魔法の分類
ストームは風の魔法を扱う。
しかもパラディン曰く呪文の詠唱をしていたようには見えなかったそうだ。
と言う事は魔具か?
ただ魔具で突風を起こす攻撃を行ったとしても、パラディンを吹き飛ばす程の威力は到底生まれない。
それと、今朝の遺体は壁にめり込んでいた。
仮に風の魔法でそこまでの威力があるとするならば、おそらくパラディンも無傷ではすまなかっただろう。つまり朝の遺体が受けた攻撃と先ほどパラディンが受けたという魔法の風は、全くの別物であるということだ。
しかしパラディンが受けたと言う風の正体が魔具の可能性だとすると矛盾点もある。シグナが使用している魔具も突風系魔法の最上位版。それを使っていたとしてもパラディンを吹き飛ばせたりは出来ない。
パラディンが嘘をついているとまでは言わない。しかし勘違いと言うことは誰しもある事だ。
ただ話が全て真実であった場合で考えていくと1つ、解除魔法というキーワードが頭に浮かんで来た。
今では廃れた、カザンから聞いた事があるだけの魔法。
魔法は大きく分けると4つに分類される。
1つ目は一般的にただ『魔法』と呼ばれる物。
攻撃魔法と防御魔法、そして補助魔法は全てこれに含まれる。
他の3つもそうだが、発動には呪文の詠唱とその詠唱に使われる単語の一つ一つを頭の中で順にイメージしなければならなく、魔力も消費する。
2つ目は回復魔法。
これは1つ目の魔法を発動させる条件に加えて、相手を慈しむ気持ちが必要不可欠であり負の感情が少しでも混じると発動しない。
そのため戦闘中にそのような心境に至れる者は、戦いに参加していない聖職者ぐらいである。
3つ目は、召喚魔法。
これも滅多にお目にする事が無いが、ゲートを開く為の呪文の詠唱とイメージは勿論、わざわざ力を貸してくれる契約した生物の存在が絶対であり、またその契約した生物の気分が乗らなかったら発動しても来てくれない事もある。
成功するとその物の魔力体を呼び寄せることになるが、召喚した物の魔力総量が少ないと実体化が出来ず霧散してしまう。
そして最後が解除魔法。
これは発動出来る状態になった魔法に封印を施しておいて、使いたい時に解除して発動する魔法である。
利点は魔具より簡単かつ素早く詠唱有りの魔法が使える事である。
ただそれ以上に封印するには各魔法毎に封をする呪文を開発しないといけない事、解除するまで生命力を吸い上げられ続ける事、魔法で肉体に封をしているところに攻撃を受けると暴発の恐れがあると言う事、と悪い点が多く運用が難しい。
現在では廃れた魔法と言っても良いのがこの解除魔法である。
しかしストームが解除魔法を使用するのなら厄介だ。解除魔法使いは、命を捨てた相打ち覚悟の相手と同じくらい、危険で相手にしたくない存在である。
それとあの異質な腕、あれは何だったのだろう? ストームはまだまだ不明な点が多すぎる剣呑な相手である。
皆にも十分に気をつける事を伝えておかないといけないな。




