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岩石大蛇

 ◆ ◆ ◆



 光苔が自生しているうえ緑光ホタルが舞っているため、洞窟内は幻想的な雰囲気に満ち満ちている。

 今まで様々なところを旅してきたけれど、この目の前に広がる光景は『もう一度訪れて見てみたい景色』のベスト5にランクインするだろう。


「待て! 誰かいるぞ」


 手を広げ制止を促したガオウが言うように、通路の先にはフードを目深に被った長身でガッチリとした体格の黒ずくめの男が立っているのが見える。そして一瞬その姿が、ストームと重なってしまう。

 しかしこの男、今度も気が緩んでいたとは言え気配を全く感じさせないなんて。しかも全身を隠すような怪しさ満点の姿、もしかしたらあいつが賞金首なのかもしれない。

 神経を研ぎ澄まし辺りを探るが、他に潜んでいる者はいないようだ。ただ念のため、私達は武器を手に構えを取る。


「そこの怪しい奴、何をしている! 」


 ガオウが怪しい男に直球の質問を投げかけた。


「おいおいおい、イケ面な俺様を勝手に怪しい奴呼ばわりしないでくれないか? そういうお前等こそ、何者なんだ? 」


 結構な軽口が返ってきた。それにガオウが答える。


「俺たちはバレヘルの者だ」


 剣は構えたままで、鎧の肩に刻まれたバレヘル連合の紋章をみせる。


「と言うことはお前等も賞金首狙いだよな? こっちには何もなかったぜ」


 男は両手を広げ首を傾げてみせた。

 うげっ、よく見るとフードの下から悪趣味な岩石大蛇の兜(ロックスネークヘッド)が見えている。


 岩石大蛇(ロックスネーク)、ザザード砂漠の岩石地帯に生息するこの大蛇は熱に強い事で有名だが、稀に雷をも受け流す個体が存在するらしい。一説ではあの光輝王の竜シャイニングロードドラゴンから散布される光り輝く粉を見に受けたためにそうなったのではと言われているのだが、真相は謎のままだ。

 そして個体数が少ないとされる岩石大蛇ロックスネーク光輝王の竜シャイニングロードドラゴンのテリトリーに入らないと捕獲出来ないため、炎を直接受けても熱を通さないとされる方だけでも希少価値が高く市場に出回る事が少ない。

 しかし鉄の鎧に比べれば圧倒的に優秀であるのだが、見た目がアレなため使用者がいない事でも有名な装備品でもあると聞いた事がある。そしてそんなアレな装備をしているこの男、もしかしたら超が付くほどのレアな品である、雷をも受け流す方の岩石大蛇ロックスネークを装備している可能性がある。


 しかしこの男、まるで大口を開いた大蛇に飲み込まれ顔だけが見えているような状態になってしまっているが、よくよく見れば彫りの深い顔で肌の質感から見て歳は三十代後半くらいのようだ。

 ガオウはそんな怪しい奴に対して、緊張を解くことなく目を細める。


「それはご親切に。それよりあんたに、二三質問して良いか? 」

「お好きにどうぞ」

「近くの町に立ち寄ったな? そこの酒場でなにを手にいれた? 」


 どうやらガオウはこの黒ずくめと、町で仕入れた情報に出て来たフード姿の男が同一人物であるかどうかを確かめているようだ。

 そしていくつかの質問が終わった。


「質問タイムは終わりかな? 」

「あぁ、おかげでどうやらあんたが賞金首ではない事が分かったよ。俺はガオウ、こっちはミケだ。……ところでアンタは俺たちの事を色々と聞かないのか? 」

「バレヘルかどうかは分からんが、この仕事を長くしていると悪人かどうかはなんとなく分かるつもりさ。ま、ライバルって事になるが、また見かけたら俺の事はMキラーとでも呼んでくれ」


「エムキラー? 」

「Mなお姉さんを縛るのが好きって意味じゃないぜ」


 何言ってるのこいつ?

 しかしその言葉にガオウが食いつく。


「あんた、もしかして魔法使い殺し(マジシャンキラー)なのか!? 」


 魔法使い殺し《マジシャンキラー》、かなり有名な賞金稼ぎで特に魔法使いとの相性がよく、敵対側に彼がいる事を知ると大魔道士でさえ逃げ出すと言われている、その筋では超が付くほどの有名人なため、賞金首稼ぎの情報に疎い私の耳にも届いている賞金稼ぎである。


「いくら有名人でも、岩石大蛇の兜(ロックスネークヘッド)とかを普通に被ってる時点でただの変態ですよ」

「なっバカ、お前、特注品であるこいつのチャームポイントはシッポちゃんで、動いたときに連動してフリフリするんだぞ! ほら間近でみれば分かるって」


 そう言うと羽織っていた物を剥ぎ取りながら歩み寄って来る。そして鍛え抜かれた身体のラインがハッキリとわかる、全身ピッタリに着込まれた鱗の付いた衣服が露わになってくるのだが……、ダサイの一言である。

 あれっ?

 蛇の尻尾がお尻には無い、……代わりに股間の場所から長くて太い物が伸びていた。

 正気かあんた!

 あまりにも酷い姿に、二度見三度をしてしまう。

 Mキラーはと言うと、そんな私の視線なんぞ御構い無しで誇らしげに腕を腰に当て胸を張ると、それが私の太腿に当たるよう何度も腰を使う。


 ベチベチベチ。


 私の悲鳴が小玉すと共に、自分でもビックリするぐらいの腰が入り体重の乗った切れ味抜群の右ストレートが、唯一素肌を見せているMキラーの顔面にめり込んだ事は言うまでもない。

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