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勧善懲悪?

 どの街の役所も同じだが、入り口に扉はなく入ると受付待ち用の長椅子と、カウンター越しに窓口が設置されている。

 普通の町だと窓口は1つなのだが、人口の多いレギザイールの城下町だけあってカウンター越しには役所の人間が3人座っている。

 まあそれでも街の規模からすると少ないが。

 それと防犯のためにこちらとは手元しか繋がっておらず、相手の顔は見えるが鉄格子越しとなっている。受け付けの人間の後ろには机に向かって作業をしている人達の姿も見える。


 ではさっそく要件を伝えるか。

 唯一手配書関連も受け付ける一番奥の窓口へ足を運んだ。


「手配署の手続きに来たんですけど」


 シグナの言葉に、あからさまに嫌な表情へと変わる男。


「またストームとか言う正体不明な輩の件じゃないだろうな? 」


 なるほど、こいつがシャルル達を邪険に扱った奴か。

 席を立ちこちらをしばらく睨んだ男は、今にも噛みつきそうな勢いである。

 と言うか、初対面の相手に対して決めつけで話し、しかもこんな悪態をつくとは。まぁ読みは当たっていますけど。


「はい、そうです。あっこれが書類です」


 ユアンから預かっていた申請書を、屈託のない笑顔でカウンターに置いてみる。


「いい加減にしろ! 俺はお前達に付き合う暇なんてないんだぞ! さっさと出ていけ! そして二度と俺に顔を見せるな! 」


 怒鳴り散らす声が外まで聞こえているのだろう。外を歩く人達が何事かとこちらを見ながら歩いている。

 しかしなんでこの人はこんなに怒っているのだろうか?

 少し気になる。


「なぜ駄目なんですか?」


 はぁ? と返事を返してくる男。


「何か問題でもあるのですか? 」

「お前に説明する義務は俺にはない」


 なかなか殻が硬い、こじ開けられるかな?


「最初に持ってきた警備兵の態度が悪かったとかですか? 」

「態度? ああ全然なっていないな!目上の人間には敬語で話せないのか! 」

「あと日頃の態度も目に付く悪さとかだからですか? 」

「ああ、いい噂は聞いたことがない! まったく、警備兵共は仕事もせんで何をやっているんだ! 」


 ダメだこの人、先ほどからこちらの質問におうむ返しで文句を言っているだけで、建設的な会話なんてものは全然期待出来そうにない。

 ちなみにシャルルの評判は、行く先々で良い事しか聞いてません。


 ふぅ~、ではササっと終わらすか。

声のトーンを落として、冷徹な表情でさらりと要件だけを述べるのだ。


「これは命令である、しかと聞くがよい」

「あぁ~? なにを突然言っーー」


 言いかけていた男はシグナが取り出したカードを見て、言葉を詰まらせた。


「私は特務部隊隊長カザン=ジャックミノーの代理、特務部隊所属シグナ=アースである。その様子なら皆まで言わなくても分かっているだろうが、命令を無視した場合は重い刑を受ける事となる。では本題に入るが、今からすぐこの書類を受理し、手配書の製作に取り掛かるのだ」


 男はへなへなへなと腰が砕けガックリと項垂れる、のかと思っていたのだが、男は勢いよくカウンターを両手で叩き身を乗り出してきた。


「勇者カザンの命令なんだな! 」


 おやっ、想像していたのとは真逆の反応が返ってきちゃいました。


「えっえぇ、はい」


 意表を突かれたため、間の抜けた返事をしてしまった。

 不覚。


 その後何度も確認された後、『特務部隊隊長カザン=ジャックミノー代理、シグナ=アース一等兵』と、書面に一筆書かされた。

 ちなみに最初、名前だけ書いて渡したら、正式に等級まで書いてくれと怒られてしまいました。

 色んな意味でなんてこってす。


 そしてその場を立ち去る際、男はわざとらしく何度も「俺は無理矢理作成したんだからな」と叫んでいた。


 明らかに嫌な予感がする。

 一応この事は、カザンにも報告しておいたほうが良さそうだな。

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