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逃亡者

 燭台を攻撃された事により、背後から迫る闇がシグナ達を通り越して、今消えようとするその松明に群がっていく。

 炎があと少しで完全に消えてしまう!


「任せて! 」


 振り返れば既に矢尻へ炎が灯されており、暗闇の中に弓矢を構えるミケの姿が浮かび上がっていた。

 そしてミケから放たれた炎の矢は、別の燭台に取り付けられた松明に明かりを灯し、その後も矢継ぎ早に続けて矢が放たれていく。


 ストームはその場で呆気にとられたのか、次々と松明に炎が点いていくのをただじっと見つめていた。

 そして全ての松明により、地下闘技場が照らし出され完全な闇は消え去った。その暖かな光は、土壁だけではなく闘技場のあちらこちらに横たわる死体や人を引きずったような血の跡が残る、惨憺な光景を目に飛び込ませた。


 呻き声を吐き出しながら、改めてこちらに歩み始めるストーム。

 揺れる炎にストームの影も揺らめく。


 ストームのあの一回り大きい腕から、繰り出される剣の威力がどれほどのものなのか分からない。また解除魔法の件もある。

 シグナは今はまだ攻撃に魔具は使用せずに、緊急回避用に使う事を頭の中で確認。

 まずは力比べといくか!


 同時であった。

 シグナとストームが駆け出したのは。

 そして二つの影が重なり合う。振り上げたシグナの殴打面と、振り下ろされたストームの剣が真っ向から衝突、互いの剣が反発したかのように弾き合った。

 その威力にビリビリと手が痺れる。

 再度同じように構え振り下ろされるストームの剣撃。

 握り直したシグナは殴打面を横に構えこれを受け止めるが、力負けして思わず片膝をついてしまう。

 三たび、振り上げられるストームの剣。


 一度後退するか!


 その時、シグナの隣に風が吹いた! ユアンだ! 割り込むようにしてシグナの前に入ったユアンは、シグナに向け振り下ろされた攻撃を受け止めると、一歩踏み込み体当たりを食らわす!

 よたよたと後退するストーム。

 ユアンは見事な足運びでその懐に飛び込むと、低い体勢で自身の剣を引き寄せ、そこから強烈な突きを獲物に向けて繰り出した!

 ストームはこれを剣で払おうとするが、軌道が少しずれただけで進む先にはまだストームの体がある。そしてユアンの剣がストームの右横腹を貫いた。

 声を上げるストームは、腹に刺さっているユアンの剣を右手で握ると、前蹴りでユアンの腹を蹴り上げた。

 そこはたしか、今朝のシャルルとの決闘で剣を受けた箇所。

 蹴りの威力でユアンの体は宙を舞い、後方の地面へ背中から落ちた。


 攻めに転じるなら今だ。

 風を使う事により攻撃の威力を上げるシグナの必殺剣を使う!

 足に纏った風を地を踏み締めると同時に解放させ、その力を魔竜長剣に乗せ殴打面で振り上げる。

 ストームは剣で防ごうとするが、その衝突の威力に耐え切れずにその部分から奴の剣が折れる。

 そしてシグナはそこから一歩踏み込み魔竜長剣を斬撃面に持ち替えると鋭く振る!

 咄嗟に後方に飛んでいたストームであったが、魔竜長剣がストームの左手首を捉え切り飛ばす。

 ストームは雄叫びを上げながら腹に刺さったままであったユアンの剣を引き抜くと、それを手にして後退、そして逃走を始めた。


 逃がすか!

 ストームの姿を見失わないよう、シグナも駆ける!

 その時、背中からミケの叫び声が聞こえた気がしたが、構わずストームの後へと続く。

 来た道とは別の、奥へと続く細く暗い、後悔へと続く漆黒の道へと。

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