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おかわりをくれ!

 ◆ ◆ ◆



 いつの間にか複合生物キメラの傍には、血に飢えた殺人鬼のような凶悪な表情を隠そうとしないガナベリアが立っていた。


「あんなところにガナベリア嬢が! いつからいたんだ? 」


 ガオウが驚きの声を漏らす中、Mキラーが興奮を隠す事なく変異種に向かい声を発する。


「これって、もしかしなくてもサイレントだよな! 」

「あぁ、しかしなるほどだな。ネゴットと一緒にいてこの技を使うという事はあの娘、あいつの弟子かなにかって事だ」

「ネゴさんだと!? もしかしてここに来ているのか? 」


 そこで聞こえる聞き覚えのある野太い声!


「おがわりぃ〜を」


 その声のほうに目を凝らすと、ガナベリアから逃れるようにして後退していた複合生物の背後にネゴットが陣取っていた。ネゴットは身体を捻らせ片足を上げ、両腕でしっかりと握る巨大な戦斧の刃先を地面スレスレにするようにして構えると、今にも山なりに弧を描き振り下ろしそうな勢いで全身の筋肉を強張らせている。

 そしてーー。


「ぐれぃ! 」


 ネゴットの振り下ろした巨大な戦斧の一撃は、寸でのところで躱されてしまった。代わりに巨大な衝撃音と共に地面に深く食い込む戦斧。ネゴットはそれを「ふんっ! 」と言う掛け声と共に両腕を使い引っこ抜く。


「こやつ、大きな図体をして躱すとは、やりよるわい! 」


 いやいやいや、そりゃそうでしょ。いくら気配を誤魔化すのがうまかったとしても、叫びながらあんな大振りの攻撃をしたら完全に台無しである。しかも、おかわりをくれ? 意味不明だ。

 そんなネゴットの隣にMキラーと変異種が並んだ。


「ネゴさん、相変わらずだな」

「おぉ、ロギアムか! 久しいの~」

「おっ、お前はなんでロギアムがわかって俺がわからなかったんだ? 」


 険しい表情で変異種が詰め寄る。

 しかし当のネゴットは、我関せずと鼻をほじりながら大きな欠伸を一つあげた。

 一人怒りに満ち溢れる変異種をよそに、Mキラーがガナベリアの胸をチラチラと気にしながらネゴットに質問をぶつける。


「ネゴさん、ツレのレディーはネゴさんの女なのか? 」


 しかしネゴットが口を開くよりも先に、ガナベリアがまくし立てるようにしてMキラーに迫った。


「なんだこのスットコドッコイは? どう見たらそう見えるんだよ!? 」


 ガナベリアは犬歯を見せ今にも飛びかかりそうな勢いで長剣を握っている。

 そこで冷静さを取り戻した変異種が続く。


「しかしあんた、ネゴットの編み出したサイレントを完全にマスターしとるようだが、やるな 」


 すると変異種のその言葉は聞こえたようで、ネゴットが嬉しそうに笑い声を上げ始めた。


「ガッハッハッ、ワシに弟子入りしとったガナベリアさんは、日々の仕事の中でサイレントを使っておるからの〜。常に技に磨きをかけとるという事じゃ」

「それでレディーの職業は? 」


 何が嬉しいのか、Mキラーが声を弾ませながら質問を繋いだ。

 するとその間近に立っているガナベリアが、両手を腰に当て上体を前に倒すと、斜め下方から見上げるようにして怒気をはらんだ睨みつけをおこなう。


「金融関係だ、文句あっか? 」


 その見開かれた片眼と獰猛そうな牙に、Mキラーと変異種はガタガタと身震いをしてみせた。


そうそう、少しばかり前の事になるのですが、三章と四章の間にあるオマケ、『暇を持て余したヒロインが、その先に何があるのかと会話率100%に挑戦してみたら、こんな風になっちゃいました↑↓↑↓』をなろコンの朗読用に応募するために短くしていたのですが、それを若干修正を加えて元の長さに戻しました。


それと六章の章タイトルが本文にしっくりきてないなと付けてすぐに思っていたのですが、こちらも今回の機会に『解き放たれた者達と勇者達』に変更しておりますデス。

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