【プロローグ】星の魔法石
それは時の狭間の物語。
その星には慈悲の心を有する聖者がいた。
しかしその者が救いの手を差し伸べたがため、世界は嫉妬と愛情と憎悪が渦巻きこの世に『星の魔法石』が産み落とされた。
争いは帰結を迎えたが、大地は長い間陽光を遮られてしまっていたために枯れ果て、生きる者達もただ命を枯らし続ける、死の世界へとすり替わっていた。
そんな黒雲が覆う空に一つの星が煌めく。
その眩い星は瞬きをした瞬間、空を埋め尽くす星々の海へと変わり太陽の代わりに地上を照らし始めた。その光景は、さながら暗闇に照らし出された琥珀のような幻想的な空。
人々はその美しさ、神々しさに言葉を失う。
そして突如、揺らめく星々は流星のように大地へと降り注ぎ始めた。不思議な事にその流星に暖かさを感じたこの世界に住まう全ての生命体達は、降り注ぐ星の欠片をその身で受け止めていく。
そしてその日を境に、この星の生命体達は魔法と呼ばれる力を身に宿すのであった。
それから多くの国が生まれては消えていく時の流れの中で、産声を上げてからその役目をただひたすらに果たし続ける『星の魔法石』。
しかし人の手へと渡ったそれは、いつしか訪れた者と知識を共有するようになり、放つ光で魔を封じるようにもなっていた。
そして人々が広大な大陸の半分、南側を全て統治するまでになった時代、『星の魔法石』は強力な軍隊を保有するレギザイール王国が手中に収めていた。