ストーム対策部隊
「なんか笑ったら、死ぬ程腹が減ってきたー」
シャルルは店員をつかまえると、一度にドサっと料理を注文する。
そして運ばれてきた料理を片っ端から大きく開けた口に詰め込んでいくとガツガツと口を動かし、シャッフルし終わるとゴクリと大きな音をたてて飲み込んでいった。
なんか見ていて面白い。
「シグもたへふ? 」
「俺はいいよ、てゆうか喉つまらせるぞ」
ん?
そこでガシャガシャと金属の摩擦音を立てながら人がこちらに近づいて来ている事に気づく。
音の方に目をやると、そこには頭のてっぺんからつま先までを頑丈そうな鎧に身を包む、どこからどう見ても騎士と言う格好をした男が立っていた。
しかも頭をすっぽりと被るタイプの兜のため、顔は全く見えない。しかも腰に取り付けている剣の柄や盾どころか、その装備品の全てが黄色と言うことで、どこにいても目立つ事間違いなしの格好だ。
もしかしてこの男がーー。
「シャルルさん、早いですね」
ストーム対策部隊の一員のようです。
「パラディンさんこそ、きっちり集合時間10分前に来るあたり、流石ですふぇ」
「いえいえ、遅刻するわけにはいきませんので」
「食へまふ? 」
「いえー、結構です」
ふー、ため息が出そうになる。
このパラディンと言う男、レギザイール王都だとカザンと同じくらいの知名度を持つのだが、それは良い意味でではない。
そう、真逆の稀有な目で見られているのだ。
しかしよりによってこんな色物が仲間だとは、シャルル大丈夫か?
「シャルルさん、こちらの方は? 」
「そうとうのトラコンハスター、シクよ」
「おーい、人の名前ぐらいしっかり言え!」
「すまん、シグシグ」
わざとらしく片手で小さく敬礼をしながらお辞儀をするシャルル。
そしてよっぽどお腹がすいているのか、すぐさま口に食べ物を詰め込む作業を再開する。
「あなたが双頭のドラゴンバスターさんでしたか、ご活躍は私も耳にしています」
「あぁ」
「初めまして、私はバレヘル連合のパラディンと申します」
握手を求められたので、取り合えずこちらも手を差し出す。
そしてこいつが所属している傭兵ギルドがまた癖のあるところだったりする。
ギルド長が金に汚いオバさん魔道士で、十年前の戦争時に当時出来たばかりだったギルドを急成長させ、今や国内で最大規模の傭兵ギルドへと育て上げている。
まぁそれでも50人くらいとレギザイール軍、1部隊の半分ではあるが。
「あれ、他のファレヘルの人達は? 」
「すみません、急な仕事が入って先程街を出発したところなんですよ。ただミケさんだけは昨日に引き続き参加されますので」
「そうらったんれすね」
ん? それでお仲間のミケとやらは何処にいるんだ?
シグナの視線に気付いたか、パラディンは説明を始める。
「ミケさんは実家のお手伝いで少し遅くなると連絡がありました。既に打ち合わせは終わらせておりますので、仮にこの場に間に合わなくても現場で合流する予定になっています」
「シグシグ残念らったね」
何が残念なんだよ?
それよりいい加減口に物を入れたままの会話を聞くのも少しイライラしてきた。シャルルのことだ、絶対途中から面白がってわざと変に話している気もするし。
「それよりシャルル、もしかして仲間はこの人だけなのか? 」
「あともう二人いるんらけと、この人達も忙しいみたいれ来たり来なかったりなんらよね」
まあ考えて見たら手配書が出ていない状態で人が集まった方が奇跡なのかもしれない。
お腹いっぱいになったようで、ぷは~と息を吐きながら伸びをするシャルル。
とそこで、新たにこちらへと歩み来る赤髪の者を目の端で捉える。やはり来たか。
「シャルル、探したぞ」
「おっ、ユアンの姉御じゃないですか。もしかして助っ人って奴ですか? 」
「姉御? まあいい、正式に私も捜査することになったからな。それで、なんだ。……手伝ってあげても良いぞ」
「やったー、姉御がいたら百人力ですぜ」
ユアン、そこで完全否定しておかないと、これからずっと姉御と呼ばれるぞ。と言うかユアンの奴、こちらを一度も見ようとしないな。
……あれっ、なんか胃が痛くなってきた。
「そうだシグナ、お前を連行する件はなぜか取りやめになったぞ」
「えっ何でだ? 」
「何故かと言っただろうが、私が知ったことか! 」
相変わらず俺に対しては特別冷たい気がします。
しかしなんでまた取り下げになったんだ? そう言えばこの件、地下牢にいたエクセルサに話した気がするが、まさかな。




