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結成、チームケトル!

 暗い一室で静かに沸き立つメンバーの中、メグミさんが自身の足元から布袋と紙の束を持ち上げます。


「パラディン、んじゃこれとこれをみんなに配って」

「わかりました」


 メグミさんから受け取った大きな布袋と紙を手に、皆さんのほうへと順に赴きます。

 そうして袋の中に入っていた、通常の半分以下である新型の小型水晶を取り出すと、地区ごとに番号が振られた城下町の地図と共に皆さんへ配って行きます。


「作戦開始は5時間後の22時。作戦総指揮を取るのは、ジンとパラディンと行動を共にする私よ。みんなには時間になったら適当に暴れてもらうわけなんだけど、ドルフィーネを見つけた場合は水晶で連絡してね。私に繋がるようになってるから。あとやばそうと感じたら各々の判断で途中離脱の判断も任せるわ。そして私達三人は、敵が混乱した隙にドルフィーネを連れ去る手はずなんだけど、成功した時と失敗した時、共に合図として特大の花火を打ち上げるから、一緒に離脱したい人はこの場所に集合。転送陣で隣町に飛ぶから。また一時間経っても合図がない場合は、自力で離脱してね。まっ、兎に角何かあれば私に連絡。あとこちらからも水晶で連絡するかもしれないから、気付けるようにはしておいてね」


 メグミさん、相変わらずですね。凄い勢いで一気に説明を終わらせてしまいました。

 しかしキョウゴさんが気になります。たしかに水晶が光り輝く時、僅かでありますが熱を帯びます。そのため人肌に触れさせておけば、大抵気付く事が出来るのですが……。


 やはり、パンツの中に水晶を入れるのはどうかと思います。しかもお尻のほうに水晶があるはずなのに、パンツに膨らみが見られません。

 気になります。


「そうそうジン、皆の呼び名を決めておきましょう。さすがに本名じゃリスクが高すぎるわ」

「それもそうだな」


 そこで「はいはい」とキョウゴさんが太くて長い巨大な腕を振り上げます。


「ジンはケトオで私はケトコ。二人はケトキュア! やだ、なにこれ? 即興でキュアって付けたんだけど、めっちゃ可愛くない? 」


 胸のあたりで腕を縮こまらせ、身体をくねくねと揺らすキョウゴさん。


「ケトオ! ……響きがイーな」


 ジンさんは噛みしめるように、息と共に言葉を吐き出しました。

 うーむ、変な呼び名ではありますが、二人が気に入っているのでしたら、とかく他人がどうこう言う必要はないでしょう。


「ふぅ~ん」


 不意に隣のメグミさんが唸りました。そしてーー。


「ケトオよりマリオのほうが良くない? うん、ジンはマリオね」

「ぬぬっ」


 ウチのギルマスは一度言い出したら人の言う事を聞きません。ジンさんもその事を知っているようで、唸り声を漏らし顔を引きつらせています。

 そんな中、視界の端に映るレジェンドさんが、一人落ち着きなくソワソワとしています。すると唐突にメグミさんの前まで来ました。


「ワシはなんでも構わん、勝手に決めといてくれんか」


 言いながら背中を向け出口のほうへと歩き始めます。

 どちらへ?


「せっかちさんね、もうレジェンドはコードネーム『せっかち』で決定ね」

「よしわかった! 」


 足を止め首だけで振り返りそう言うと、また出入り口の方へ早足で歩き始めます。

 もしかして、退出するつもりですか?


 そこで一陣の風が流れました。

 見ればジンさんが何かを猛烈なスピードで投げたようであります。しかもレジェンドさんに向かって。

 そしてレジェンドさんの方を見れば、その投げられた物をビシッと立てた人差し指と中指の二本の腹により、顔面手前で止められていました。

 なんと、あれを音もなく受け止められるとは! もしかしたらレジェンドさんも私と同じように『第三の瞳』、しかもかなり正確に扱えるのかもしれません。


 レジェンドさんが静止させていた物をガッと握りこむと、手首を返しその物をジッと確認します。

 そう、投げつけられたのはヤカン兜(ケトルハット)です。


「それはせんべつだ、うけとれい」


 不敵な表情で笑うマリオさんの言葉を受け、セッカチさんが僅かにニヤリと口の形を変えました。そしてーー。


「おつかれ! 」


 そう言うと、扉を開け一人退出をしてしまいました。

 まだ皆さんの呼び名は決まっていないのですが……、レジェンドさんは凄いマイペースな方であるようです。


「それじゃ俺は、ケトルSGグドウと呼んでくれ」


 グドウさんです。燻し銀の声を発しました。


「なにそれ却下却下! センスの欠片もないじゃない。しかも長いうえにしっかり名前が入っちゃってるし。ドワちゃんはもう、コードネーム『キャッカ』ね。ほらっ皆もさっさ決める」


 グドウさんが、肩を落としました。しかしどこか、決めポーズのように様にはなっています。


「それとあんた達はどうせ本名じゃないんでしょ? ラパンキーとキタッチはそのままね」


 ラパンキーさんは苦笑い、キタッチさんはキョトンとしています。


「私は天才魔道士でも元祖美少女魔道士でも好きなほうで呼んで! あとパラディンはイエローね」


 メグミさん、普通コードネームは一つじゃないのですか? しかも調べればメグミさんだと特定出来そうなネーミングですし。

 あと私はゴールドではないのですね。メグミさんには黄色に見えていたのですね。


 そこで奥の物陰から、ズズズッと音が響いてきました。ジンさんが大きな麻袋を地面に引きずる形で持ってきていました。


「それでだ、実はみんなにお土産があるのだ」


 そう言うと、麻袋に入っていた物を豪快に床へとぶちまけました。

 ガランゴロンと暗い部屋に音が鳴り響きます。

 あと荒いです。


「正体を隠すためにも今回これを被ってもらうわけなんだが、どれでもいい、好きなのを選んでくれ」


 これはーー。


「キャー可愛い!もちろん、私はジンとお揃いのこのケトル」


 そう、レジェンドさんに投げつけた物と同じ、ヤカン兜(ケトルハット)が床に転がっています。しかも一個一個が別々の色に染め上げられたヤカン兜(ケトルハット)です。

 各人思い思いに兜を拾い上げていきます。私は一応イエローと言う呼び名ですので、黄色に染め上げられたヤカン兜(ケトルハット)を選び取ります。


「みんなに行き届いたわね。ーージン」

「ああ」


 メグミさんの言葉を受け、ジンさんが歩み出ます。

 そしてーー。


「ウォッホォン、私は本日ここに、チームケトルの結成を宣言する! 」


 そうして作戦決行時間となり、それぞれの思惑がレギザイールの城下町で錯綜します。

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