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鶴の一声

 狭い洞窟内で、ガオウとガナベリアが一歩前に出て剣を構えたため、尚のこと閉塞感が増す。


「誰だお前達は! 」


 ガオウの問いかけにお猿のお面のドワーフは、返事をしない代わりにお面を投げ捨てるとネゴットを見据え口を開く。


「ネゴット、跡をつけさせてもらったぜ! 」


 さっきも思ったけどこのドワーフ、ドワのくせにやたらと声が高い。声変わりをしてない? いやいやドワって声変わりする前からおっさん声って聞くから、このドワはきっと変異種なのであろう。


「ネゴさん、こいつと知り合いなのか? 」


 ガオウの問いにネゴットは首を横に傾ける。


「はて? どちらさんじゃったかの~」


 その言葉に、変異種が額に青筋を立てた。


「なっ、ゴルムルだ! とぼけやがって! 」 

「ゴルムル? ……おぉ~もちろん知っとるぞぃ、元気しとったか? 」


 いやあんた、今どちらさんか尋ねてましたよね? とそれより、ネゴットの知り合いみたいだけどこの変異種、何故こんな所に?


 このあと、変異種は前の町でネゴットを見つけそこから尾行して来た事、廃坑の途中で迷ってるネゴットにイライラしていた事、さらには昔同じ部隊にいた頃の愚痴までをたっぷり時間をかけて聞かせてくれたのでした。

 しかし後方に控える二人、顔は目元だけしか見えない露出の少ない服装でずっと暗がりに隠れたままだけど、胸の僅かな膨らみから二人とも女性である事が伺える。


「まぁ取り敢えず廃坑の悪魔達じゃないって事は、獲物を狙うライバルって事になるんだよね」

「あぁ、だがゴルムルと言ったらチーム【ゴルムルボンバー】のゴルムルという事になるわけだ、手強いな」

「あの変異種、有名人なの? 」

「変異種? ……とにかくだ、噂では一人一人の力量もたしかだが、三人での連携は見事だと言われる名の知れた賞金稼ぎ達だ」


 確かにこの三人、集中していた訳じゃないけど、私の耳がその尾行をする足音を聞き取る事は無かった。只者じゃない。

 そこでゴルムルの後方に控える二人の内、左腰の帯に剣を二本挿している方が前に歩みを進めると口を開く。


「ここでサクッとやっちゃうアルカ?」


 意外に若そうなその一言で辺りに緊張が走る。しかしその緊張を破ったのは変異種の甲高い声であった。


「いや、俺逹の他に先行しているヤツがいたな。ここで無駄に時間を使うのは得策ではない」


 変異種はそう言うとネゴットに視線を向ける。

 と言うかあんた、さっき()()をかけて喋りまくってましたよね!


「どうだネゴット、ここはお互い刃を収め純粋に早い者勝ちにしないか? 仕留めた後は、横から奪うのは禁止って事も付けて」

「あぁん? 人様尾行しといて、なに偉そうに仕切ってるんだぁ? 」


 ガナベリアが今にも噛み付きそうな凶悪な表情で変異種に噛みついた!

 初めてこの人が仲間で良かったと思った瞬間である。


「尾行されて気付かないオバサン達が悪いアルよ。ね、アン」

「「なんだとー! 」」


 私とガナベリアの声が見事にハモった瞬間であるけれど、それより小娘達め!


「少し若いからって、今決着をつけてあげるわ! 」

「珍しく気が合うじゃないか? そうだね、この小娘達にはちょいとお仕置きが必要みたいだね」


 ガナベリアが長剣を抜くと、アンと呼ばれた後方の一人も長剣を抜き、首を横に倒す事によりゴキゴキと音を鳴らしながら歩み出る。


「つまらぬモノは斬りたくないが、仕方ないか」

「「つまらぬモノだとー!? 」」


 私が即座に矢を番え狙いを定めると、小娘達も剣を正面に持ってきて防御の構えを取る。

 一発触発の状態である。

 とそこでーー。


「ばかものー!! 」


 洞窟が振動してるのではと錯覚する程のネゴットの馬鹿でかい声が、まさに鶴の一声となった。私達は武器を持つその手を緩めーー。


「ワシの借金がかかっとるんじゃ、さっさと進むぞぃ! 」


 続く言葉に私達はズッコケ、毒気を完全に抜かれてしまった。

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