表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
258/316

欠損

 再度、小さな影と大きな影とが交差をする!

 俊敏な動きを見せるMキラー、そこに迫る凶撃達! しかし今までと違い防戦一方であったMキラーが、初めて攻勢に転じていた。

 降ってくる攻撃を両手もフル動員させることにより地を這うようにして躱し続けると、僅かにできた隙を突き複合生物キメラの足を斬りつける。Mキラーの攻撃は目標手前で大剣により阻まれてしまっているが、この攻防は互角……いや、Mキラーの攻撃を複合生物が四本の大剣を使って、なんとか防いでいるようにも見えなくもない。


 そこで複合生物の揺らめく姿が一段と激しさを増したかと思った瞬間、その腕が細くなったり拳だけが膨れ上がったり、また別の腕は指が異常に伸びたりと異様な変化を始め出した! そして腕の一本が枝分かれをしたように裂けていき、その一本一本の腕達がそこから細く伸びMキラーを掴もうと迫る!

 虚をつかれたMキラーは、それでも多くのステップと剣を巧みに扱い辛くも逃れていく。


 これって複合生物が怒りでパワーアップしたの? それとも激しい感情で魔法が制御出来なくなっているとか?

 どちらにしても今までと違い予測不可の動きをするため、Mキラーがまた後手に回り始めている。


「Mキラーの奴、やばいんじゃないのか? 」


 私が柱の陰に寄り掛かるようにして身体を休めていると、ガオウが私とあいつを交互に見比べながら話しかけて来た。


「確かにそうなんだけどーー」


 あのMキラーの雰囲気、じっと見ていてなんと無しに感じたんだけど、なんだか余裕があるような、じっくりと様子を伺っているようにも見えなくもない。


 そこで複合生物が二本の腕の翼を広げ羽ばたきを行い、距離は短いが素早いバックステップを行った。

 しかし間合いを離されまいとMキラーが地を這うようにして複合生物の後を追随する。

 そして複合生物が着地をしたのだが、奴はそこからの動きが早かった! 着地と同時に四本の大剣を地面に刺すと今度はその空手になった四本の腕とそこから枝分かれをしていた全ての腕を極限まで大きく左右に伸ばし、そこから一気に翼を広げた。

 恐らく間近まで接近しているMキラーの視界全てを覆うぐらいに、赤黒い翼が所々重なり合いながら広がっている。そしてそれらが一斉に羽ばたきを始めた。


 しかし攻撃体勢に入っていたMキラーは、躊躇する事なく剣を振り下ろす!

 がその動きが途中からスローモーションになったかと思った時には、Mキラーが後方に吹き飛んだ!

 これはいったい? と思った瞬間、激しく風が吹き荒れる音と共に、離れているこちらにも断続的に風の流れが身体を襲う!

 そしてその荒れ狂う風は、地下闘技場を支配した。


 風魔法である突風系高等魔法エアイスカウォールでもこんな威力はないはずだし、ただの羽ばたきでもこんな強風は生み出せないだろう。

 よってこの風は恐らく合わせ技!

 以前蜘蛛を救出したさい洞窟にいたと言うダークネスドラゴンも、たしかドラゴンブレスに炎魔法を掛け合わせ威力を増幅させていたと隊長から聞いた事がある。

 そして眼前にいる複合生物は、それの風バージョンをやったのだろう。羽ばたきで起こした風に風魔法を融合。


 その時、何か嫌な予感がし、同じくして私の瞳が小さな影を捉える!

 これは!


「ガオウ、複合生物に向かって盾を! 」


 私に促されたガオウが、強風に盾を持っていかれそうになりながらも咄嗟に盾を前面に出し構えた。

 そこへーー。


「うっ、うおっ」


 襲い来る強風と共に、ガオウの盾が音を立て小刻みに揺れる!

 そして風が過ぎ去った後ガオウが恐る恐る盾の表を確認すると、そこには赤黒く鋭利な礫のような物が刺さっていた。また身を隠すのに利用していた柱を見上げれば、表には同じように赤黒い何かがいくつも突き刺さっていた。


 この形は……鱗?

 そして飛ばされてきたその形を成していた鱗みたいな物が、あっという間に形を失いドロリと崩れると地面へ向かい流れ始めた。


 それよりMキラーは!?

 攻撃を受けたのが私達だけのはずはない、つまり近距離であの猛威にさらされたはずである。

 先程Mキラーが飛ばされた付近に視線を彷徨わせると、そこから少し離れた地面に横たわっているのが確認出来た。

 嫌な汗が頬を伝う。

 身動き一つもないMキラー、が突然ぴょんとその場に立ち上がった。

 どっ、どうやら無事のようーーだけど、口からは血がダラダラと流れ出ている。


「くそー、あの域にはまだまだか! やっぱブジンさんは半端ねえよ」


 Mキラーがどこか遠くを見ながら、意味不明な言葉を哀愁漂う複雑な表情で囁いたのを、私の耳が聞き漏らさなかった。

 そしてMキラーが手の甲で口を拭い自身の体に付いた埃を叩きながら、何かに気付いた素振りののちに視線を下方へ向け、固まる。


「ちっ、千切れてるー! 」


 ……ウォッフォン。

 どうやらあいつ脳筋みたいだし、見た目より大丈夫そうである。なんか少しだけでも心配をしてしまった私が馬鹿らしくなってしまう。


『ドガシャーン! 』


 突然の破壊音が後方から!

 振り返ればこの場所と来た道とを遮断していた鉄板がこちらに向かい吹き飛んでおり、出入り口付近には三つの人影が確認出来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ