熱気に包まれしゼド3
巨人兵が移動をしているのだろう、地面が一定間隔で微かに揺れる。
その時、こちらへ数人の掛ける足音が聞こえてきた。
物陰から様子を伺っていると、どうやらこの街の生存者で家族連れのようだった。
「おい、どうなっているんだ! 」
その者達の前に飛びだすと、子供の手を引く男性に向かい問いかけた。
「あんたらは……、クロム様! 助けに来て下さったのですか! 」
「敵の勢力がわかれば話せ! 」
クロムは素っ気ない口ぶりで質問をするが、男性は呼吸を整えるとシグナ達の後ろをチラチラ見ながらも丁寧に話し始める。
「あっあの、もしかして、増援部隊の皆さんは? 」
「俺達二人だけだ」
その言葉に固まる男性。
「あっ、あの、話はそこの建物の中で宜しいでしょうか!? 」
危機迫る顔での申し出に、一度シグナ達は建物の中に身を隠す事に。そこで再度、男性が話し始める。
「最初、街中に鳴り響く鐘の音に起こされました。夜中だったもので飛竜が迷い込むとか珍しいなと思っていたのですが、兵隊さん達が右往左往してたもので、これは只事ではないと。急いで外へ出ると、激しい破壊音と共に防壁の一部が崩れました。そしてそこにはあの巨人の姿が」
巨人兵、あの分厚い壁を破って来たのか。
「街で縦横無尽に破壊を尽くす巨人に、兵隊さん達も立ち向かいますが、新たに現れた黒ずくめの騎士と魔道士に……」
魔宝石の化け物に協力者?
いや、巨人兵そのものが異世界人の仲間だという事も考えられる。
とにかく敵は最低三人いるわけか。
「あんた、他に知っている事はないか? 」
シグナの問いに男性が顔に手を当て記憶を手繰り寄せていると、隣で聞いていた少年が口を開く。
「お兄ちゃん、悪い魔法使いは空を飛んでいるんだ! そして炎を沢山落として、ミヤ達を、ミヤ達を殺したんだ! 」
興奮気味に捲くし立てる少年を、母親らしき女性がギュッと抱きしめる。そこで男性が口を開く。
「すまない、少し混乱していたもので。少し整理が出来たから、私から話そう。……魔道士は逃げ惑う人々を探しては攻撃をしている。騎士のほうは、最初の空いた壁の前で、仁王立ちしているのを見かけた。恐らく今も、そこから人が逃げ出さないよう見張っているのではないかな」
そうなったら街の人は隠れるしかなくなる。しかし隠れても巨人兵が手当たり次第に建物を破壊している。
くそっ、こいつらの目的は住民を皆殺しにする事なのか?
「辛いところすまなかったな」
男性の肩に手をかけ語りかけると、クロムを見やる。
するとクロムが誰ともなしに、小さく呟く。
「……あとは任せろ」
家族連れと別れたシグナ達は、上空を気にしながらも巨人兵へと向かいひた走る。
そして死体が焼ける異臭が立ち込める中、炎の揺らめきで見え隠れする巨人兵の姿をその目で捉えた。




