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私は考える ★

久々にイラスト有りです♪♪



 ◆ ◆ ◆



 わたしは今、レギザイールの城下町を駆けている。いつぶりだろうか?


 市街地戦を意識した今回の演習を行なう最中、街の空気がガラリと変わった。そして風に乗り聞こえ出す怒号と金属音。

 最初は実戦さながらの訓練が行われているのかと思っていたけど、いくら待っても合流予定の他のメンバーや別隊の姿がない。

 流れる不穏な空気。

 ウチのメンバーは若い隊員が多いが、戦争は勿論、実戦を経験した事のない者が殆どのため、皆浮き足立っているようにも感じられた。


 実戦と言えば今回の演習、レギザイールが他国に攻め入る準備をしているのではと言う、不安の声も多く聞く。

 しかも魔竜灼熱赤竜(レッドティアーズ)により多くの兵士を失った軍が、重度以外の犯罪者を兵士として登庸し、新たに第五師団として設立したのもその噂を助長している。

 またその第五師団、功績を残した者は早期の出所にあたる除隊、または軍にそのまま残れ出世も可能と言う話で隊員の士気は今の所高いらしいが、所詮もとは有象無象のやからの集団である。組織として機能するのか、戦力として考えていいのか? あまり期待していては彼らにとっても酷であろう。


 そしてその巨大な組織であるレギザイール軍は、大きな組織であるがために個人の意思が反映されにくい。

 上官の指示が無ければ動けない、と言う奴だ。

 直属の上官の戦線離脱や、一時的に指揮を委任された際は別だが、生憎この第二師団十番隊に四人いる隊長補佐の一人である私には、それらが当てはまっていないため部下に命令を下して動かす権限がない。


 そのためだいぶ前にユアン隊長に伝令を送っているのだが、トラブルに巻き込まれたのかいくら待っても戻ってこない。


 そこで私は決断する。

 私が全責任を持ってこの部隊の指揮をとると。


 出世に取り憑かれていた時期もあった。しかし今の私は違う。それでも軍に居続けるのは、何かに没頭していなければ現実に耐えられないから。自身の精神を保つために、それを傷つけるかのようにして行動をしてきた。

 そして今、この場で何もせずに待つことは、わたしの心が不安定になり、何かの拍子で壊れてしまう気がしてならないから。

 自身の損得を顧みずに行動をするのではなく、自身の損得のための行動であるのだ。


 そうして私の指揮のもと、四分隊の一つである総勢25名は、賊がいるであろう音がする方へと向け、狭い路地裏を駆けている。


 聞こえる音が段々と大きくなってきた。

 そして月明かりの下、通路を抜けた広場の中央部に賊らしき者の姿を捉え、一瞬声を失い脚を止めてしまう。


 なんなのあの姿?

 レギザイール軍と交戦中であった賊、ドワーフは一人であった。しかし驚いたのはそちらではなかった。防具として黒のブーメランパンツとヤカン兜(ケトルハット)のみしか身につけていない、ほぼ裸の状態。そう、噂のケトルマンスタイルであったのだ。

 ふざけているとしか思えない格好ではあるが、地面にうずくまる隊員の数は数知れず。

 そしてドワーフは、私の手首程の太さで身の丈以上もある鉄の棒を、見るものを虜にしそうな程巧みに扱っている。

 只者ではない。


 私は特注品である、魔具を手の甲に組み込んである右手のグローブに魔力を注ぎ込む。そうして球状である零れの魔具五つを全て起動、コートから飛び出したそれらの黒球が宙に浮かんだ。

 それを確認した隊員達が、各々腰にぶら下げている獲物を手にする。


挿絵(By みてみん)


「これより第二師団十番隊第三分隊は、あのいかれたドワーフの捕縛を行う! 生死は問わない。皆の者、私に続けー! 」


 私の口上に続き、隊員たちが自身を鼓舞させるかのように『おおぉう! 』と叫び声を上げ、夜の城下町を芯から震わせた。

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