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パラディン話します

 宿屋の部屋には、ベットの他に壁へピタリと付ける形で置かれた四角い机と一脚の椅子が置かれている。

 シグナとシャルルはベットに腰をかけ、パラディンには向かい合う形で椅子に座ってもらっている。


「今このホクイールの西から北にかけての山沿い一帯を縄張りにしている盗賊達が、その縄張り争いを激化させている事はご存じですか?」

「あぁ」

「でしたらこの騒動を裏で焚きつけている者達がいるということは?」

「いや、初耳だ」

「私達バレヘル連合の今回の仕事は、その裏に潜む者達の捜査と、場合によってはその壊滅でして、そしてこの案件の依頼主はカザンさんになります」

「カザンが」

「はい」


 単純に人手が足りないのであろうが、話からするとカザンの実費で雇っているっぽいな。しかしなんでまたバレヘル連合なんだ?


「話によるとカザンさんとウチのギルマスは古くからの知り合いらしく、それでギルマスに直接依頼が入ったそうです。ただウチのギルマスは忙しい人ですぐに動けなかったため、ギルドマスター代理の私が依頼を受けることになりまして」


 水晶を取り出すパラディン。


「カザンさんとは毎日お昼すぎに定期連絡を行うようにしているのですが、そこであなた方の御名前が出て、前に利用したことのあるこの宿に来るだろうと聞きました。念のため他の宿にも同じように連絡するようには頼んでおきましたが」


 そういう事か。


「それでは今までの報告に移りますが、カザンさんが怪しき者を1人捉えています。ただ尋問する前にその者が自らの命を断っていまして、その者が死に際に『お前らもすぐにこちらにくる事になるだろう』と述べ、また持ち物の中から、三日月に貫かれたドクロの印が刻印された物が見つかっています。この事からこの者達が『月の魔竜教団』ではないかという可能性が高まっています」


 月の魔竜教団、詳しくは知らないが、人類を全て根絶やしにしてしまおうと言う思想を持つ、かなり危険な組織である。

 その組織の歴史は古く、レギザとイールがまだ別の国であった時から存在し、過去に何度か組織の壊滅作戦も行われているのだが、時が経てば新たな教祖を迎えまたよからぬ事を画策しだす、ゴキブリのような連中である。

 今は盗賊をターゲットにしているようだが、これがいつ善良な人々に切り替わるかは分からない。


「そしてつい先ほど盗賊団の動きを追っていたウチの隊員の1人から、怪しい建物の入り口を発見したとの連絡がありました。カザンさんとこの事について一度お話をしたかったのですが、今現在水晶の連絡が繋がらない状態でして、おそらく他の盗賊団に潜伏している真っ最中だと思われます。

 ただ相手は過去の事例からも何を仕出かすのか全く予想の出来ない連中です。私は早急に対処するのが得策と考え、ウチのメンバーだけでその建物に突入する事を決めました。この作戦に参加しているウチのメンバーは、今そこに集結を始めているところです。

 そうそう、それとカザンさんから伝言があるのですが、連絡がつかない時の判断はシグナさんに一任するという事と、シャルルさんはそれに従うようにと言われていました。

 敵の拠点とおぼしき場所は、ここから4時間程進んだ山の中にあります。我々ももう出ないといけませんが、どうされますか?」


 カザン、任せてくれるのか。これは下手を出来ないな。

 そしてシャルルなんだが、今まで本当の意味での戦場を経験した事がないはずだ。

 シャルルも特務部隊に入隊した以上、いつかは命のやりとりをしないといけない場面に出くわすだろう。いきなり訓練された他国の兵士達や魔竜と戦うよりは、盗賊や秘密結社のほうがまだ安全である。

 ただし何が起こるのか分からないのが戦場である。

 だからこそ、連れて行くからには彼女の命だけは、何がなんでもシグナが守りきる。


「俺達もその作戦に同行させて貰おう、シャルルもそれでいいな」


 シャルルはいつもの調子ではなく、少し緊張した面持ちで「はい」と返事をした。

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