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月下の悪魔

 レギザイールの城下町に着く頃には、陽は完全に沈んでいた。

 シグナ達は無事を知らせるため、最寄りの警備兵詰め所よりも近くにあるという事で、バレヘル連合本部を目指し南地区を進んでいた。

 その道すがら、建物が地面に沈んでいる場所を目の当たりにする。位置的には地下での戦闘と被るため、言わずもがなストームの魔宝石の影響だ。

 陥没はかなりの規模で起こっているようで、ざっと見て2フロア分、中には倒壊している建物も数多くある。

 そして人の手が加わったようで、倒壊した建物の一部は解体され瓦礫が道に寄せて山積みにされ置かれている。


「おい、あれってそうだろ? 」

「お~、本部まで行く手間が省けたね」


 指差した先の倒壊している建物の影から、暗闇でもわかる黄色の鎧が見え隠れしていた。

 ミケが「隊長~」とそこに向かって叫び手を振ると、パラディンもこちらに気付いたようだ。


「ミケさん、それとシグナさん、お2人共無事でしたか」

「すみません、心配かけました」

「いえいえ、無事で何よりです。そうですシグナさん、シャルルさんならまだ一人残って作業されていると思いますので、案内しますよ」


 月明かりの中、よじ登って来たパラディンに連れられ、陥没した地域を避け回り込む形で反対側まで歩いていく。こちらも結構倒壊している建物があるな。

 そして先頭を行くパラディンが、兜だけをこちらに向け語り始める。


「シャルルさん、昨日の晩から寝ずに地下への入口を探していましたので、シグナさんが無事だと知ったらきっと喜ぶと思いますよ」


 夜通し作業!? シグナが不甲斐ないばっかりに、シャルルには悪い事をしてしまった。

 そしてパラディンが立ち止まると、突然倒壊している建物群に向かってシャルルの名前を何度か叫んだ。

 すると暗闇の中、一つの影がひょっこり頭を現す。


 その影はこちらに気がつくと、黄金の髪の毛を風になびかせながらこちらに駆け寄る。そしてシグナの前で立ち止まった。

 色々と言う事が多くて何を話そうか迷いそうになったが、埃まみれのシャルルを見て自然と口が動いた。


「……ただいま」

「もー待ちくたびれたよ」


 シャルルはいつもと変わらない表情をしているが、その瞳からは自然と涙が零れ落ちる。

 それに気付いたシャルルは、「あれあれ、可笑しいなー」と涙を拭うが、涙は止まらない。


「心配かけてごめん」

「……ほんとだよ」


 シグナのお腹にふざけてボディーブローを入れるシャルルを、優しく包み込むように抱きしめる。

 シャルルは頭を預けてくると、そっと抱きしめ返した。


 強くなんかない、シャルルも頑張っていたんだ。

 その時、突然ミケが上空を見上げた!


「隊長、あれ! 」

「……あれは、皆さん月の辺りに何かが! 」


 ミケとパラディンの声につられ夜空を見上げると、暗雲の中、何かが!

 そして満月が姿を現した時、シグナ達がストームと呼んでいた人間が月光を背に、蝙蝠のようなギザギザの翼を背中に生やし、まるで物語に出てくる悪魔のような姿で悠然と羽ばたいていた。

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