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訪問者の多い昼下がり

 ◆ ◆ ◆



 本部に帰郷してから3日後の昼下がり。

 自室の椅子に着座し溜まっていた書類を整理していますと、訓練を早目に切り上げたのでしょう、マリモンが肌着を汗でビッショリと濡らした状態で訪れました。


「隊長、巷では黒騎士を倒したのがイールの騎士になってるっすけど、どう言う事なんですか!? 」

「おや、話していませんでしたか? 」

「聞いてないっす! 」

「それは失礼しました。今回の件、口止め料も幾ばくか頂いていますし、それで丸く収まるのであればと思い、手柄はイール騎士達レギザイール軍に譲りました」

「お金で丸め込まれたんっすか! 」

「それは違います、お金はあくまでも形式的なもので僅かしか頂いていません。……仮に私が倒したと名乗り出ていたとしても、今のレギザイール軍では報奨金も期待出来ませんし、いらぬ災いを齎す可能性のほうが高くなります」


 今回の騒ぎ、バーレスの裏に巨大な者の影を感じられましたし。


「で、でも! 」


 マリモンは俯いた状態で身体を震わせています。


「それでも自分は、強くて優しい隊長が馬鹿にされ続ける事に納得いかないっす!」


 マリモンはそう叫ぶと、部屋を飛び出して行きました。


「困りましたね」


 思わず心の声が外に漏れてしまった時、開け放っていた窓から一陣の風が吹きました。そして人の気配と共に声が。


「青春だわねー」

「メグミさん! 戻られていたのですね」


 いつの間に入室したのか、バレヘル連合のギルドマスターであり、三十後半で小柄な魔道士であるメグミさんが、壁に寄りかかるように背中を預け腕を組んで立っていました。

 しかし私も勘が鋭いほうでありますが、全く気配を感じさせない技量、相変わらず凄い人だなと感心させられます。


「そうそうパラディンちゃん。急用ですぐに出掛けないと行けなくなっちゃったから、それと迷惑掛けたらごめんね」


 メグミさんの急用は毎度のことでありますがーー。


「今回はどれくらいで戻られるのですか? 」

「そぉねー、数ヶ月くらいしたら戻ろっかな。じゃっ」

「今からですか!? 」


 メグミさんは三階にある私の部屋の窓から身を投げ出すと、落下中に唱えた風の魔法でふわりと地面に降り立ちます。

 そんな彼女を部屋から苦笑いで見送っていると、部屋の入り口から頭がスッキリとされている厳ついオジさんが息を切らしながら飛び込んで来ました。


「パラディンさん! メメちゃんが帰ってきたってのは本当かい? 」

「えぇ、ただし今旅に出られましたが」

「やられたっ! 」


 そう言うと頭を抱えるオジさん。そして私と目が合います。


「そしたらパラディンさん、アンタでイーや。メメちゃんの莫大なツケ、少しでいーから代わりに払ってくれないか? 」

「……えぇぇ! 」

「こちとら、生活がかかってるんだよー」

「メ、メグミさん! 」


 急いで窓に駆け寄り外を見回します。すると既に遠くに移動していたメグミは、こちらに向け手を振っていました。


「よろしくねー! 」


 その声が辛うじて届く頃には、メグミさんは視界から消え去ってしまいました。


「メメちゃんもあー言ってることだし」


 オジさんは私の肩に手を置くと、優しそうな笑顔を向けています。

 参りましたね。


 そしてオジさんは硬貨が入った袋を満足そうに抱え、足取り軽く私の部屋を後にしました。


 うーむ、今回の旅行で多くの仕事をキャンセルしていましたので、このままでは皆さんの給金に支障が出てしまうかもしれません。

 出納帳と睨めっこをする事暫し。

 どうやら今月は、皆さんに依頼の数をこなして貰わないといけませんね。

 するとまた部屋の扉を叩く音が聞こえます。


「隊長、よろしいでしょうか? 」

「どうぞ」


 開かれた扉に立つのは、天然パーマが入っている小柄な騎士、アリナスさんでした。

 そして彼は部屋の外、廊下に向かって話しかけます。


「こちらがパラディン隊長のお部屋になります」

「ありがとう、……騎士様っ! 」


 そこにはレート王国のお姫様であるタルトの姿が。


「タルト! 」


 驚きのあまりに思わず立ち上がった私に、タルトは走り寄ると抱きついてきます。


「会いたかったですー」

「散々寄り道しておいて」


 声は扉の方から。

 見れば色白な男性、スノウさんの姿。他にもレート王国のブローチを付けた二人の騎士の姿も。


「一体どうされたのですか? 」


 スノウさんに問いかけると、返事は私の胸元辺りから聞こえます。


「私、バレヘル連合に入隊することにしましたの」


 そう言うと、タルトは満面の笑みをこちらを見ています。


「スノウさん、よろしいのですか? 」

「はい、ただし我々三名は、タルト姫の護衛となりますのでそれでも宜しければ、ですが」

「そうですか、わかりました。でしたらタルトは勿論、皆さんにもバレヘル連合の基本方針や心構えを知っておいて貰っていたほうが良いですね」

「そんな事よりパラディン様のお名前って、本名なのですか? 」

「いえ、違いますがーー。それよりタルト、私達はこれから、血は繋がっていませんが、いえ繋がっていないからこそ、入隊する以上家族と同等以上の絆で結ばれなくてはなりません。ですから私達を正しく知って頂く意味でも、説明はしっかりと聞いて頂きますよ」

「家族以上、ですか。……わかりました! 」


 真剣な目つきに変わるタルト、私はそんな彼女に微笑みながら話しかけます。


「その後で良ければ、私の名前についてぐらいいくらでもお話しますので、よろしいですか? 」

「はい! 」

「あっ、私は所用を思い出しましたので、これで失礼します! 」


 アリナスさんはそう言うと、一礼の後退室されました。


「失礼しました、それではバレヘル連合基本方針と心構えについて御説明しましょう」


 しかし今後も人が増えるとなると、増設も視野に入れて金銭のやりくりをしないといけませんね。……以前から考えていた傭兵業以外の新たな事業、頃合いを見計らって進めていきますか。


次のお話がこの章のエピローグとなります。

現在結構テンション上がってますので、このままいけば今日中にアップ出来そうですデス。

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