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まさかの拍手

 翌日の朝、とりあえずカザンとの約束の町、ホクイールへ旅立つ事にしたシグナ達は、各々の部屋で出発の準備を進める。


 そして全ての支度が終わり、部屋を出ようとして心臓が止まりそうになった。


「よっシ~グナ」


 いつから見ていた?

 昨晩と同じように扉の隙間から覗いていたミケは、明るい調子で部屋に入ってくる。

 と言うか、完全に驚かそうとしてやっているだろ。


「やっぱりね~、私もホクイールに行く事にするよ」

「お金届けに戻らなくていいのか?」

「前々からのお得意さんだから、代金は前払いして貰ってたんだよね~、その代わり結構まけてるらしいんだけど」

「そしたらパラディン達と合流するのか?」

「いや、私の本業は旅人だよ。1人旅を再開するためにも一度大きな街道に出ようかな~とね」


 レギザイール国内において、町の中には拠点となる大きな街が各地に存在する。

 その街の名前には必ず最後にイールが付き、そのイールの街の周辺にはいくつかの小さな町が作られている。

 また大きな街と街の間には大きな街道が走っており、人通りも多く日中の移動なら女性が1人でいても危険がないくらい治安は良い。

 ちなみにこのホクの町はいくつかの町の1つであり、ここで取られた獣や山の幸を大きな街に運び生計を成り立たせている。


「がぷっ」


 シャルルのタックルを背後から受けたミケが声をあげた。


「ねえねえ、なんの話? 私も混ぜくり回して」


 支度が終わったシャルルが勢いよく乱入して来た。

 ミケはと言うと、腰の辺りを押さえ四つん這いになっている。


「しゃるる~ん」

「ミケさん、あなたは近い将来私の生涯を通しての大きな障害となる気がするのです」

「なるほど、それでこの私に傷害を負わせたと? 小娘の分際で。いいわ、いまからその明るい未来をぶっ潰してあげるわ」


 ゆっくりと立ち上がったミケは力比べをしようと、これまたゆっくりシャルルに向かい両手を伸ばしていく。

 それに応えるようシャルルも両手を伸ばし……ってゆうか、脱線しすぎ。


「しょうがんい奴らだ、先に行ってチェックアウトしておくぞ」


 2人は動きを止め、こちらに振り向く。


「いや~ないんじゃないかな? もしかして『しょうがい』に被せてきてないよね?」

「ミケさん、彼は彼なりに頑張ったのだと思います。……いや、もしかしたら」

「どうしたのしゃるるん!?」

「彼はこうなる惨事を見越して私たちの争いを止める、高等テクニックを使ったのではと?」

「そんな馬鹿な、馬鹿なシグナが馬鹿な!」

「とりあえず彼を褒めて、うぅっ、褒めてあげましょう」


 部屋に暖かい拍手が鳴り響いた。

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