言葉遊び
次の日の昼、稽古が終わった足でその占いのお店を探して東地区の大通りを歩いていた。相変わらず人混みが凄い。
「こっちかな?」
シャルルに手を引かれ、大通りと並走して走る小道へ入る。
こちらの道は大通りに比べれば人は少ないが、道が狭い分人の密集度が変わらなかったりする。またこちらも様々なお店が並び、活気に満ち溢れている。
「あっ、ここだ」
シャルルの視線の先には、店内に入りきれない女性が5.6人並んでいるお店があった。シグナ達もその列の最後尾に加わる。そして数分後には店内に入っていた。
中は薄暗く天井から濃い紫色のレースが垂れ下がっており、同色系の絨毯が引き詰められている。
全体的にけばけばしい印象だ。
部屋はそこまで広くなく、向って左側に並べられた椅子には順番待ちをしている人で一杯である。
よく見ると買い物袋を膝に置いている人や、若い子同士、そして魔法学院の制服を着た人や貴族風の身なりの良い者もいて、しかもとにかくその全てが女性である。
これって、なんか浮いてしまっているな。
回転率は良いようで、椅子を座っては立ち座っては立ちを繰り返し、サクサクと店内の奥へと進んで行く。
「それじゃ、先に占ってもらうね」
そういえば何を占ってもらうか決めてなかったな。
さて、何にしようか?
そうこうしていると、あっという間にシグナの番になった。
黒いカーテンをめくって入ると、口元をレースで隠したいかにも占い師といった格好をしている黒ずくめの女性が座っていた。
テーブルの上には、ここにお金を入れて下さいと言う札が立て掛けられており、「三千Gになります」と言われたので、お金を支払いその女性と向って座る。それから言われるままに名前と生年月日を書きそれを手渡した。
そして水晶に手をかざすように言われたのでかざしてみると、水晶が微弱に点滅するように発光しだす。
占い師はシグナの上から水晶に手をかざし、もう片方の手でおもむろにペンを走らせるとその紙をシグナに渡した。
「これで終わりです」
「えっ、まだ何を占って貰うのか言ってないのですが」
「ウチは恋愛専門なので」
「はぁ、そうですか」
「こちらが出口となっております」
「どうも」
そこから出ると、薄暗い店内でシャルルが待っていた。
「簡単だったでしょ、それじゃ外に行ってから見よう」
ふー、太陽が眩しい。
さっそく手渡された紙を見てみる。
あれっ、これ書いている事が意味不明なんですけど。
『さとりおさいいもなをびれつ』
と書かれていた。
「これ、文字がバラバラになっているから自分で組み替えないといけないの」
「うわ、マジで面倒くさい」
女の子はよくこんな事をするな。
因みにシグナだけなのではとシャルルのも確認させて貰ったが、
『あいもまらばびおわてとる』
とこちらも意味不明であった。
「ちょっとそこのカフェでゆっくりしないかい?」
シグナはシャルルに誘われるまま、カフェの丸テーブルに対面に座る。
そこでなんて書かれているのかを必死になって紙と睨めっこするが、分からない。
「なんかコツとかないのか?」
「聞くところによると、お決まりの言葉がいくつかあるらしいから、まずはそれを探すところからはじめてみては? 縁、思い人、吉、現る、根気強く、ぐらいかな?」
「頑張ってみる」
それから1人悩んでいると、シャルルが隣に椅子を持ってくる。
「どれどれ、なんて書いているのか私も手伝ってあげようか?」
「おお、助かる」
ペンを取り出すシャルル。
さすが、用意がいい。
シグナの紙に書かれた文字をそのまま自身の紙に書き写す。
それからシャルルも一緒になって考えてくれたが、結局「分からないや」と途中でサジを投げられてしまった。
それから2人は軽めの昼食を取りながら、自分の占い結果がなんと書かれているのかをまた考えた。
そして気がつけば、シャルルはどこか元気がなくなってしまっていた。
何かあったのかな?
その後はいつものように別れると、シグナは突風系高等魔法を使いこなすための修行に入った。




