夜の広場
パラディンの後に続き大通りを西へ進むと、ちょっとした広場に出た。
暗くなってしばらく経っているため道ゆく人はまばらで、そのためそこに冒険者風の2人が立っているのが余計に目立っていた。
「隊長、そいつらが例の?」
「えぇ、シグナさんとシャルルさんです」
年は20半ばから後半あたりの金髪で無精髭があるシグナと同じくらいである長身の男と、年はカザンと同年代、30後半から40くらいの短髪を立てている男がこちらに目線を配っている。2人ともバレヘル連合のエンブレムをその鎧に刻みパラディンと同じく剣と盾を所持している。
「こちらはガオウさんにジリウスさんです」
ジリウスと呼ばれた中年の男は、腕を組んだまま手首だけを挙げ挨拶をする。
そしてガオウと呼ばれた男が、肩まで伸ばした金髪を揺らしシグナ達の前に歩み出てくる。
「お前が双頭の魔竜殺しなんだって? ずいぶんと若いな」
ガオウはシグナの前に立つと、腰に手を当て身を乗り出すような姿勢で、視線を上下させている。
「しかも相棒が女性の兵士とは、嬢ちゃんも優秀なんだな」
レギザイール軍はそのほとんどが男性である。王国戦弓隊という部隊を取り仕切るのは女性であるが、これは例外で昔から貴族の女性が就任する習わしのためである。またこの隊の半分も女性隊員であるが、この者達も家柄の良い者達である。
なので実質実力で軍の実働部隊に所属する女性は、第二師団の隊長職1人とユアン、そして警備兵から見事抜け出したシャルルの3名だけとなる。
「いやー、私なんてまだまだですよ、ねっシグ」
「あぁ、こいつはまだ戦場を経験した事のないヒヨッコなんで、みんなの足を引っ張らないよう俺が面倒をみます」
シャルルが何か言いたそうにしているが、無視。
「兄ちゃん男前だな、改めて俺はガオウ、よろしくな」
ガオウの突き出した拳に、シグナも軽く拳を当てた。
そこでパラディンが話し始める。
「そうそう、指揮系統が複数あると現場で混乱します。宿でシグナさんが言われていたように今回は私達の作戦にシグナさん達が同行する形にしますので、判断に困った時や、仮に意見が食い違った際には私の指示に従って下さい」
「わかった」
そして一行はホクイールの街を後にした。




