺りの気配を探るが、もう伏兵はいないようだ。
包帯を巻いてくれるシャルルをよそにパラディンの方に目をやると、まだ戦闘が続いている。
「シャルルいくぞ!」
先にパラディンの方に走り出していたバレヘル連合の2人に続き、シグナ達も急いだ。
放たれる光の矢は、その全てが軌道を変えパラディンを襲っていった。
そしてやはり、あの曲がる矢は魔具で作り出しているようだ。それは見ているだけでも6本は放っており、これが魔法ならばそろそろ魔力容量の限界のはずだからである。
先導者はまた新たな光の矢をつがえる。
おそらくあの右手にしている厚手のグローブが形を短時間だけ保つ魔具なのであろうが、なぜあのように意のままに軌道が変化しているのかが分からない。
そしてあの先導者、よく見ると10~13ぐらいの子供のようだ。




