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あしたの約束

 まぐまぐリガーシュルから出た2人は宿に向かって路地を進んでいた。


「しかしなんで零れの魔具を他に2つも買ったんだ? 予算オーバーもだけど、魔力容量もオーバーするんじゃないのか? お金がない中予備を買ったわけじゃないんだろ?」

「へっへー、実はさ、あの空中に浮かす魔具、落下させている時はもちろん動かし始めた時や方向転換する時以外も魔力の節約が出来るんだよね。だから同時に3つまでなら動かせそうなんだ」

「本当か!?」


 親指を立てるシャルル。


「ちゃんと他のお店で確認したから。それと仮に今はダメだったとしても、使い続けていけば魔力総量が増えて疲れにくくなるはずだし」


 魔力を消費する量が同じでも、個人によって疲れやすさに違いが出る。ただし魔力容量分を全て使い切れば人は等しく疲れが溜まる。

 つまり魔力を消費した時の疲れとは、自身の魔力容量が大きければ大きいだけ、魔力を消費したときの疲れが軽減されていく、魔法で何割消費したのかが関係しているのだ。


「それじゃ、ここまでだな」

「うん、先に帰ってるね」


 これから夕方までは、1人で修行を行っている。

 胸元の魔宝石は、現在風を封じ込めた状態になっているが、おそらく使用するにあたって魔力消費は必要ない。しかし威力が凄すぎて使えない代物である。

 ただあの早さを体感してしまったため詠唱有りの風の魔法、突風系高等魔法エアイスカウォールもなんとかできるのではと考えるようになったのが、この修行の始まりだ。


 レギザイール軍の敷地内に戻ったシグナは、建物の上によじ登りロープを引っ掛けると自身の腰にも縛り付ける。

 そして深呼吸ののち、そこから飛び降りた。

 壁を蹴るようにしながら下へ落ちて行く。そして地面に近づいてきたあたりで壁を蹴り方向を変えて行くが曲がりきれずに地面すれすれまで来たところでロープがピンと張り止まった。

 やはり上手く方向転換するには魔力が満ちた状態でも難しい。ならば魔具を解放してみるか。

 それから何度か先ほどの飛び降りる訓練で魔具を消費して体感に慣れてきたところで、ロープを外し地面で魔法を使った高速移動の本番へ移る。

 意を決して突風系高等魔法を唱え、シグナは地面を疾走する。

 それから休憩を交えながら何度も練習をしていると、日が暮れる頃には砂ぼこりで頭が真っ白になっていた。

 まだまだだが、なんとかなりそうなレベルにはなってきている。

 そして最終的にはこの魔宝石の風を、自分の物に出来ればいいのだが。


 宿に着いた時には完全に日が沈んでいた。

 シグナは自室に戻ろうと階段を登り二階に辿り着くと、シャルルが部屋の前で待っているのに気付く。

 シャルルは特務部隊に入隊したあの日、荷物を整理し実家からこのシグナが泊まる宿へとやってきていた。


「お疲れさまー」


 シグナの姿を見たシャルルはクスクス笑っている。


「療養どころか、日に日に傷が増えてるね」

「どうせ俺は抜けているからな」

「ふむふむ、私の狂言が浸透しているようだな」

「抜けてるって言ったの狂言だったの?」

「それは神のみぞ知る、To be continued」

「はやく続きが知りたい」

「それよりさー、最近東地区にある占い屋さんが良く当たるらしいんだけど知ってる?」

「いや、あんま興味ないし」

「えー、そこは食いついてくれないと話を振った私の立場がないよ」

「それもそうだ」

「んで私も乙女じゃない? 明日いってみたいかなーと」

「あぁ付き合ってもいいよ」

「本当! それじゃお昼のあととかどうかな?」

「それでかまわないよ」

「ありがと、じゃ、明日ね」


 シャルルがハイタッチの構えをとるので手を上げる。

 廊下にパチンッと音が鳴り、シャルルはシグナの隣の部屋へと戻っていった。

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